編集長が語る!講義の見どころ
天皇と日本について考える(特集&片山杜秀先生)【テンミニッツTV】
2022/01/28
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
眞子様と小室圭さんのご結婚をきっかけの1つとして、皇室をめぐる議論は、どこかパンドラの箱が開いてしまったような観があります。皇位継承有識者会議報告書に対しても意見が百出し、「静ひつな環境のなかでの落ち着いた検討」が危ぶまれる雰囲気でさえあります。
第二次世界大戦の敗戦でGHQなどから加えられた圧力をはじめ、積み重なってきた様々な問題が一気に噴出しているのではないか。そう思いたくもなる状況です。
このようなときは、対症療法的に考えていると、根本的なことを誤りかねません。歴史を見直しつつ、本質的なことを考えていくことが必須でしょう。
■本日開始の特集:天皇と日本について考える
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=152&referer=push_mm_feat
はたして、天皇とはいかなるものなのでしょうか。そして、日本とは? そのことについて、深く考えるのに大いにお役立ていただける特集を組みました。三島由紀夫、福澤諭吉、五箇条の御誓文、古事記……。さまざまな角度から考えましょう。
片山杜秀:皇室像の転換…戦後日本的な象徴天皇はいかに形成されたか
片山杜秀:「人間天皇」を否定した三島由紀夫が現代日本に問うもの
片山杜秀:福澤諭吉が「帝室論」で「皇室は万年の春たれ」と説く理由
島田晴雄:国是として戦後にも生きる「五箇条の御誓文」
鎌田東二:世界でも稀な日本の王権システムが1300年続いている理由
■講座のみどころ:天皇のあり方を近代日本史から深く考える(片山杜秀先生)
本日は、特集より片山杜秀先生(慶應義塾大学法学部教授)の講座を紹介いたします。
片山先生は、「そもそも戦後の皇室のあり方はどのように構想されたのか」、「三島由紀夫VS東大全共闘の討論で象徴的に現われた論点とはどのようなものだったのか」、「福澤諭吉が『帝室論』で提示したことの現代的意味は何か」などを探究し、現代の皇室の問題を深掘りしていきます。片山先生ならではの博覧強記の議論に圧倒されつつ、現在直面している問題の深い本質を考えていくことができる講座です。
◆片山杜秀:天皇のあり方と近代日本(全7話)
(1)「人間宣言」から始まった戦後の皇室
皇室像の転換…戦後日本的な象徴天皇はいかに形成されたか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4289&referer=push_mm_rcm1
片山先生はまず、敗戦後、連合国から皇室の廃止を含めた圧力を受けるなかで、昭和天皇が「新日本建設に関する詔書(人間宣言)」を出されるなど、力強く対抗されていったことをご紹介くださいます。
当時、小泉信三をはじめオールド・リベラリストと呼ばれた人たちは、天皇は「国家を束ねるのにとっても素敵で、立派で、いい人で、尊敬できる人で、いつもいてほしい人」であるという人間天皇像を推し進めていきました。
日々の暮らしから結婚問題などまで、常に「国民の憧れであり、模範」であることが求められていきます。それゆえ、ご成婚なども広く国民のあいだで「恋愛結婚」であることが強調されるようにもなりました。
しかし片山先生は、このような小泉信三の考え方は、結果的には「近視眼的」だったと喝破されます。
なぜか。
オールド・リベラリストたちが前提にしていたのは、いわゆる「ブルジョア市民道徳」でした。国民の大多数が「当たり前に正しい」と思い「憧れる」ような標準的な規範です。その前提で、イギリス王室的なモデルが掲げられました。
しかし現在、その前提は成立するのでしょうか。いまや「価値観の多様化」が叫ばれており、欧米でも国論は極端に二分されています。LGBTなどの価値観をめぐる議論や、アメリカにおけるトランプ派と民主党との戦いなどは、まさに典型的でしょう。
このような時代に、天皇が「国民に寄り添う」ことなど可能なのか? 何らかの価値観に寄り添ったら、そうではない価値観を持つ勢力から強い反発を受けてしまうのではないか? そんななかで「人間的に尊敬される天皇」というあり方が成立するのか?
