編集長が語る!講義の見どころ
大波乱の世界を読むための必須知識(特集&白石隆先生)【テンミニッツTV】
2022/04/08
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
キエフ近郊に侵攻していたロシア軍の撤退により、悲惨なウクライナの被害状況が露わになってきました。ロシア軍の暴虐は、日本人としても1945年に樺太や北方領土、満洲などの各地で直に経験しているだけに、胸が締めつけられます。
しかし、日本はロシアの「隣国」です。しかも、「台湾有事」の懸念も指摘されて久しい状況もあるなか、ウクライナ侵略は、もはや対岸の火事とはいえません。
■本日開始の特集:ロシアの暴走、米中の迷走…2022年大波乱の世界を読む
国際情勢を見る場合、どうしても眼前の事件に引きずられ、それを追うことに終始してしまいがちです。しかし、それではなかなか未来を見通すことはできませんし、日本がいまどこにいて、何をしなければいけないのか、ということも見えてきません。
2022年の世界の現実と今後を、マクロの視点とミクロの視点の両方から読みとける講座群です。
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=163&referer=push_mm_feat
・白石隆:海洋アジアと大陸アジアの対立へ、地政学的舞台が移動
・島田晴雄:日本周辺が最も危険!?米国を中心とした中国包囲網の実態
・山添博史:プーチンとオリガルヒの不可思議な関係とロシア社会の闇
・山内昌之:なぜロシアはウクライナに侵攻したか、中国の深謀遠慮とは?
■講座のみどころ:世界の大潮流をふまえて日本の戦略を考える(白石隆先生)
このようなときこそ、やはり世界の趨勢(すうせい)を理解しておくことが必須であることはいうまでもありません。本日紹介するのは、白石隆先生(公立大学法人熊本県立大学理事長)が「大戦略」的な視点から国際情勢を俯瞰してくださった講座です。
白石先生は、様々なデータを紹介くださり、世界の大きなトレンドが1990年代からどのように動いているのかを的確に分析された後、コロナ後の情勢、「中国の夢」のあり方、アメリカの安全保障戦略、米中対立と東アジア、ASEANの今後、日本の有事対応についてご教示くださいます。
まさに、自らの「世界認識」を養い高めるのに、最適な必見講座といえるでしょう。
◆白石隆:米中戦略的競争時代のアジアと日本(全7話)
(1)多極化する世界と富の分布の変化
海洋アジアと大陸アジアの対立へ、地政学的舞台が移動
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4353&referer=push_mm_rcm1
まず、白石先生が比較されるのが、1990年と2019年の世界経済のあり方です。
1つめは1990年~2000年には、先進国が世界経済の約80%を占めていたが、2019年には先進国が約60%、途上国・新興国が40%になっていること。
2つめは、北米とEU地域が1990年~2000年には世界のシェアのおよそ60%を占めていたが、2019年には50%を切っていること。代わりに「インド太平洋」が伸びていること。
3つめは、インド太平洋の中で、1990年~2000年には、日本が「日本以外のインド太平洋の国々」を全部合わせたよりも大きかったが、2019年には中国が「日本も含めたそれ以外の経済全部」を合わせたものと同じぐらいの規模になっていること。
さらに2019年の世界経済に占めるシェアで見ると、アメリカが25%。中国が16%。日本、ドイツ、インド、イギリス、フランスが3~6%という姿です。
いずれも、もちろん漠然とは理解していることですが、数値とともに整理していくと、様々なことが見えてくるようになります。
講座の最終話(第7話)では、現在の日本の位置づけについて、白石先生は次のように指摘します。
《日本はどんどん小さくなっていると日本人が考えるのは別に不思議ではない。1990年や2000年には世界経済の14~15%のシェアを持っている大国だった。ただし、2022年から2041年まで日本の成長がほとんど停滞したとしても、日本は世界経済の2.3~2.4%。つまり、インド太平洋地域では中国、インド、たぶんインドネシアに次ぐ存在感を持った国ぐらいにはとどまる》
そのうえで白石先生は、「そう悲観したものではないと、実は私は思っています」とおっしゃいますが……。
また、軍事支出について、アメリカを100%として各国を比較したものを「1988年→2018年」で見ると、以下のようになります。
・中国3.9%→38.5%
・ロシア(ソ連)83.9%→9.5%
・英仏独11~13%→7~10%
・日本9.6%→7.2%
・韓国2.6%→6.6%
・オーストラリア2.0%→4.1%
・インド3.9%→10.3%
インド太平洋地域で見ると、周辺諸国の大きな伸びと比較して、日本が立ち遅れていることが一目瞭然です。これは西側先進国と対比しているだけでは見えてこない厳しい現実でしょう。とりわけ中国の軍事費については、上記の数字以外のブラックボックスの部分も多いので注意が必要であることがよくわかります。
