編集長が語る!講義の見どころ
本物の教養論~今こそ学ぶべき「知」の意味/特集【テンミニッツTV】

2022/10/21

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です

10月4日に配信したこのメールマガジンで、小宮山宏先生と長谷川眞理子先生の《現代人に必要な「教養」とは?》講座を紹介いたしましたが、大人気になっています。

テンミニッツTVは「教養動画メディア」です。では、学ぶべき「教養」とは何か。これは、とても重要な問いです。

上記の講座で、小宮山先生は、こうおっしゃっています。

《私は東京大学の頃にずっと3つのキーワードを言い続けてきました。それは「本質を捉える知」「他者を感じる力」、それから「先頭に立つ勇気」です。

例えば、カントは「知・情・意」と言いましたし、それから「智・仁・勇」というものもある。だいたい知的なもの、情的なもの、意志や行動のような能動的なものの3つがあると思っています。

ただ、今の時代性を考える必要がある。知識や情は当然重要だけれども、行動するとか動き出すなどの能動的な部分がどんどん重みを増してきている。

ですから、少しそちらのほうに比重が移ってきていると、私は思っています。本質的には「よりよく生きるための知の力」というのが、テンミニッツTVでだいぶ議論してきた定義です》

【◆小宮山宏×長谷川眞理子:現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か】
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4649&referer=push_mm_rcm1

教養とは、「よりよく生きるためのもの」「あるべき行動をするためのもの」。そのように考えると、「教養」についての見方が一気に広がっていきます。

本日は、テンミニッツTVの講座のなかから、「教養とは何か」を論じた珠玉のシリーズをピックアップした特集を紹介します。


■本日開始の特集:本物の教養論~今こそ学ぶべき「知」の意味

教養とは、けっしていろいろなことを知っているだけではない……多くの人たちがそう痛感しているのではないでしょうか。では、教養とはいったい何なのか。どうすれば身につけることができるのか。本物の教養論をここに一挙紹介します。

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=112&referer=push_mm_feat

・小宮山宏×長谷川眞理子:東大生に伝えた、教養にとって大事な「3つのキーワード」

・橋爪大三郎:『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係

・津崎良典×五十嵐沙千子:「哲学カフェ」再現講義第二弾「教養とは何か」を語り尽くす

・出口治明:10分でわかる「古典と歴史を学ぶ意義」

・納富信留:古典を学び、教養ある人間を目指すことがヨーロッパの理想

・長谷川眞理子:一市民として「自分で考える人間」を育てる基礎が教養

・島田晴雄:真のリベラルアーツは日本の大学では学べない

・柳川範之:正解なき時代に重要な「問いを考えて答えを見つける」発想


■講座のみどころ:各先生の「至言」をピックアップ

本日は、この特集のなかで、各先生がどのようなことをおっしゃっているか。上記で小宮山先生の発言を引用しましたが、以下では他の先生方の発言をピックアップして紹介します。気になった講義、胸に響いた言葉からご覧いただくのも良いのではないでしょうか。

◆長谷川眞理子:「今、ここ」からの飛躍のための教養
(2)日本の教養離れと知の構造化
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4481&referer=push_mm_rcm2

貯め込んできたいろいろな知識や興味、人との会話で気づかされたことなどを、ただ袋にどんどこどんどこ入れていくだけではなく、構造化しないといけません。それには、軸が30個ぐらいある立方体のようなものをいつも念頭に置いて、この知識はこの部分、こちらはこの部分、これとこれはこういう関係にあるというようなことが、自分の頭の中で想定できていけばいいわけです。

もちろん全部の箱が埋まるようなことは決してありません。しかし、どんなことを振られたり聞かれたりしても、知識の立方体の中のこの辺のことかな、と当たりがつく。そうすると、自分はそこがすっぽり抜けているとしても、こことここは知っているから、次はこちらの方向に話がいくかもしれないと予想がつく。それにより、意見が言えたり、疑問を呈したりできることが、(教養の)真髄かと感じます。


◆橋爪大三郎:今こそ問うべき「人間にとっての教養」
(2)教養の定義と準備の必要性
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4002&referer=push_mm_rcm3

自分が生きていくためには、私自身が何を考え、どのように行動するかが重要です。そして、それが正しいかどうかだけが、とりあえず問題になります。だけど、自分の考えと自分の努力で、全ての問題が解決するでしょうか。

しょっちゅう起こる事象なのに、それを知らずに、最善でない決定や最善でない行動をしてしまう。要するに、ばかばかしいことをしてしまうことはありがちです。

では、どうしたら良いのかというと、知恵が必要なのです。こうしたときに、前の人はどのようにしてそれを乗り越え、解決したのかを分かっていると、参考になりますよね。だから、それを知るには十分に意味があります。

滅多に起こらない大事件は、起こらないかもしれませんし、起こるかもしれません。起こらなかったとしても、そのために備え、安心と覚悟を持って生きているのは、立派なことです。このことは、今この場所に生きているという時間的、空間的な自分の制約を超えているということなのです。

自分の制約を超えることができれば、その人の誇りになる。確信を持って生きているという状態になります。これが教養です。


◆納富信留:西洋文明の起源から見るグローバル化
(6)「世界哲学」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2810&referer=push_mm_rcm4

現代の西洋文明は、いろいろな点で行き詰ってしまっています。科学技術の制御問題や環境問題、人間の個人主義の問題など、いろいろありますが、そういった問題に対して、もしかしたらギリシア・ローマが、また新たなヒントをくれるかもしれません。そのために、もう一度そこに戻って考えるのが一つ目のやり方です。

