編集長が語る!講義の見どころ
進歩する「がん治療」の最先端に迫る/特集&片岡一則先生【テンミニッツTV】

2022/05/27

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。

現在、「編集部ラジオ」の投稿を大募集中です。今回のテーマは【誰かに教えたくなる、オススメ講義】。

もちろん、「いま、この講座がお気に入り」という軽い気持ちのご投稿、大歓迎です。下記のアドレスに、「ラジオネーム(本名も可)」「オススメ講座(講師名&講座名)」「オススメの理由」をお書きいただき、ぜひご一報いただければ幸甚です。
radio@10mtv.jp

さて、日本人が「がん」で死亡する確率は、男性が26.7%(4人に1人)、女性が17.9%(6人に1人)です(2020年データ)。やはり、なお恐ろしい病である「がん」。しかし、この「がん」に打ち克つための医療技術の革新は大きく進んでいます。

本日は、そのがん治療の最前線で、実際に取り組んでおられる第一人者の方々の講座を集めた特集を紹介します。


■本日開始の特集:進歩するがん治療

医学研究の進展により、がん克服への道も着実に開けつつあります。がん治療の最前線はどのようになっているのか。未来の可能性を指し示す先端技術やがん治療の現状を紹介します。

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=169&referer=push_mm_feat

・片岡一則:ナノマシンによるがん治療…体内病院というイノベーション

・片岡一則:抗がん剤をナノマシンでいかにがん細胞に送り込むか?

・内田智士:コロナだけでなく個別化医療の可能性を秘めたmRNAワクチン

・堀江重郎:テロメアを伸ばすために大事なのはストレスマネジメント

・堀江重郎:男性のがんの中で先進国ではナンバーワン、日本でも急増中

・門田守人:がんの医療格差をなくすための「がん対策基本法」


■講座のみどころ:ナノテクノロジーでがんに挑む(片岡一則先生)

本日、特集のなかからピックアップするのは、「ナノマシン」によるがん治療に取り組んでおられる片岡一則先生(ナノ医療イノベーションセンター長/東京大学名誉教授)の講座です。

片岡先生はまず講座の冒頭で次のようにおっしゃいます。

《ナノテクノロジーを使って非常に小さなナノマシンを設計して体内に薬を運ぶ、あるいは薬を作り、病気を診断して治療する、そうしてがんを標的治療したい》

ナノマシンで、がん治療……。はたして、どのようなものなのでしょうか。片岡先生は動画や画像を多く用いてご解説くださいますので、イメージがとてもよくわかります。

◆片岡一則:ナノテクノロジーでがんに挑む(全8話)
(1)「iCONM」がめざす医療
ナノマシンによるがん治療…体内病院というイノベーション
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4370&referer=push_mm_rcm1

ナノマシンで薬を運ぶとは、どういうことか。片岡先生は、このようにご説明くださいます。

《マシンというと、歯車を組み合わせたり、あるいは素材を切って作ったりするイメージが強いですね。あとでお話をしますが、ナノマシンはすごく小さいので、そういう方法では作れません。分子を組み上げて作ります。例えば、分子をレゴのような形で組み上げて、その中に薬を入れ、現在だとそうしてがんに送り込んで治療をする仕組みとして使われます》

片岡先生がめざしているナノマシンのサイズは、30ナノメートル。大きさのイメージをわかりやすくイメージ化すると、人間を「地球と同じ大きさ」だとした場合、30ナノメートルは「サッカーボール」くらいだといいます。いかに小さいかがわかります。

実は、この大きさは、だいたいウイルスと同じくらいのサイズだといいます。このサイズに意味があるのです。

抗がん剤を包んだナノカプセルの直径は50ナノメートルになります。血管と細胞のあいだには酸素や栄養素が通る小さな隙間があるのですが、50ナノメートルだと、その隙間は通りません。しかし、がん細胞の場合は、正常な組織に比べると隙間が大きく、血管とのあいだに100ナノメートルの隙間がある。だから、抗がん剤を包んだナノカプセルは正常な細胞には入らず、がん組織の中にだけ入っていくのです。

