編集長が語る!講義の見どころ
教養として「死」を考えてみる/特集&橋爪大三郎先生【テンミニッツTV】

2022/05/06

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

風薫る5月ゴールデンウィークの最終盤に「死の話」という特集は穏やかではありませんが、しかし、胸が痛むニュースも多い昨今です。あえて、この明るい春の季節に「死」について真っ正面から考えるのも意味あることではないかと考え、特集とさせていただきました。

西暦79年の火山噴火で埋まったポンペイの遺跡から「メメント・モリ(ラテン語:死を忘れることなかれ)」を想起させる骸骨(がいこつ)が描かれたモザイクが発掘されていることをご存じの方も多いのではないでしょうか。

ただこの当時の「メメント・モリ」は、「どうせ死ぬのだから、いまを楽しもう」という意味あいも強かったといいます。どちらかといえば、日本でいうところの「一期は夢よ、ただ狂え」(閑吟集)に近い感覚だったのかもしれません。死をどう捉えるかで、生き方も変わってくることは間違いありません。


■本日開始の特集:教養としての「死の話」

「死」とは何か。「自分が死ぬ」とはどういうことなのか。死んだらどうなるのか。「不老不死」は本当に必要なのか……。宗教、歴史、哲学など、さまざまな角度から「いのちと死」の本質、その意味、考え方、そして日本人の死生観について学びましょう。

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=166&referer=push_mm_feat

・橋爪大三郎:10分でわかる「死と宗教」

・鎌田東二:不老不死と「黄金のリンゴ」…神話が意味するものとは

・頼住光子(※):末法直前に法華一乗思想と浄土信仰を両立した源信の教え

・山田康弘:縄文時代の死生観と現代人の死生観は強くつながっている

・長谷川眞理子:『ホモ・デウス』を読んで長谷川眞理子氏が投げかけた問い

・長谷川眞理子:老いなき世界が告げるもの~永遠の命は本当に必要なのか~

※頼住光子先生の「頼」は、実際は旧字体


■講座のみどころ:死と宗教~教養としての「死の講義」(橋爪大三郎先生)

本日、特集のなかからご紹介するのは、橋爪大三郎先生の「死と宗教」についての講座です。

橋爪先生には、これまでのテンミニッツTVで世界の宗教についての珠玉の講義をいただいていますが、今回の講座も「死」について各宗教がどのような見方をしているのかを、わかりやすくご分析いただくことで、各宗教の特色も浮かび上がる出色の内容です。

橋爪先生らしい、簡明かつ的確な分析が冴え渡ります。必ずや、自分の心のなかに、明確な「座標軸」が屹立(きつりつ)すること間違いなしです。

◆橋爪大三郎:死と宗教~教養としての「死の講義」(全7話)
(1)「自分が死ぬ」ということ
10分でわかる「死と宗教」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4440&referer=push_mm_rcm1

はじめの「10分でわかる」講義は、「そもそも死とは何か」「なぜ死を科学で考えられないか」「死を考える意味はどこにあるか」などについてお話しくださいます。

たとえば、根強い人気(?)がある「臨死体験」について、橋爪先生がこう一刀両断するのは、小気味よくさえあります。

《臨死体験とは、結局死ななかった話です。死の一歩手前、いや百歩手前で、生きている人間の幻です。死ぬことと、ほぼ関係ありません》

いわれてみれば、そのとおりです。

さて、第2話からは、キリスト教、インド仏教、日本の浄土宗(浄土真宗)、禅宗、日蓮宗(法華宗)の死生観を見ていきます。

キリスト教でいえば、本当は死んですぐに天国に行くとか、地獄に行くということはないといいます。創造主である神によって造られた人間は、死んだらバラバラになり、霊魂も凍結状態のようになって「神様預かり」になる。そして、最後の審判のときに復活して、神の国に行くか、永遠の炎で焼かれるかのどちらかになる。つまり、全身麻酔のように、死んだ後に目が覚めると最後の審判に臨むことになるというのです。

