編集長が語る!講義の見どころ
自分の「心や感情」の不思議に迫る/特集&長谷川眞理子先生【テンミニッツTV】

2022/08/26

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

自分の感情がコントロールできない。そんなことは誰にもあるはずです。そもそも、なぜヒトには感情があるのでしょうか? また、なぜ感情のまま行動してしまうことがあるのでしょうか? そして、そもそも「感情や心」というのは、どのようなものなのでしょうか。

本日の開始の本特集では、「心や感情」の不思議について、その奥底を様々な角度から探り、感情をコントロールするコツに迫っていきます。

■本日開始の特集:自分の「感情」の不思議に迫る

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=179&referer=push_mm_feat

長谷川眞理子:「心と感情」とは何か、行動生態学から考える大事な問題

川合伸幸:高齢者は本当にキレやすいのか――「怒り」の実態に迫る

森口佑介:教育現場で注目を集める「自分をコントロールする力」とは

津崎良典:恐怖をなくす方法と感情のコントロール…デカルトの考え方

高橋孝雄:過度の「負」のストレスは遺伝子に悪影響を及ぼす

西野精治:身も心も破滅する「睡眠負債」の実態


■講座のみどころ:「心と感情」とは何か?動物と人間の違いは?(長谷川眞理子先生)

本日は、特集のなかから長谷川眞理子先生(総合研究大学院大学長)の講座を紹介いたします。この講座の問題意識を、長谷川先生は第1話の冒頭で、次のようにおっしゃいます。

《心や感情がどういうものかというのは、皆さん、すぐに想像はつくでしょうし、すぐ思い浮かぶものもあると思いますが、実は結構難しいことです。何がどうしているのか、また脳の働きがどうなっているのかということは、とても複雑な問題だからです》

まさに、長谷川先生のおっしゃるとおりです。「心や感情」の正体とは、いったい何なのでしょうか?

◆長谷川眞理子:心と感情の進化(全3話)
(1)そもそも「心と感情」とは何なのか
「心と感情」とは何か、行動生態学から考える大事な問題
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4558&referer=push_mm_rcm1

第1話の後半で、長谷川先生は「メキシコユキヒメドリ」という鳥の、興味深い実験をご紹介くださいます。

かごの中に2つの餌場をつくります。1つは、つつけば必ず2個の餌が出るもの。もう1つはつつくと全く出ないかもしれないし、4個出るかもしれないというものです。さて、メキシコユキヒメドリはどちらを選ぶのでしょうか。

普通のときは、2個出る餌場を選ぶといいます。しかし、鳥を飢えさせて、寒くして、もう生き延びるのが大変だという環境に置くと、2個出る餌場をやめて、0または4個の餌場のほうに切り替えるのです。

なぜ、このような行動をするかといえば、動物は、自分自身の「体の中」の情報(飢えているかどうか、健康かどうかなど)と、周り(外)の情報、また、昔の記憶としての情報を全部総合して、生き延びるうえで適切なことを意思決定しているからだと、長谷川先生はおっしゃいます。

そのような情報を集め、考え、判断を下すアルゴリズムが神経系(脳)の中にある。そのようなアルゴリズムを、私たちは普通「心や感情」と呼んでいるのではないか。

このような行動選択は、脳のないミミズのような動物でもやっています。

では、動物にも「自意識」はあるのでしょうか。実は自意識が人間以外の動物にもあるのかどうか、自意識があることをどうやって証明するのかは、行動学でも難しい問題だといいます。

しかし、人間は明確に「自意識」を持っています。自意識があるので、いろいろな状況を全体的に俯瞰することもできるし、それを見ている自分も見ることができる。そして、自分がこういうことをしたら他者がどう思うかということも考えられます。

ここで、長谷川先生が注目するのは、認知科学などが発達するずっと前から、日本では「知情意」といわれてきたことです。「知」は認知・認識・理性。「情」は好き・嫌いや快・不快などの感情。「意」は意志であり、倫理道徳的な判断も含めて、動機づけによってこれをするのだと決める意志です。

この3つを明確に分けて、3つとも重要だと考えてきたことは素晴らしいことだったと長谷川先生は語ります。

ここで長谷川先生は、また興味深いエピソードをご紹介くださいます。フィニアス・ゲイジという人の脳に、不幸にも事故で鉄の棒が貫通してしまった事例です。

幸いに一命は取り留めました。また事故後、どんなことでもまともに理解はでき、言葉も話せて、記憶も失われていませんでした。けれども、動機づけや感情の部分が鉄棒によって切断されてしまいました。そのため、「やらなければいけない」「今、ここではこれは不適切だ」といった判断ができなくなってしまい、結果的に、まともな生活が送れなくなってしまったのだといいます。

なぜ、こうなってしまったのか。それはぜひ講座の第2話をご覧ください。

また、情動や動機付けを制御する脳の前頭葉は、人間成長のなかでいちばん成熟が遅く、20代後半から35歳くらいまでのあいだに成熟することが研究でわかっているといいます。

脳科学的にいえば、本当の大人は30歳くらいからだと長谷川先生はおっしゃるのですが……。ここもまことに興味深いご指摘です。

さて、それでは「自己制御」について、どのように考えるべきか。また、「抽象化」や「一般化」「概念形成」などといった人間に備わっている高度な認知能力についてはどのように考えるか。そのことについて長谷川先生は、本講座の第3話でお話しくださいます。

人間が高度な認知能力を獲得したのは、二足歩行をするようになって脳がとても大きくなったからです。しかし、そのように高度な認知能力があるにせよ「ガッツ」や「これだけは」という「情動」の高まりがなければ、挑戦もできない。そういうものをどう制御するかが、心と感情を考えるうえで非常に大事になる。

そのように指摘されたうえで、長谷川先生は、「AIが心を持つようになったらどうなるのか」「オンライン会議で『理解』することはできても『納得』することができるのか」などの問題提起されるのです。

心と感情について、このようにご分析いただくと、いまの自分のこの感情がどのようなものなのかを、客観的に見つめる大きな一助になります。上記にピックアップした以外にも、本当にたくさんの情報をお話しいただいた講座です。ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆特集:自分の「感情」の不思議に迫る
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=179&referer=push_mm_feat

◆長谷川眞理子:心と感情の進化(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4558&referer=push_mm_rcm2


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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回は「通貨の歴史」についての問題です。ではレッツビギン。

紀元前7世紀ほどに、リディア(今でいうトルコ)で、(    )金貨というものが発行されました。大英博物館に行くと、通貨コーナーがあり、そこにこの(   )金貨もちゃんと置いてあるのですが、これが世界最古の硬貨といわれていて、このあたりから通貨の歴史が始まるということになります。

さて(    )には同じ言葉が入ります。何が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2439&referer=push_mm_quiz


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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて、今週申し込み受付が始まった9月6日開催の小原雅博先生先生のウェビナー《2024年危機…米中関係の行方》ですが、受付開始直後から続々とお申し込みが増えております。
申込期間は9月4日(日)までなので、まだまだ受付中ですが、ご希望の方はお早めに以下よりお申し込みください。
https://10mtv.jp/seminar/202209/index.php?referer=push_mm_new_function

なお、今回のウェビナーでも注目ポイントとなる「台湾問題」に関しては、以下の特集も大変参考になると思います。ぜひご視聴ください。

◆特集:「台湾危機」の本質を考える
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=178&referer=push_mm_edt