現在、抗がん剤をがん細胞に届ける場合、そのようなことができません。だから正常な細胞にも働いてしまい、深刻な副作用が起きて、身体を苦しめることとなります。しかし、できるだけ的確にがん細胞だけに届けることができれば、現在よりはるかに身体に負担をかけずに治療することができるのです。

片岡先生は、実際にマウスで実験した画像や映像で、その様子を示してくださいますので、非常に直観的にナノマシン治療の効果を実感することができます。

現在、異なった種類の抗がん剤を入れた4種類が日本、アジア、アメリカ、欧州で臨床試験に入っています。臨床試験は、第1相ではまず少数の人で安全性をチェック。第2相では有効性と安全性を調べ、第3相が最終試験となりますが、現在、第2相まで進んでいる状況だといいます。

もちろん、これは簡単なことではありません。ナノマシンといっても、自分の力で動くわけではなく、静脈に注射をして、血流によって患部に送り込むことになります。そうすると、当然のごとく、肝臓や腎臓などの臓器で取られてしまう。それを避けるためには、あたかもレーダーで見つからないステルス戦闘機のような「ステルス性」が必要になります。

また、がん細胞の核に効率よく薬を届けるためにも、当然、工夫が必要です。それらのことを、いかに実現しようとしているのか。その具体的方法も片岡先生は図や映像などで詳述してくださっていますので、ぜひ講座本編をご覧ください。

さらに片岡先生は、メッセンジャーRNAを利用したがん治療についてもお話しくださいます。メッセンジャーRNAの部分は、テンミニッツTVの内田智士先生の講座も併せて視聴すると、より理解が深まることでしょう。

◆内田智士:感染症予防・がん治療に使えるmRNAワクチン(全5話)
(1)mRNAとは何か
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4042&referer=push_mm_rcm3

さて、片岡先生は講座の最終話では、あらためて概略をお話しくださり、副作用の危険性があるのか、ないのか。また、実用化までにどのくらいかかるかを教えてくださいます。

順調にいけば、4~5年後(本講座の収録は2021年5月)には実際に広く使われるようになるといいます。また、はじめに乳がん、次に脳腫瘍に対する開発を行ない、順次、対象になるがんを拡大していくとのこと。

少しずつ、がんも「治る病気」になってきている。その医学の進歩の最前線を教えてくださる本講座は、まことに刺激的です。ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆特集:進歩するがん治療
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=169&referer=push_mm_feat

◆片岡一則:ナノテクノロジーでがんに挑む(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4370&referer=push_mm_rcm2


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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回は古代ギリシアにおける「宇宙観」についての問題です。ではレッツビギン。

ソクラテスの弟子であるプラトンが「(     )説」を提唱します。そして、プラトンの弟子であるところのエウドクソス、アリストテレスがそれを発展させて、タマネギ型の宇宙像を完成させます。
(中略)真ん中に地球があって、その周りを太陽が回り、惑星が回り、一番外側を恒星が回るといったものです。

さて(    )には何が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3787&referer=push_mm_quiz


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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて最近、『子どもが教育を選ぶ時代へ』 (野本響子著、集英社新書) という本を読んでいます。
https://www.amazon.co.jp/dp/408721205X/

「10年後の日本の教育の姿」という帯に惹かれたこともありますが、とても興味深い話が多く、子どもの教育だけでなく、大人の学び、あるいは学び直しについて考えるうえで、非常に参考になる本だと感じています。

そのなかに、『サイエンス全史』の著書であるユヴァル・ノア・ハラリの話が出てきます。

《二十一世紀には、安定性は高根の花である。(中略)経済的にばかりではなく、とりわけ社会的にも存在価値を持ち続けるには、絶えず学習して自己改造する能力が必要だ――50歳のような若い年齢では間違いなく。(『21 Lessons)》

日本は世界のなかでも大人が学ばない国だといわれているようですが、ハラりの言葉を目にして、改めて学びの重要性を感じている今日この頃です。

ということで最後に、大人の学び直しについて参考になる講義を以下、紹介いたします。ぜひご視聴ください。

人生100年時代におけるリカレント教育の重要性
伊藤元重(東京大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2067&referer=push_mm_edt