編集長が語る!講義の見どころ
リーダーが持つべきセンスとは何か/特集&楠木建先生【テンミニッツTV】
2022/07/08
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
「リーダー的な発想」と「評論家的発想」ということについて、時折、考えることがあります。
以前、私が某雑誌の編集者だった時代に、当時の上司が編集会議などの場で、「お前は評論家か」と発言していたことを懐かしく思い出します。
社会の事象などに問題を感じたならば、それを少しでも改善するためにどうすればいいかを考えよ。雑誌の編集者という立場にあるのだから、たとえば「力のある論者に語っていただいて、少しでも世の中を啓発しよう」とか、「意見が正反対の論者による対談を企画して、世間の耳目をひくとともに、問題点を広く浮かび上がらせよう」とか、やれることは色々あるはずだ。それを、偉そうに編集会議で評論して終わらせるのか。お前の立場は、そうではないだろう。当事者意識とプロ意識がないのではないか…。というような意味を含んだ言葉であったように思います。
リーダーや経営者に求められるのも、まさに「評論家」的な言説ではない覚悟と行動であるようにも思います。もちろん、世の中には「評論家」の慧眼(けいがん)は必要不可欠です。しかし、舵を取り、実行していくべきリーダーや経営者がそういう態度や思考になってしまってはいけない。ここは大いに考えるべき問題といえるでしょう。
■本日開始の特集:経営者の発想に学ぶ
時に経営者は、一般のサラリーマンとは全く異なる独特な考え方を示すことがあります。テンミニッツTVの経営者関連の講義で見られるその発想や着眼点、胆力や先見性などから、経営者の発想の本質に迫り、生き方のヒントを探ってみましょう。
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=174&referer=push_mm_feat
・楠木建:リーダーが持つべきセンスとは何か
・田村潤:どんどん知恵が出て、百戦百勝になるとっておきの方法
・新浪剛史:リーダーに求められる「教養」と「率先垂範」
・江口克彦:松下幸之助の考え方には今と昔を貫くものがある
・小林喜光:ゲームチェンジする時代、所与の条件下で変化を起こす
・三枝匡:V字回復のためには社員に「個人の痛み」を迫る覚悟を持て
・岡島礼奈:人工流れ星の実現を目指す宇宙ベンチャー起業への経緯
■講座のみどころ:リーダーの「あるべき姿」と「ダメな思考法」(楠木建先生)
本日は特集のなかから、楠木建先生(一橋大学大学院経営管理研究科国際企業戦略専攻教授)の講義を紹介いたします。まさに、リーダーとして持つべき思考法を、非常に興味深く論じていただいた内容です。
楠木先生は、この講義の冒頭で、《リーダーは、夏の暑いときに「いや、今、寒くないな」と考えられて、逆に、みんなが「寒い、寒い」といっているときに、「いや、少なくとも暑くないじゃないか」といえる人間だ》と喝破します。はたして、その「心」とは?
◆楠木建:「逆・タイムマシン経営論」で磨く経営センス(全2話)
(2)「日本沈没」と言いたい人々
リーダーが持つべきセンスとは何か
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3743&referer=push_mm_rcm1
楠木先生が一例として挙げるのが「人口問題」です。
かつて、受験戦争、交通戦争、住宅難、公害などが噴出していた日本では、「こんな狭い国に、こんなに人がいて、どうするのだ」という問題意識で、人口が増えてしまうことが諸悪の根源のように考えられていました。
しかし今では、人口減こそが諸悪の根源のように思われています。
これは「同時代性の罠だ」と、楠木先生はおっしゃいます。社会全体が、「これこそが問題だ」と口を揃えるなかでは、それこそが問題の核心だと思ってしまう。しかし、リーダーたる者、みんなが「寒い」といっているときには、「いや、少なくとも暑くないじゃないか」というべきなのだ。それが楠木先生の視点なのです。
さらに楠木先生は、「1人当たりのGDP」の例も出します。
1人当たりのGDPで世界の上位に行くのはなかなか大変なことですが、日本は1980年代末には、1人当たりGDPで世界第2位だったこともありました。
では、その頃の日本では、楽観論ばかりで満ちあふれていたのか。そうではなかった、と楠木先生はおっしゃいます。その頃の経済雑誌の記事を読んでも、日本では「日本は危機だ」「日本はダメだ」といいたくてしかたがない人たちばかりだったというのです。
なぜ、「1人当たりのGDP」が世界第2位でも、悲観論が噴出するのか。その動機について、楠木先生は興味深い視点を提示されます。
「会社が悪い」とか「経営が悪い」というと自責の問題になってしまう。しかし、「日本はダメだ」といっておけば、自分の責任にはならない。だからこそ「究極の他責」として、犯人を「日本」にしてしまい、自分の責任を棚に上げる……。
これは、まことに耳の痛いことであり、また、まことに恐ろしい話だといえるでしょう。
「ハッピーエンドから説き起こしていったストーリーが、今の日本では強く求められている」。楠木先生は、そうおっしゃいます。
たしかに、現在とは比べものにならないほど条件が悪かった明治期や、第2次世界大戦の敗戦後にあっても、当時のリーダーたちはハッピーエンドの夢を語り、人々を叱咤激励して、日本を高みへと導いていきました。しかし、現代の日本人は、「究極の他責」に逃げ込み、できない言い訳ばかりを重ねて、どんどん日本を弱くしてしまっているのかもしれません。
まさに大いに考えるべき問題点でしょう。そのほかにも楠木先生は、「リーダーは無理のない未来を描け」「リーダーは形容詞、副詞を使うな」「それも一理あるというな」など、興味深い視点を提起くださいます。
とかく、浮ついた議論や責任転嫁の議論に陥りがちな現代日本人にとって、必見の講義です。
(※アドレス再掲)
◆本日開始の特集:経営者の発想に学ぶ
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=174&referer=push_mm_feat
◆楠木建:「逆・タイムマシン経営論」で磨く経営センス(2)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3743&referer=push_mm_rcm2
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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回は「地球史と人類の進化」についての問題です。ではレッツビギン。
完新世が始まった1万1700年前から現在までの間に、人間があまりにいろいろやりすぎている時代を意味する「 」という区分をつくりましょう、という提案がなされたわけです。
さて「 」には何が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4057&referer=push_mm_quiz
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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。
さて本日は、今月(7月)のプレゼント本についてお伝えいたします。
今月は斎藤成也先生(国立遺伝学研究所特任教授)の著書(以下)を抽選で10名様にプレゼントいたします。
<今月のプレゼント本>
『人類はできそこないである 失敗の進化史』(SB新書)
◆内容紹介
人類は優れた高等生物かと思いきや…実際は700 万年もの長きにわたる歴史の中で、他の生物が有している機能を失ったりしながら現在の姿になった側面もある。
日本の人類進化学、ゲノム進化学の権威が教える、「出来そこない」の人類進化史!
7月1日より応募開始となっております。ご希望の方でご応募前という方では以下より早めにご応募ください(応募締切は7月20日までです)。
https://10mtv.jp/?referer=push_mm_new_function
※応募方法は、トップページ内に表示されている「今月のプレゼント」からご確認ください(応募前の方のみ表示されます)。
また以下、斎藤先生のシリーズ講義もぜひご視聴ください。
◆斎藤成也:核DNAからさぐる日本のルーツ(全11話)
(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2553&referer=push_mm_edt
人気の講義ランキングTOP10
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