編集長が語る!講義の見どころ
「免疫学」がわかればコロナ対策がわかる!(テンミニッツTVメルマガ)
2020/07/08
皆さまこんにちは。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
また、新型コロナウイルスの感染者が増えはじめています。このようなときこそ、これまで、この問題への対処法としてマスコミが流布してきた議論が正しかったのかどうか、検証する必要があるのではないでしょうか。
たとえば、「PCR検査をどうすべきか」「免疫パスポートという考え方もあるのではないか」「集団免疫獲得に向けてどうするか」などさまざまな議論が行われました。本当のところ、どうなのか。
今日は、免疫学がご専門の宮坂昌之先生(大阪大学免疫学フロンティア研究センター・招へい教授/大阪大学名誉教授)と曽根泰教先生(慶應義塾大学名誉教授)にご対談いただいた講義を紹介します。宮坂先生のお話をうかがうと、これまでの議論の根底が覆るようにさえ思えてきます。まさに今こそ知っておくべき珠玉の講義です。
◆宮坂昌之×曽根泰教:免疫の仕組みからポストコロナ社会を考える(全11話)
(1)自然免疫と獲得免疫
まず「病原体を防ぐからだのメカニズム」を知ることが重要
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3461&referer=push_mm_rcm1
講義の最初は、まず免疫についての基礎的なお話です。ここで重要なのは、免疫といっても、病気罹患やワクチン接種などによって得られる「獲得免疫」だけでなく、お城の城門や城壁のような「自然免疫」があることでしょう。
この自然免疫は、ウイルスの感染が起こったり、ワクチンを接種したりすると活性化されるといいます。コロナ禍のなか、「BCG接種が効果的なのでは?」という指摘もなされましたが、これはBCG接種によって自然免疫が活性化されたことが効いている可能性があると、宮坂先生は指摘されます。この場合、BCG接種だけでなく、たとえば普通のインフルエンザワクチン接種なども、自然免疫を活性化させる可能性が高まるということです。
次に重要なご指摘は、「集団免疫の形成には社会の構成者の6割の感染が必要なのか」という議論です。この6割という数字は、「基本再生産数(R0)」に基づいて計算されます。基本再生算数は、「1人の感染者から何人に感染が拡大するか」という数字です。新型コロナウイルスの場合は、「2.5」すなわち、1人が感染すると2.5人に感染が広がる可能性があるという数字が、よく取り沙汰されました。ここから計算して、社会全体の6割が感染したら集団免疫が獲得されて安全になるといわれたのです。
しかし、この考え方は古いと宮坂先生はおっしゃり、古い免疫学と新しい免疫学の考え方の違いを3点ご紹介くださいます。1つ目は、「個体の抵抗性は自然免疫と獲得免疫の総和と考えていること」。2つ目は、新しい考え方では「社会を形成する個体は均一だとは考えないこと」。3つ目は「免疫の持続性についての考え方」です。
このうち、とりわけ衝撃的なのは3つ目の「免疫の持続性」です。おたふくかぜや、はしかのように、免疫が10年から20年持続するものもありますが、新型コロナウイルスは、おそらく持続期間が極めて短く、長くても1年はもたないというのです。宮坂先生がおっしゃるとおり、これではそもそも社会の6割が集団免疫を達成するなどということはありえないことになります。また、免疫パスポートなどという仕組みも、まったく成り立たないことがわかります。
さらにいえば、「新型コロナウイルスは、基本再生産数が2.5」というのも、決して固定的な考え方ではないということも重要なご指摘でしょう。キスやハグ、あるいは土足での屋内生活などといった生活習慣の違いや、マスクや手洗いなどの衛生習慣の違い、さらにはワクチン接種による自然免疫力の違いによって、基本再生算数は大きく変化し、たとえば2020年6月初旬の大阪では「0.4~0.5」以下になっているのではないか、といいます。この値の変動を前提にすれば、当然、採られるべき対策も変わってくるでしょう。
さらに新型コロナウイルスの場合は、感染者のうちの8割は他者には感染させず、2割の「スーパースプレッダー」といわれる人だけが、強力に他者に感染させるといわれています。また、感染が起こりやすい状況もわかりはじめています。これを前提としたとき、では、どのような対策が求められるのか――。そのことについては、ぜひ講義の終盤をご覧ください。
本講義シリーズでは、宮坂先生はウイルス感染の仕組みからワクチンのあり方などについても解説くださっています。正しい知に基づいて考えていくことがいかに重要かを思い知らされます。目からうろこが落ちる必見の講義です。
(※アドレス再掲)
◆宮坂昌之×曽根泰教:免疫の仕組みからポストコロナ社会を考える(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3461&referer=push_mm_rcm2
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「ビジネス・経営」ジャンルのクイズです。
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https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1798&referer=push_mm_quiz
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編集後記
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編集部の加藤です。
現在、月間の視聴ランキング1位は童門冬二先生の「『50歳からの勉強法』を学ぶ」シリーズですが、実はシリーズのなかで取り上げられなかった貴重な話がまだまだたくさんあります。そこでこの場を借りて少しご紹介したいと思います。
「50歳からの勉強法では、つけ加えるよりもそぎ落とすほうに重点を置くべき。」
第3話に「50歳までは仕込みの時期である」という話が出てきました。上の言葉は、50歳からはいわば仕込んだものをどうそぎ落としていくか、それを考えることの重要性を説いているのではないでしょうか。
もう一つご紹介します。
「人生で大切なことはすべて映画から学んだ。」
僭越ながらこれをテンミニッツTVに置き換えると、「教養を身に付ける上で大切なことはすべてテンミニッツTVから学んだ。」と、多くの方からいわれるように頑張っていきたいです。
<ご紹介した童門冬二先生の著書『50歳からの勉強法』はこちら>
https://www.amazon.co.jp/dp/4763133365/
<童門冬二先生の「『50歳からの勉強法』を学ぶ」シリーズはこちらからご視聴いただけます>
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3383&referer=push_mm_edt
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