白石先生は、日米同盟の維持と自由主義的国際秩序の維持が日本の死活的な条件であり、そのために防衛力・防衛基盤の拡充、日米同盟の双務性の担保、新しい産業政策が必要だとおっしゃいますが、その具体的な内容については本編第6話をご覧ください。
一方、大きく力を伸ばしているのが、いうまでもなく中国ですが、その中国について白石先生は次のように分析されます。
中国は現在、「中国はどんな国よりも大きいのだから、小国は言うことを聞け」という帝国的ルールメイキングのやり方で、インド太平洋地域に臨んでいる。アメリカはこれに対して、日米豪印の「QUAD」や、あるいは米豪英の「AUKUS」というハブ&スポーク戦略で対抗しようとしている。
しかし、中国も2040年あるいは2045年頃を見通すと「少子高齢化の未来」が待っている。そのため、「中国の夢」を実現するウィンドウ(機会)は、たかだか20年ほどしかない。今後、社会福祉や医療を現在よりもはるかに手厚くしていけば、国内マーケットだけでもそこそこ成長していく可能性はある。そのためには、中国は現在の野心を捨てなければいけないが……。
このような巨視的な分析から、どのような未来が見えてくるのか。もちろん白石先生は、台湾有事も視野に捉えていますが、そのなかで日本はどうすべきなのか。それについては、ぜひ講義本編をご覧ください。
日本の今後を考えるためには、このような大きな流れはぜひとも頭に入れておきたいところ。その点で、益するところの極めて多い講義です。
(※アドレス再掲)
◆特集:ロシアの暴走、米中の迷走…2022年大波乱の世界を読む
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=163&referer=push_mm_feat
◆白石隆:米中戦略的競争時代のアジアと日本(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4353&referer=push_mm_rcm2
※白石隆先生の「隆」は、実際は旧字体(件名、本文いずれも)
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編集後記
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今回のメルマガ、いかがでしたか。
皆さま、はじめまして。今年度新入社員のSと申します。
4月5日から部署別研修が始まり、現在テンミニッツTVで制作・運営等の研修を受けています。
今回、編集後記を書く機会をいただきましたので、私自身のテンミニッツTVについての思いを綴りたいと思います。お付き合いいただけますと幸いです。
私も含め、デジタルネイティブ世代は興味のある情報ばかりを収集する傾向があります。各種メディアの「レコメンド機能」をご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、利用者の好みの傾向から同じような内容の情報がおすすめされるのです。
先日、友人とNetflixの話をした際、友人に私のおススメ映画を紹介したのですが、それとは別にNetflixからつねに面白そうな番組がレコメンドされるため、私のおススメ映画を見る時間がないとフラれてしまいました。昔はお互いに面白いものをおすすめし合い、そこから新たな興味が発生することもあったので、少し残念です。
テンミニッツTVの話に戻りますが、はじめて利用したとき、講義の多彩さや講師陣の顔ぶれに非常に衝撃を受けました。書籍のようなクオリティでかつ気軽に教養に触れることができる。そして講義を見れば見るほど、自分の世界も広がっていくような気がしたのです。
私はよく祖父と話をするのですが、その際に必ず歴史の話を聞かされます。毎度毎度楽しそうに話すので何がそんなに?と思うこともあったのですが、テンミニッツTVを見て、やっと祖父の気持ちを理解することができました。
今後、テンミニッツTVは多世代をつなぐメディアにもなれるように思いました。
ちなみに、私のおススメ講義は以下になります。
現代人の歴史解釈の基本は「ふりかえれば未来」
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所特任教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=697&referer=push_mm_edt
グローバル・ヒストリーの中で日本の歴史を俯瞰する意味
上野誠(國學院大學文学部日本文学科 教授/奈良大学 名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4203&referer=push_mm_edt
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
暖かい春の日が続くまであともう少しですね。皆さま、お体にお気をつけてお過ごしください。
※「レッツビギン!穴埋め問題」は今回お休みいたします。
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