編集長が語る!講義の見どころ
「激動と激変の世界」の読み方2022(島田晴雄先生)【テンミニッツTV】

2022/04/12

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

大きな国際的な事件が起きて、世界情勢が一変する。それは、もちろん当然のことです。今回のソ連によるウクライナ侵略をきっかけに、世界の形は大きく変わりつつあるといえるかもしれません。

しかし、世界がどのように変わったのかを知るためには、「その事件の前の世界」を知っておくことが大切です。

たとえば、日独伊三国同盟が締結されたのは1940年9月ですが、ドイツがポーランドに侵攻したのが1939年9月、フランスのパリに入場したのが1940年6月のことです。このときのドイツの快進撃が「三国同盟締結」の背中を押したわけですが、しかし、第二次世界大戦前から続いていた日中戦争の状況を知らなければ、「なぜ日本が三国同盟を結んだのか」を理解することはできません。

この三国同盟の話は、あくまで「たとえ話」ですが、ウクライナ侵略についても、その直前の世界情勢がどうなっていたかを把握しておくことが、きわめて重要であるはずです。

本日紹介する島田晴雄先生(慶應義塾大学名誉教授)の講座は、今年の1月18日に収録されたものですが、今回のウクライナ侵略の後に世界がどう動くかを考えるために知っておくべき世界情勢を、とても明解に頭のなかで整理することができます。

先週の金曜日に紹介した特集〈ロシアの暴走、米中の迷走…2022年大波乱の世界を読む〉の2番目にも入っている講義ですが、あらためてその内容を紹介いたします。

◆島田晴雄先:「激動と激変の世界」の読み方2022(全4話)
(1)バイデン政権と揺らぐ外交関係
日本周辺が最も危険!?米国を中心とした中国包囲網の実態
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4385&referer=push_mm_rcm1

まず島田先生はアメリカについて、バイデン政権誕生以降の事跡を端的に紹介しつつ話を進めていきますが、ここで重要なのは、次の2点のご指摘でしょう。

《ところが、その東シナ海、要するに西太平洋では、軍事力において、今アメリカは全然、中国にかないません》(第1話)

《実際に2022年1月までにどうなったかというと、19の州が(投票制限法を)通してしまいました。これだと、バイデン氏が頑張っても2000万票ぐらい足らないので、中間選挙では民主党は大敗するでしょう》(第2話)

それぞれの詳細については、ぜひ講座本編をご覧いただければと思いますが、前者の東アジア情勢についていえば、だからこそアメリカは、「Quad」(日米印豪)」や「AUKUS(豪英米)」などをつくって対抗しようとしているのです。また、アフガニスタンから撤退したのも「要するに、中国と戦わなければいけないから引き揚げたいというのが本音です」と島田先生はおっしゃいます。

この流れのなかで、フランスやドイツやイギリスも、インド太平洋に軍艦を派遣していました。

それがウクライナ情勢が混沌とした場合にどうなるか。しかも、ロシアによるウクライナ侵攻の前から、「バイデン政権の国際戦略はほとんど成功していない」と島田先生は分析しています。

日本にとっては、まさに考えねばならぬことが山積といえましょう。

後者の「バイデン政権が中間選挙で負ける」という部分も、今般のウクライナ情勢を見るかぎり、必ずしも好転するとは思えません。

島田先生は、「バイデン大統領(および民主党)が中間選挙でも、次の大統領選挙でも負けると米国の国際協調主義が終わる可能性が高い。となると、国際協調主義に一番忠実な日本は大変なことになる。またアメリカの指導力がどんどん落ちて、世界はもっと多極化し混乱化するのではないか」とお見立てです。

そうなった場合、中国はどうするのか。島田先生は中国の動きも、明解にまとめてくださいます。

現在、中国が保有する主力戦闘機は約1200機(一方、日米合わせても約300機)。主力戦闘艦は71隻(日米の3倍)。主力潜水艦は52隻(日米の3.5倍)。日本とグアム島が入る中距離ミサイルは500~700基、台湾が十分入る短距離は500~1000基……。この軍事力を背景に、東シナ海、南シナ海で覇を唱えているのです。

