編集長が語る!講義の見どころ
江戸とローマ~テルマエ編&諷刺詩編(本村凌二先生)【テンミニッツTV】

2022/04/19

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

「古代ローマ」と「江戸」を様々な面から比較することで、本当に幸せな社会とはいかなるものか、人間が望み求めるものとはどのようなものかが、自ずと見えてくる――。そんな観点から「江戸とローマ」について語る、本村凌二先生の大好評講座シリーズの配信が進んでいます。

本日紹介するのは、第2シリーズ「テルマエと浮世風呂」編と、第3シリーズ「諷刺詩と川柳・狂歌」編です。

テルマエといえば、ヤマザキマリさんの漫画『テルマエ・ロマエ』を想起される方も多いでしょう。テルマエは公衆浴場のこと。ローマも江戸も、公衆浴場文化が花開きました。公衆浴場が整備されているということは、当然ながら水や燃料などに事欠かず、また、ゆっくりと風呂を楽しむ平和で豊かな庶民文化が確立していたことを意味します。そのような「水道文化」はいかに築かれたのか。

一方の「諷刺詩」が、粋で鋭い庶民的な感性を代表するものであることもいうまでもありません。ローマ人たちにとって、ギリシア文化は常に自分たちの先生格のような存在でしたが、諷刺詩だけはギリシアに負けないオリジナリティが高い文芸ジャンルだとして誇っていたそうです。また、江戸では狂歌や川柳の「サークル」ができて、武士層から庶民層までが階級の壁なく同じ場所に集い、句を競い合ったり、狂歌で盛り上がったりしていたのです。

はたして、それぞれについて江戸とローマを比較することで、何が見えてくるでしょうか。

◆本村凌二:江戸とローマ~テルマエと浮世風呂(全3話)
(1)卓越した水道システム
ローマ水道と江戸の上水、卓越した両者の水道システム
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4350&referer=push_mm_rcm1

◆本村凌二:江戸とローマ~諷刺詩と川柳・狂歌(全4話)
(1)諧謔精神の爛熟
諷刺精神に富んだパックス・ロマーナ、悲劇より喜劇が人気
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4360&referer=push_mm_rcm3

まずは江戸とローマの水道と風呂文化についてです。両者の水道インフラは、いうまでもなく、まことに見事なもので、世界の諸都市と比べても突出したものでした。

本村先生は、ローマの見事な点は、先行する周辺地域の文化を取り入れ、それを大規模かつシステマティックに構築したことだといいます。オリジナリティはけっして高くはないが、物事をソフィスティケイトしていく能力が卓越していたというのです。

水道も同じで、ギリシアにもカルタゴにも水道橋がありましたが、ローマ人はそれを大規模にシステム化していきました。ローマの町だけで15~16の水道が構築されます。その水道のうちのいくつかは現在でも使われており、有名なトレヴィの泉の水も、そのような水道から取られています。

古代ローマでは市内の至るところに水場があり、水は流しっぱなし。あふれた水はそのまま流して下水代わりにしたり、道をきれいにする効果を担わせたりしたとか。本村先生は「本当にもったいないぐらいの使い方」だとおっしゃいます。それはポンペイなどの周辺都市でもそうでした。

江戸でも神田上水や玉川上水を整備し、さらに江戸市中には密閉性の高い木樋を縦横無尽に張り巡らせて、逆サイフォン原理で水を揚げたりすることも行なわれていました。同時期の欧州と比べても、卓越した仕組みでした。

ローマでは、このような水道を整備したのは主として「政府」ではありませんでした。お金持ちには「持てる者はなんらかの形で社会に還元しなければいけない」という行動原理があったのです。「エヴェルジェティズム(恵与行為)」と呼ばれる精神で、公衆浴場、水道橋、道路などの建設も、富裕者階層が進んで担う時代が長く続きました。

そのようにして築かれていった水道設備や公衆浴場。ローマ人の男性たちは、午前中は仕事をして、風呂は午後に入りに行く。一方、女性は午前中に入っていた。お湯も冷たい、中くらい、熱いという3種類があった。公衆浴場には遊戯室や図書館もあって、そこでゆっくりと午後いっぱいを過ごしていたといいます。

本村先生は、そのような入浴文化が廃れてしまったのはキリスト教が普及したためではないかとおっしゃいますが、それがどのような理由によるかは、ぜひ講座本編をご覧ください。