もう一つ、日本、東アジアという文化・環境に生まれ育っている私たちには、ギリシアやローマとは違うところから、むしろ対比的に自分たちの在り方を考えていく方法があり得ます。中国やインド、日本には長く共有してきた古典文化があり、私たちは小さい時からそれに慣れ親しんできました。こういったものを見ることによって、ギリシア・ローマを相対化し、私たち自身の視点も相対化することができます。それにより、何が今本当に求められているのか、何が今重要なのかを総合的に考えることができるでしょう。

つまり、ギリシア・ローマに対する「他者」を想定し、二つの観点から見ていくことで、現代の状況を相対化していく。相対化というのは、固定化しないで別の角度から見ていくことですが、そうすることによって、より生き生きした考え方や生き方を模索するヒントにしようという考え方です。


◆出口治明:『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方
(7)「おいしい人生」のために
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3526&referer=push_mm_rcm5

「おいしいご飯とまずいご飯、どちらが食べたいですか」と訊くと、みんな「おいしいご飯」に手を挙げます。

次に、おいしいご飯を因数分解すると、どうなるかを問う。いろいろな材料を集めて、上手にクッキングすれば、おいしいご飯になります。材料だけでは食べられません。

だから、おいしいご飯は、(いろいろな材料)×(クッキング能力)です。

では、「おいしい人生とまずい人生、どちらを送りたいか」と訊いたら、学生も含めて若い人はみんな「おいしい人生」に手を挙げます。「じゃあ、因数分解してごらん」という。

いろいろな食材を集めることが知識です。でも、知っているだけで使わないと、食べられない。椎茸も、集めるだけでは食べられません。クッキング能力に相当するのが、考える力です。「問いを立てる力」、「探究力」といってもいいと思いますが、いろいろな材料を集めて、自分で考えて初めて、使える=食べられるようになって、おいしい人生が送れるのだと思います。


◆津崎良典:「教養とは何か」を考えてみよう(8)カンニング事変
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3993&referer=push_mm_rcm6

ちょっと冷静になって考えてみると、優越感も劣等感も抱かない人生はあり得ないでしょう?

それをうまくコントロールして、そこから自分をどうやって、高めていくか、広げていくか、改めていくか。どういう動詞を使おうが自由だと思うけれども、そのようにしていく回復力というのも、実は教養なんじゃないかと思う。


◆島田晴雄:「島田村塾」リベラルアーツ特講
(1)生き抜くためのリベラルアーツ
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=496&referer=push_mm_rcm7

日本をめぐる環境が実は大変難しくなってきていて、日本に視野を限られていては全く仕事になりません。大きく世界に軸足を置いて仕事をしないとやっていけない時代が必ず来ます。

そのときに、そういう仕事を十分に果たせるだけの知的な力というか、背景、バックグラウンド、あるいは考え方を持っていないと、世界の優れた人たちと対等に、お互いに尊敬して信頼し合って仕事をしていくことが、なかなかできないと思うのです。そういう意味で、一口で言えば、次の時代に日本を担って世界で活躍していく、生きていくための、そのためのリベラルアーツだということであって、単なる教養のためのリベラルアーツではありません。


◆柳川範之:いま求められる「教養」とは
(1)武器としての教養
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2920&referer=push_mm_rcm8

特に今は、いろんな意味で環境変化が激しい時代だと思っています。技術革新もそうですし、例えば世界の政治的状況を見ても、10年前とか15年前とは全く違うものが現れているし、これからも現れてくるだろう。そうすると、今までの発想の延長線上に解決策があるということではなくて、新しい世界には新しい解決策や発想が必要です。「そういうものをどうやって養っていくのか」、ということが求められている。


……少し長い引用になりましたが、何らかのご参考になれば幸いです。各先生方はもちろん上記の言葉ばかりでなく、「教養」について考えるヒントを次々とご提示くださっています。ぜひ各講座をご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆特集:本物の教養論~今こそ学ぶべき「知」の意味
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=112&referer=push_mm_feat


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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回は「元号の始まり」についての問題です。ではレッツビギン。

元号の始まりは、もともと中国の前漢の時代に元号がつくられます。武帝という前漢の皇帝が「建元」を使ったのが最初です。
日本での元号の始まりは(    )で、西暦645年に制定されます。つまり長い歴史を持つ中国の元号が日本に取り入れられたということになります。
原理的にいえば、元号は「皇帝が、領地や人民だけではなく、時間をも支配する」という観念の現れと見ることができます。

さて(    )には何が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2404&referer=push_mm_quiz


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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて、昨日(10月20日)より島田晴雄先生(慶應義塾大学名誉教授)の新シリーズ講義〈日本を復活させる国家戦略〉の配信が始まりました。

◆島田晴雄:日本を復活させる国家戦略(全4話予定)
(1)戦後の復興戦略と日本経済の凋落
「一人負け」状態の日本経済、その回復が政治指導者の使命
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4657&referer=push_mm_edt

この講義は、岸田内閣に物申す的内容だった前回のシリーズ講義〈岸田内閣「新しい資本主義」を徹底検証〉の続編ともいえるもので、島田先生ならではの分析と提言が聴ける貴重な講義です。
毎週木曜日配信で全4話予定です。ぜび続けてご視聴ください。