しかも人間として尊敬されるべく「開かれた皇室」のあり方を進めることで、国民から監視され「見世物」のようになってしまう一面も否定できない。SNS時代には、ますますそうなる。そのことの厳しさが、皇族の皆さま方に大きな精神的プレッシャーとなり、お心の問題を公にせざるをえない方々が続くような事態も招来してしまっているのではないか?
このような問題提起は、まことに重要でしょう。
この問題をいち早く見抜いていた1人が三島由紀夫でした。三島由紀夫は「三島由紀夫vs東大全共闘」として有名な昭和44年の東大駒場キャンパスでの公開討論会で、次のように発言しています。
《今の天皇は一部の人が考えるように非常に立派な方だ、今どきめずらしい素直な立派な方で、それだからこそ私はあの天皇は大好きで、あの天皇のためなら何でも尽くす。こういう考えを私は持っているわけじゃないのです。それは小泉信三とかオールド・リベラリストたちの天皇観です》
「三島由紀夫は、そのような考えでは『立派ではない皇族がいるから、天皇家はなくていい』というレベルの議論になってしまうと見抜いていた」と片山先生はおっしゃいます。はたして、三島の考えとはどのようなものだったのか。
さらに片山先生は、帝国議会の開設(1890年)の前の1882年に福澤諭吉が発表した「帝室論」について考察されます。
福澤諭吉は、議会政治の本質は「政党の対立争闘は火のごときものであり、また国会の制定する法令は情の薄いものである」から、天皇はそのような党争から超然としていなければならない。国会の対立が盛夏のごとく厳冬のごとくであっても《帝室は独り万年の春にして、人民これを仰げば悠然として和気を催す》ようなものでなければいけないと強調しました。
それゆえにこそ、福澤諭吉は「皇室財産」のあり方にも深いまなざしを向けます。議会の対立から超然としているためには、しっかりした皇室財産が必要不可欠だと主張したのですが、その先に見据えていたものとは?
これらの議論の詳細については、ぜひ講座本編をご覧ください。
「この段階で、運を天に任せるのは無責任」だと片山先生はおっしゃいます。これからの皇室について、どのように考えていくべきか。片山先生の議論と問題提起をきっかけに、多くのことを考えることができるはずです。
(アドレス再掲)
◆特集:天皇と日本について考える
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=152&referer=push_mm_feat
◆片山杜秀:天皇のあり方と近代日本(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4289&referer=push_mm_rcm2
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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回は「食料自給」についての問題です。ではレッツビギン。
( )が就任した時に85%ぐらいだったフランスの食料自給率は、10年後にはなんと120%にまで上がりました。
さて、( )にはフランスの元大統領の名前が入ります。誰でしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1057&referer=push_mm_quiz
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編集後記
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今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。
さて、毎月本のプレゼントを行っておりますが、これまでたくさんのご応募ならびに貴重なご意見をいろいろと頂きまして、大変有難く感じております。
そのなかで、テンミニッツTVについて、動画を視聴するだけでなく、テキストや資料などもついているので、そこが有難いと書かれる方もいらっしゃいます。恐縮ながら、スタッフとして大変嬉しく感じており、今後の励みになります。
また、テンミニッツTVは音声だけで聴くこともできますので、そういった意味では、いろいろな角度から満喫できるメディアになっております。これからも皆さまの知的好奇心をより刺激する、また学びの向上につながる貴重な講義の収録・配信を心がけてまいります。ご期待ください。
ちなみに2月のプレゼント本は、坂井孝一先生(創価大学文学部教授)の『鎌倉殿と執権北条氏:義時はいかに朝廷を乗り越えたか』 を予定しております。
『鎌倉殿と執権北条氏:義時はいかに朝廷を乗り越えたか』 (坂井孝一著、NHK出版新書)
https://www.amazon.co.jp/dp/4140886617/
2月に入りましたが、改めてメルマガでもお伝えいたします(応募開始は2/1<火>から)。
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