編集長が語る!講義の見どころ
マスコミ報道では見えない総裁選の深い意味(曽根泰教先生)【テンミニッツTV】
2021/10/12
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
先日、9月29日に投開票された自民党総裁選挙で、各メディアは盛んに報道合戦を行ないました。やはりどちらかといえば、従来の政治部的な「どの派閥がどっちについた」「誰が何票獲得しそうだ」「裏でこんな政治家がこう動いた」などということを夜討ち朝駆けで報道する姿勢が目立ったように思います。
しかし、そのような報道では見落とされてしまいがちな部分があると、曽根泰教先生(慶應義塾大学名誉教授)は指摘されます。つまり、自民党総裁選こそ「実質競争」の場であり、それをきっかけに「劇的な政策転換」が行なわれる可能性があるというのです。
◆曽根泰教:自民党総裁選~その真の意味と今後の展望(全1話)
「マスコミ報道」では見えない自民党総裁選の深い意味
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4202&referer=push_mm_rcm1
総裁選が「劇的な政策転換」の場となった例として曽根先生が指摘されるのは、1つは1972年の佐藤栄作の後任を決めた総裁選です。
このとき「三角大福」といわれましたが、三木武夫、田中角栄、大平正芳、福田赳夫の4人が戦い、第1回投票の結果、田中角栄と福田赳夫の決選投票となって最終的に田中角栄が勝利を収めました。
まさに田中角栄と福田赳夫の熾烈な対決となったわけですが、曽根先生が注目するのは、この選挙によって日中国交回復の姿が変わっただろうことです。
曽根先生は、「日中国交回復という日中関係の改善の選択は、この総裁選でなされたと思います」とおっしゃいます。たしかに福田赳夫は中華民国(台湾)を重んじ、中華人民共和国との国交回復にも両者のバランスを重視した慎重姿勢を取っていましたので、この総裁選で福田が勝利していたら、日中の国交の姿は違ったかたちになった可能性もあります。
もう1つ、曽根先生が注目するのは、2003年、小泉純一郎氏が勝利した総裁選です。このとき、小泉さんは「郵政民営化」を掲げて勝利を収めます。このとき小泉さんは、「自民党の総裁選挙で勝ったものの候補者の政策が、党の政策になって、総選挙の公約になる」という姿勢を貫き、「小泉を選んだら、郵政民営化は選んだということと同じ」だと突き進んでいきます。
曽根先生は、「マニフェスト選挙は民主党のものだと思っているでしょうが、実はそうではなくて、小泉さんはこれを、かなり早い段階で理解するわけです」と評されます。その後の小泉さんの選挙の強さを思い起こせば、曽根先生のご指摘は、大いにうなずかされます。
では、今回の総裁選ではどうだったのでしょうか。ここで曽根先生は、総裁選で「何が残り、何が消えたのか」を考えることの大切さを指摘されます。
今回の場合、消えたのは「基礎年金を全額税方式にする」という主張です。河野太郎さんは、この主張を生煮えのかたちで提起したために、大変なツケを払うことになってしまったからです。
また、「核燃料サイクル」も、河野さんが敗北したことによって、「(実質的には破綻しているけれども)続ける」ことが決まったといえます。
さらに、河野さんが左に尖って潰れたのに対し、高市早苗さんが右に尖って力を伸ばした。これは今後、自民党内で左的な主張が出しづらくなってくることを意味します。
総裁選で「何が残り、何が消えたのか」を見れば、今後の流れや方向性も少し見えてくるということです。かくして曽根先生は「総裁選というのは、そんなに捨てたものではない。これは利用すべき非常に重要なプロセスなのだ」とおっしゃるのです。
たしかに現状の政治の枠組みでは、与党と野党の政策対決よりも、与党内の政策対決のほうが、より重要な意味を持ちます。
その象徴的かつ劇的な場である「自民党総裁選」で、どのような政策が大きく支持を伸ばしたのか。またそれを支持したのはどのような層だったのか。それらは、今後数年の政治の動きを考えるうえで、極めて重要でしょう。
その政策は、たんなる権力闘争の「飾り」ではなく、抗うことができないほどの大きな流れとなりうるということです。
「何が残り、何が消えたのか」を見据えることがいかに重要か、理解できる講座です。
(※アドレス再掲)
◆曽根泰教:自民党総裁選~その真の意味と今後の展望
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4202&referer=push_mm_rcm2
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☆今週のひと言メッセージ
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《共感を育む一番強い原動力となる実体験は「傾聴すること」、そして「傾聴されること」》
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4153&referer=push_mm_hitokoto
子どもの共感力を育む原動力は「傾聴」という実体験
高橋孝雄(慶應義塾大学医学部 小児科主任教授)
共感を育む一番強い原動力となる実体験は「傾聴すること」、そして「傾聴されること」ではないかとご提案したいと思います。
その先に何があるかというと、私は「意思決定力」だと思うのです。こういった歯車を二つ、スムーズに回せるお子さんであれば、自分の意見をしっかり言える子どもになると思います。
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編集後記
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今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。
さて皆さま、テンミニッツTVを視聴される主な時間帯はいつごろでしょうか。
朝? 昼? 夕方? 夜? 夜中? 皆さまそれぞれの生活スタイルによって異なると思いますが、「朝起きてまず一講座聞くことを楽しみにしている」という方もいらっしゃいますので、朝によく視聴するという方が多いのかもしれません。
ちなみに、新講義に関していえば、基本的に日付が変わった翌日(夜中の午前0時)から配信開始となりますので、朝起きたときにすぐ新講義が視聴できるのです。「新着一覧」には今後の「配信予定」もありますので、気になる新講義をチェックしたら、ぜひご視聴ください。
ということで、本日(10/12)配信開始の新講義は以下になります。
◆小原雅博:バイデンの政治とアメリカの民主主義
(4)民主主義の灯台になれるのか
バイデン政権は今後、民主主義のレジリエンスを示せるのか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4188&referer=push_mm_edt
◆楠木新:定年後の人生を設計する
(3)雇用延長すべきかどうか
選択肢としての雇用延長をどう考えればいいか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4182&referer=push_mm_edt
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