しかも、習近平がやっていることは毛沢東とそっくりだと島田先生は喝破します。具体的にはいうまでもなく権力闘争のあり方や、歴史決議、習近平思想の強制、企業統制、共同富裕などですが、その詳細な分析はぜひ講座第3話をご覧ください。

島田先生は、「この体制の最大のリスクは、個人に権力を集中していること」とおっしゃいます。たしかに最近のプーチン大統領の姿を見ていると、ロシアや中国の権力構造の危険性が身に迫ります。

第4話では、EUのこと、さらにアジアのことが概説されます。EUはもちろん、その後のウクライナ侵攻で状況が大きく変わっていますが、その直前の問題点がどこにあったかを理解しておくことは、とても重要なことだと思われます。

島田先生は「ヨーロッパはかつてのヨーロッパと全く違って、求心力、凝集力が落ちてきてしまっている」とおっしゃいますが、それが今後どうなるか、十分な観察が必要なところでしょう。

こういうときにこそ、大局的に把握してみる。そのときに、まことに有益な講座です。ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆島田晴雄:「激動と激変の世界」の読み方2022(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4385&referer=push_mm_rcm2


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☆今週のひと言メッセージ
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《「問題解決の対話」は「心の対話」のあとにすればいい》

家族の対話は問題解決型ではなく、「心の対話」をすべし
黒川伊保子(株式会社感性リサーチ 代表取締役社長/人工知能研究者/随筆家)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4142&referer=push_mm_hitokoto

会話には、事実で始まる会話と、感情で始まる会話がある。事実で始まる会話は、問題解決は急げるけれども、実は心はつながらない会話なのです。私は、家族は押しなべて「心の対話」をするべきで、「問題解決の対話」は「心の対話」のあとにすればいいと思っています。

では、「心の対話」はどのように行うか。男性の方はよく、家に帰ってきて、妻と少し話そうかなと思ったとき、「今日、何してた?」と聞くのですが、これはダメです。いきなり「5W1H」で話しかけているからです。


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今週の人気講義
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プーチンとオリガルヒの不可思議な関係とロシア社会の闇
山添博史(防衛研究所地域研究部主任研究官)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4428&referer=push_mm_rank

世界の英雄神話に共通する「異常出生物語」の不思議
鎌田東二(京都大学名誉教授/上智大学大学院実践宗教学研究科特任教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4400&referer=push_mm_rank

世界が抱える「3つの危機」と気候変動の深刻な関係
小原雅博(東京大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4433&referer=push_mm_rank

テロメアを伸ばすために大事なのはストレスマネジメント
堀江重郎(順天堂大学医学部大学院医学研究科 教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4409&referer=push_mm_rank

「戦わずして勝つ」ことを唱える『孫子』が注目される理由
田口佳史(東洋思想研究者)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3058&referer=push_mm_rank


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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。

さて、昨日(4/11)より橋爪大三郎先生(社会学者)の新シリーズ講義〈死と宗教~教養としての「死の講義」〉の配信が始まりました。

◆橋爪大三郎:死と宗教~教養としての「死の講義」(全7話予定)
(1)「自分が死ぬ」ということ
10分でわかる「死と宗教」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4440&referer=push_mm_edt

この講義は橋爪先生の著書『死の講義』(ダイヤモンド社)をもとに、死と宗教について分かりやすく丁寧に解説されている非常に貴重な講義です。「死」についてキリスト教や仏教など世界の宗教はどう捉えているのか、そして日本人の死生観としてどう考えればいいのかなど、「死」とは何かを学ぶことができる最適な講義です。

毎週月曜日配信で全7話の予定です。ぜひ続けてご視聴ください。