編集長が語る!講義の見どころ
10分でわかる「ベートーヴェンの第九」(野本由紀夫先生)【テンミニッツTV】

2021/12/21

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。

12月14日の本メルマガの「編集後記」で編集部の加藤もベートーヴェン講義について言及しておりましたが、やはり年の瀬といえばベートーヴェンの「第九」(交響曲第9番)です。今回はあらためまして、ぜひともこの「第九」についての講義を紹介させていただきたく存じます。

よく知られているように、日本ほど第九が演奏されている国は、欧州にもありません。

日本で第九が「年末の風物詩」になったのは、「規模が大きく、しかもお客さんがたくさん入る曲なので、楽団員の餅代稼ぎに最適だったから」などといわれることもあります。しかし、やはりその根源には、多くの日本人が「汝(歓喜)の優しき翼の憩うところ、人類みな兄弟となる」という歌詞に魅了されてきたこと、そして、楽聖ベートーヴェンの最高傑作ともいえるこの曲の崇高さを心から讃仰してきたことがあるのでしょう。

ところで、この曲はどのような曲なのでしょうか。いかなる構造が秘められ、そしていかなるメッセージが込められているのか。そのことを理解しておくことは、まさに世界に通じる古典的教養ともいえるでしょう。とりわけ、世界一、第九の演奏会数の多い国の人間としては、ぜひとも知っておきたいところです。

本日は、野本由紀夫先生(玉川大学芸術学部芸術教育学科教授)の大人気講座から、特に「第九」を取り上げてくださった第7話を紹介いたします。

野本先生の講義は、もはやテンミニッツTVの定番的な講義でもありますので、ご覧いただいた方も多いかもしれません。なにしろ、野本先生がピアノを弾きながら、18世紀のヴィヴァルディから20世紀のマーラーまでのクラシック音楽の歴史を教えてくださるもの。実際に音を聴きながら音楽の形式論や意味なども学べる、まさに、動画のメリットを最大限に活かした絶品講義です。

◆野本由紀夫:ピアノでたどる西洋音楽史(全11話)
(7)現代に生きる「第九」
10分でわかる「ベートーヴェンの第九」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3082&referer=push_mm_rcm1

野本先生は、この曲の凄さとして、最初に「書き込まれた音符の数」を挙げられ、ベートーヴェンの自筆の楽譜(複写)をお示しくださいます。当時、聴覚をほぼ失っていたといわれるベートーヴェンがひたすら書き込み続けた譜面の迫力に、まず圧倒されます。

そして次にご指摘くださるのが、全体を通じた「統一」の仕掛けです。野本先生は本話の前の第6話で、ベートーヴェンの第5交響曲(運命)が、冒頭の「ジャジャジャジャーン」のリズムだけですべて創りあげられていることを解説されていますが、第九も、第1楽章冒頭の「レ・ラ」という音で全曲を通そうとしているというのです。

このような楽曲構造の分析は、読むよりも、圧倒的に聴くにかぎります。ぜひ野本先生のピアノ解説をお楽しみください。

さらに、ベートーヴェンが初めて「交響曲」に「合唱」を導入したことの意味を教えてくださいます。これもよく知られたように、ベートーヴェンは第九の4楽章の歌詞に、ドイツの詩人・シラーの詩を用いているわけですが、詩のすべてを採用しているわけではありません。それはなぜなのか。

また、「歓喜」はドイツ語では女性名詞であり、歌詞でも「喜びよ、神々の火花よ、そして楽園から来た娘よ」と歌われます。実は「女性」であることに大きな意味が隠されている、と野本先生は読み解いておられます。それは何か。

その謎解きは、ぜひ本講義をご覧ください。

そのうえで野本先生は、ベルリンの壁が崩れた1989年に、アメリカの指揮者バーンスタインが、東西ドイツとアメリカ、フランス、イギリス、ソ連の演奏者と合唱団を集めて「第九」を演奏したことの深い意味を教えてくださいます。

加えて、第九のなかで第4楽章だけが異色な曲である秘密も、最後の最後で語っておられますが、そのあたりもすべて、ぜひ講義本編でご覧いただければ幸いです。

今年は昨年と比べると、第九の演奏会もやや増えているようです(それでも例年よりは少ないですが)。インターネットには、第九の歌詞も演奏も、いくつも紹介されています。ぜひこの年末、あらためて「第九」のメッセージに思いを馳せてみてはいかがでしょうか?

また今回は、講座のなかから「第九」の部分を抜粋して紹介いたしましたが、全話を通してご覧いただければ、西洋音楽の歴史や構造をよく理解することができます。必ずや、皆さまのかけがえのない教養の基となることでしょう。初めてご覧いただく方も、すでにご覧いただいた方も、ぜひ年末年始にお楽しみください。


(※アドレス再掲)
◆野本由紀夫:ピアノでたどる西洋音楽史(7)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3082&referer=push_mm_rcm2


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☆今週のひと言メッセージ
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《人には希望を見つける能力がある》

https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4277&referer=push_mm_hitokoto

バブル世代は「バブル崩壊世代」、苦労の先に見えるものがある
江上剛(作家)

私はある小説で書いたのですが、人には希望を見つける能力があると思っています。だから、必ず前向きな希望を見つけることができます。

そういった能力があるから人間は、グレートジャーニーではありませんが、アフリカの奥地から世界中に広がって長い旅を歩むことができる。50代だから、60代だからということではなく、われわれみながそうなのです。


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今週の人気講義
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編集後記
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今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて、本日は12/16(木)より配信が開始となった片山杜秀先生(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)の新シリーズ講義「天皇のあり方と近代日本」をご紹介します。

◆片山杜秀:天皇のあり方と近代日本(全7話予定)
(1)「人間宣言」から始まった戦後の皇室
皇室像の転換…戦後日本的な象徴天皇はいかに形成されたか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4289&referer=push_mm_edt

昨今、天皇のあり方や皇室のあり方がよく話題になりますが、このシリーズ講義ではそうした問題に対し、片山先生ならではの視点で歴史的経緯を追いながら鋭いご意見が展開されていきます。
スタッフとして毎回感じることですが、今回も非常に興味深いお話ばかりで、聴いているといつの間にか時間が過ぎていたという感覚になります。
毎週木曜日配信予定です。ぜひ続けてご視聴ください。