もう一方の諷刺詩ですが、やはりまずは作品を知るにかぎるでしょう。

たとえば、ローマの諷刺詩では、ホラティウスの「間男どもの成功を心よからず思うなら、耳を洗って聞くがよい。彼らは四方八方でさんざん苦労したあげく、こうした邪道の楽しみは、いろいろ苦労を伴って、しかしほとんどものにならず、えてして危険な目にあって、損をするのが関の山」。

一方、江戸の川柳では「南無女房 ちちをのませに 化けて来ひ」。

それぞれ、どのようなものかは、ぜひ講座本編をご覧ください。

ローマも江戸も、平和な時代が長く続き、周辺地域から大量の人間がやってきた都市です。それが独特の文化をつくりあげていったといいます。このような諷刺が流行するのは、トップレベルの文化や教養があればこそでもありました。

たとえばローマでは、文化が爛熟して、頽廃した暮らしになっていったといわれることもありますが、本村先生は「実は、その逆ではないか」とおっしゃいます。健全な批判精神が育まれて円熟してきたのではないかというのです。

また、江戸でもローマでも、人口100万人にもかかわらず、お互いが無関心ではいられなかった社会だったことが、このような粋な諷刺を産み出したともいいます。それはどのようなことなのでしょうか。

望ましい人間や社会のあり方について、多くのことを考えさせてくれる講座です。ぜひ両編ご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆本村凌二:江戸とローマ~テルマエと浮世風呂(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4350&referer=push_mm_rcm2

◆本村凌二:江戸とローマ~諷刺詩と川柳・狂歌(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4360&referer=push_mm_rcm4


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☆今週のひと言メッセージ
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《徳は孤ならず必ず隣あり》

伊能忠敬の生き方に学ぶ「50歳からの目標」とは?
童門冬二(作家)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3234&referer=push_mm_hitokoto

『論語』の中に「徳は孤ならず必ず隣あり」という言葉があります。自分で「こういうようなことをしましたよ」と言わなくても、人のためになることをしていれば、黙っていても隣人というか慕う人が次々と出てくるということで、彼(伊能忠敬)の場合はその典型じゃないですかね。


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今週の人気講義
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日本周辺が最も危険!?米国を中心とした中国包囲網の実態
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4385&referer=push_mm_rank

ハイブリッド戦争を理解するための“伝統的な敷居”とは
山添博史(防衛研究所地域研究部主任研究官)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4429&referer=push_mm_rank

10分でわかる「死と宗教」
橋爪大三郎(社会学者/東京工業大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4440&referer=push_mm_rank

日本を「間抜け」呼ばわり…スターリンの思惑と戦争への道
福井義高(青山学院大学 大学院国際マネジメント研究科 教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4412&referer=push_mm_rank

差別価格の実例でダイナミックプライシングの真髄がわかる
伊藤元重(東京大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4365&referer=push_mm_rank


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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて、皆さん、本屋大賞の発掘部門を知っているでしょうか。今年(2022年)の発掘部門「超発掘本!」として選ばれたのは『破船』(吉村昭著、新潮文庫)でした。

https://www.hontai.or.jp/find/vote2022.html

「衝撃的です」から始まる推薦コメントには、「2020年、海の向こうからやってきたウイルスが現在も続いている今なら、この本の“恐れ”の意味も時代を超えて理解できる恐怖として、ぜひ紹介したい一冊として取り上げました」とあります。非常に興味深いコメントなので、読んでみたくなる一冊だと感じました。

そこで、テンミニッツTVでも「超発掘本!」ならぬ「超発掘講義!」というものはどうだろうかと考えまして、以下を推薦いたします。

コロナ禍で注目されているデフォーの『ペストの記憶』とは
武田将明(東京大学総合文化研究科言語情報科学専攻准教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3675&referer=push_mm_edt

おススメする理由として、講義内の武田先生の言葉を引用してそれに代えさせていただきます。

「科学や医学が解決したり、あるいは宗教や哲学が救済したりできないものと、私たちはいかに向き合うことができるのでしょうか。『ロビンソン・クルーソー』、そして『ペストの記憶』など、ダニエル・デフォーの文学はこうした問題に立ち向かうヒントを授けてくれるはずです」

ちなみにこの講義は配信開始が1年半ほど前なので、「超発掘」というには語弊があるかもしれません。ただ、基本的に毎日1話ずつ配信で1年で400近くの新たな講義が配信となりますので、その積み重ねの重みのなかからの貴重な「発掘」という意味で推薦した次第です。ぜひご視聴いただければ幸いでございます。