編集長が語る!講義の見どころ
デジタル全体主義?いま迫る危機とは(特集&中島隆博先生)【テンミニッツTV】

2021/12/17

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。

「デジタル全体主義」という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか? これは、とても興味深い考え方です。

現在、ツイッターやフェイスブック、インスタグラムなどで、多くの人たちがどんどん情報をインターネットに書き込んでいます。あるいはグーグルなどでの検索も膨大な量がなされています。

ナチスやソ連共産党など20世紀型の全体主義の場合、政府は特殊警察などを使ったり、密告を奨励したりして、人びとの頭のなかの思想をつかもうと大変な努力をしました。

ところが21世紀には、むしろ人びとの側が積極的に情報を発信しています。一見、これは各自の自発的な行動に見えます。しかし、そのようにして書き込まれたデータが「ビッグデータ」として使われています。

一部のエリート(企業を含め)は、そのデータを最大限に活用して、広告などで最大の効果を上げようとしますし、「操作主義的」に社会を動かそうとします。つまり、知らず知らずのうちに全体主義的になっていくのです。

さらにいえば、コロナ禍もあって、人びとが「政府に自分の健康を守ってもらいたい」と考えるようにもなりました。中国は、監視カメラや個人情報の追跡などをフル活用して、ウイルス感染を抑え込もうとしています。これは文字どおりの「全体主義」ですが、はたしてこれをどのように考えるべきなのでしょうか。


■本日開始の特集:いまそこにある「全体主義」

このような状況を受け、今回の特集では、いま迫りくる問題の本質について、歴史、哲学、現状分析など、幅広い視点から広く考えます。

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=146&referer=push_mm_feat

中島隆博:20世紀型の全体主義とは異なる「デジタル全体主義」とは

本村凌二:「独裁政から始まる」という世界史の諸相に迫る

東秀敏:左翼の全体主義化を示す「キャンセル文化」とは?

川出良枝:ルソーの「一般意志」「特殊意志」「全体意志」の違いとは

曽根泰教:緊急事態への対応で優れるのは民主主義か独裁か?


■講座のみどころ:デジタル全体主義を哲学的に考える(中島隆博先生)

本日は特集のなかから、デジタル全体主義について、中島隆博先生(東京大学東洋文化研究所教授)が哲学的に語ってくださった講義をピックアップいたします。

中島先生は、ドイツの哲学者のマルクス・ガブリエルとの対談で『全体主義の克服』(集英社新書)という書籍を発刊されています。その内容をふまえて、「デジタル全体主義」の哲学的課題について、わかりやすく語ってくださいました。

◆中島隆博:デジタル全体主義を哲学的に考える(全7話)
(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは異なる「デジタル全体主義」とは
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4241&referer=push_mm_rcm1

中島先生は、講座の最初で「デジタル全体主義とは何か?」について解説くださった後で、ユヴァル・ノア・ハラリが著書『ホモ・デウス』で問題提起した「無用者階級」についてお話しくださいます。

要するに、AIの発達とビッグデータの活用により、一部のエリートだけが社会を回していき、他の人たちはただ「無用な階級」になるというのです。

無用者階級は、自分の望みもよくわからない。何の大義で団結すれば良いのかわからないので、団結のしようもない。だが一方で、住むことや、食べることには必ずしも不自由しない。「AIが働くようになるので、労働することすらもう必要がなくなる」とハラリは論じます。

実際に、アメリカはじめ各国で格差が大きな問題になっています。本講座でも、ニューヨークやボストン、ロサンゼルスなどで4人家族で暮そうとすると、少なくとも年収が4000万円~5000万円は必要だという例が挙げられます。それ以外の町だと、食べるには困らないが、快適さも刺激もないというのです。

「新型コロナがあぶり出したのは、格差や貧困、差別、あるいは大量消費の弊害など、これまでずっと問題だったものに対して手当てができていない現実だった」と、中島先生はおっしゃいます。では現在、デジタル全体主義が進んでいるなかで、今後、哲学的にはどういう道を切り開いていくべきなのか。

実は20世紀的な全体主義(共産主義、ナチズム)も、そのような諸問題の解決のために主張されたものでした。しかし、そのような全体主義が解決をもたらさないことは、いまや明らかです。

ここで中島先生は、「デモクラシーを鍛え直すこと」や「『人の資本主義』を確立すること」の必要性を挙げられます。

モノの飽和を受けて、いま「モノ消費から、コト消費へ」といわれます。「体験や出来事を売り物にする」ことですが、しかしコト消費も、多くが、パック旅行のように商品的にパッケージ化されたものばかりです。そうではなく、「人が生きていくための生の条件を豊かにする方向=人の資本主義」に向かっていけないか。

中島先生は、禅寺で座禅の師匠が導いてくれたり、欧州の修道院で人格を高めたりするようなあり方は参考になるのではないかとおっしゃいます。また、そのような場での人のつながりが、SNSなどでの交流とどう違うのかも論じられます。

さらに中島先生は、中華人民共和国的な全体主義のあり方について、「スコアリングと功過格の問題」「ルソーの一般意志と、トクヴィルのデモクラシー論の対比」など、興味深い議論を進めます。

また、東洋の哲学で「普遍になりそう」なものとして、『論語』の「仁」という概念や、あるいは「道」の思想があるのではないかと指摘されます。加えて、中国の老荘思想家の王弼(おうひつ)の無の思想や、仏教の空縁起にも話が及びます。

こう紹介すると難しそうですが、さまざまな事例でわかりやすく語っていただいていますので、スッと頭に入ってきて、自分自身でもいろいろと考えを巡らせることができます。それぞれの内容については、ぜひ講座本編をご覧ください。

新しい社会のあるべき姿とその可能性、そしてその哲学的背景を考えることができる珠玉の講座です。


(※アドレス再掲)
◆特集:いまそこにある「全体主義」
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=146&referer=push_mm_feat

◆中島隆博:デジタル全体主義を哲学的に考える(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4241&referer=push_mm_rcm2


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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回は「ウォーレン・バフェット」についての問題です。ではレッツビギン。

投資家としては非常に珍しい肩書きなのですが、「(     )の賢人」という肩書きがあります。

さて(     )には何が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4234&referer=push_mm_quiz


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編集後記
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今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて本日は気になる新書を取り上げたいと思います。

『ブルシット・ジョブの謎 クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか』 (酒井隆史著、講談社現代新書)
https://www.amazon.co.jp/dp/4065266599

「ブルシット・ジョブ」とは、「完璧に無意味で、不必要で、有害でさえある雇用の形態」と本書の中でその定義を説明しています。ようするに、サブタイトルにあるように「クソどうでもいい仕事」というわけです。

具体的には何のことか、本書を読んでからになりますので機会があれば改めてお伝えしたいと思いますが、仕事について、労働について、そして働き方について考えるうえで重要な示唆を与えてくれる本ではないかと感じています。

テンミニッツTVでも、社会・福祉のジャンルに「雇用・働き方改革」という項目があり、仕事や労働、働き方について扱っている講義は多数ございます。ご興味にある方はぜひご視聴ください。

雇用・働き方改革
https://10mtv.jp/pc/content/search_list.php?movie_sub_genre_id=136&referer=push_mm_edt