編集長が語る!講義の見どころ
プーチンは何を考えているのか?(山添博史先生&特集)【テンミニッツTV】

2022/04/01

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

プーチンによるウクライナ侵略。このことを考えるにあたり、「プーチンは何を考えているのか」「そもそもプーチンの政治とはいかなるものなのか」を知っておくことは、とても重要なことでしょう。

本日は、山添博史先生(防衛研究所地域研究部主任研究官)による、プーチン政治講座を紹介いたします。全6話の講座ですが、3月30日にそのうち第1話《10分でわかる「プーチン政治」》の配信がスタートしました。

この「10分でわかる講義」は、コンパクトにプーチン政治の構造や、ウクライナとロシアの歴史的経緯を端的に理解できる内容。続く、第2話以降の「深掘り講義」で、より詳細に学ぶことができます。

◆山添博史:プーチンのロシア―その思想と戦略―(全6話)
(1)プーチン政治の特徴
10分でわかる「プーチン政治」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4427&referer=push_mm_rcm1

山添先生が最初に指摘されるのは、プーチンが、1990年代のソ連崩壊とそれに続くエリツィン政権の混乱のなか、それを収拾することを期待されて権力の座についたことです。

ここで興味深いのが、ロシア帝国のツァーリ統治モデルとの比較です。ここは、講座中で示される図を見ると一目瞭然ですが、ロシア帝国時代、庶民は「貴族や役人は、自分たちを搾取する悪者で、ツァーリ(皇帝)はそれを取り締まってくれる存在だ」と信じていたというのです。

それと同じく、プーチンも「悪いオリガルヒ(新興財閥)や役人たちを叱ってくれる人だ」と期待したというのですが……。

ロシア人の権力像、さらにプーチンが支持を集める理由が、たちどころにわかります。

次に、ウクライナとロシアの歴史です。ここも講座中の図がまことに秀逸です。

よく指摘されるように、ロシア人からすると、9世紀後半から13世紀半ばまで存在したキエフ・ルーシ(キエフ大公国)の歴史があるので、ロシアの祖先はキエフ(ウクライナ)だという意識があるといいます。

しかし、ロシアとウクライナには大きな違いがあると山添先生は指摘されます。それは、ウクライナはキエフ・ルーシ以後、モスクワから離れていた期間のほうが長いことです。

加えていうと、これは第4話の「深掘り講義」でご解説いただく内容ですが、モンゴル帝国がユーラシア大陸を席捲した13世紀以降、モスクワはモンゴル帝国(キプチャク・ハン国)の支配下にありましたが、ウクライナは違ったのです。モスクワはモンゴル帝国支配の伝統もあって、後に中央集権的な帝国になっていきますが、ウクライナはいくつかの諸侯に分かれて、ポーランドやリトアニアの下に入っていた時期を経ています。

当然、歴史的なアイデンティティが大きく違うということです。

さらにプーチンが進めている「対外影響力工作」があります。ウクライナやジョージア(旧名称=グルジア)などで民主化を求める「カラー革命」が起こりますが、プーチンはこれをアメリカの介入と認識しています(第3話で詳しく解説されます)。

さらに旧ソ連圏への特別な思いもある。旧ソ連圏には、ロシア帝国時代からソ連時代を通じて、かなり多くのロシア人が居住するようになっています。プーチンとしては「一体性がある」という意識を強く持っているのです。

そこで「ハイブリッド戦争」という動きが起こります。山添先生は本講座の第3話でこれを、「政治的手法と軍事的手法のハイブリッド」とご説明くださいます。

2014年のクリミア半島併合のときは、軍事侵攻ではあるものの、「戦争まではいかない」微妙な位置づけで押し通していきます。このときウクライナ側としては、もしこれを「戦争」としてしまったら、「ロシア対ウクライナの戦争」になってしまうので、非常に対処が難しかったのだといいます。

しかし今回、プーチンは「戦争」の敷居をまたいでしまいました。そのことの意味はどこにあるか。またプーチンが展開する「情報戦」の怖さはどこにあるのか。それらについては、第5話で詳述いただいています。

そして山添先生が指摘されるのは、ロシアと中国の関係です。ロシアと中国を引き剥がせるとは考えるべきではない。ロシアと中国は、お互いに相手を縛るのではなく、「対アメリカ戦略」でお互いに有利なようにお互いを利用しあっているのです。この関係の深い部分については、第6話で詳述いただいています。

今後、続く各話は毎週水曜日に配信されます。第2話以降の「予定タイトル」をご紹介します。

(2)政権初期の成果とロシアの闇
(3)「ハイブリッド戦争」とは何か
(4)ロシアとウクライナの歴史観
(5)侵攻の論理と情報戦略
(6)中露関係と日本の対策

また、以前にもお報せした「ウクライナ侵略の背景を読み解く」特集も再度ご紹介いたします。テンミニッツTVならではの多彩な先生方の講座で、様々な角度から今回のロシアによるウクライナ侵略の背景を学ぶことができます。ぜひ気になる講義をご覧ください。

◆特集:ウクライナ侵略の背景を読み解く
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=157&referer=push_mm_feat

・山添博史:10分でわかる「プーチン政治」
・山内昌之:なぜロシアはウクライナに侵攻したか、中国の深謀遠慮とは?
・島田晴雄:プーチンの安全保障と外交戦略の特徴
・島田晴雄:ロシアの経済と国際戦略、日本との関係を整理する
・山内昌之:複雑なウクライナの宗教と民族との関係
・中西輝政:プーチンが模索しているロシア外交の「息継ぎ戦略」とは
・曽根泰教:永続権力が狙い?…ロシア大統領選挙は2024年が重要
・小野寺五典:知らないうちに侵略される「ハイブリッド戦争」の恐怖


(※アドレス再掲)
◆山添博史:プーチンのロシア―その思想と戦略―(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4427&referer=push_mm_rcm2

◆特集:ウクライナ侵略の背景を読み解く
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=157&referer=push_mm_feat


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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回はアンチエイジングにとって重要な「テロメア」についての問題です。ではレッツビギン。

テロメアが長い状態の(    )細胞であれば、コロナへの抵抗力がありますが、テロメアが短くなってしまった(    )細胞がコロナウイルスに出会うと、そういう細胞がすぐ減ってしまうことも、今回のコロナ禍の中で分かってきています。

さて(    )には何が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4409&referer=push_mm_quiz


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編集後記
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今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて本日から新年度の始まりです。また、この四月から新学期を迎えるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな皆さまにぜひおすすめしたい特集がございます。

◆特集:春に「人間力」を高める(令和4年版)
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=159&referer=push_mm_edt
田口佳史:「徳」の本質とは「自己の最善を他者に尽くしきる」こと
北河原公敬:「無財の七施=七つの施し」で身につく菩薩の精神とは?
黒川伊保子:家族の対話は問題解決型ではなく、「心の対話」をすべし
渡部玄一:終戦後ドイツの復興を支えたキリスト教と「教会の力」
川合伸幸:高齢者は本当にキレやすいのか――「怒り」の実態に迫る
江上剛:ハローワークでの衝撃と心が病んでいく「のに病」の恐怖

こちらは3月11日に配信開始となった特集ですが、新しいスタートを切った今、改めてご視聴いただき、2022年度を充実したものにしていただければ幸いでございます。

それではこれからもテンミニッツTVをご愛顧のほど、どうぞよろしくお願いいたします。