また、本来的にいえば、死ぬのも生きるのも神の意思なので、自殺や延命治療などは許されないということになります。

とはいえ、キリスト教文明圏の芸術作品でも、死んで昇天するようなイメージが数多く描かれます。また、カトリックとプロテスタントでも、死後の世界に関する考え方には違いがあるといいます。それがどのようなことかは、ぜひ講座本編でご覧ください。

インド仏教でいえば、仏教の根本は「真理(=世界を貫いている法則)を覚る」ことです。そして世界を貫く法則とは、因果法則です。この因果関係には始まりも終わりもない。生命も連鎖のようにつながっている。生命は、生命でないものになったり、また生命になったりする(輪廻)。

しかも、バラモン教の場合は、覚った立派なバラモンは天人になると考えられましたが、仏教では、覚った釈尊は、バラモン以上の本当の真理を覚ったので、輪廻の法則の外に出て、雲散霧消して宇宙と合体すると考えられたといいます。どこにもいなくなったが、釈迦の見つけた因果の法則は、この宇宙に永遠に満ち満ちている……。

そこから、仏教の考えも多様に分岐していきます。それでは日本仏教の死生観とはどのようなものか。

浄土宗(浄土真宗)は、阿弥陀仏が「困った衆生をみんな救おう」と約束したので、誰でも、南無阿弥陀仏と念仏すれば、確実に「極楽浄土」に行ける。実は、極楽浄土は、覚るための「予備校」のようなところだといいます。ここでは誰でも1発で合格して仏になれるというのです。

このような考え方が、独特の現世観と人間観を生み出し、ある種の仏教共和国的な考え方も生れてきます。

禅宗の場合は、「坐禅をしている、そのときに、あなたはもう仏だ」と考える。坐禅をして、自分のなかの仏性に気づく。しかし、しばらくすると元の木阿弥になってしまう。だからまた坐禅をする。人間はその繰り返しだというのです。

日蓮宗(法華宗)では、「出家をしなくても、在家のまま、法華経の精神でビジネスに励めば、これが世の中の役に立つ。それが修行なのだ」と考える。死んでも、また菩薩としての修行を始めるだけだから、死を怖れることはない。そういう感覚だといいます。

また、三途の川や奪衣婆などは、実は日本でつくられた偽経に書かれたことだというのですが……。

このように、まとめているのも迂遠に思えるほど、目からウロコの話が続出する講座です。ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆特集:教養としての「死の話」
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=166&referer=push_mm_feat

◆橋爪大三郎:死と宗教~教養としての「死の講義」(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4440&referer=push_mm_rcm2


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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回は「口腔機能」についての問題です。ではレッツビギン。

口腔機能を回復させることで活動性が増し、認知症が改善されました。これにより、自立しました。(中略)要するに噛むことは、(    )なしで自立をもたらすのです。

さて(    )にはどんな言葉が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3412&referer=push_mm_quiz


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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて、本日はすでに配信が始まっている桑原晃弥先生(経済・経営ジャーナリスト)のシリーズ講義《スティーブ・ジョブズの成功哲学》を紹介いたします。

◆桑原晃弥:スティーブ・ジョブズの成功哲学 (全9話予定)
(1)世界を変えたジョブズの革命
10分でわかる「スティーブ・ジョブズ」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4439&referer=push_mm_edt

この講義はアップルの創始者スティーブ・ジョブズが世界にどんな影響を与え、どのように変えていったのか、その内実とともに彼の生涯、偉業に迫る貴重な講義です。
全9話で、本日(5月6日)現在、2話目(ジョブズの略歴〈上〉)まで配信中で、明日(5月7日)は3話目(ジョブズの略歴〈下〉)が配信の予定です。
この後も毎週土曜日配信予定で、永遠に続く会社の作り方、イノベーションの起こし方、なぜ「禅」に魅せられたのかなど、見逃せないテーマばかりです。ぜひ続けてご視聴ください。