編集長が語る!講義の見どころ
カーボンニュートラル後進国・日本の活路は?/夫馬賢治先生【テンミニッツTV】

2022/11/01

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です

「日本」について日本人が抱いているイメージが、「世界の現実」とズレることが散見されるようになってきました。

「日本は経済大国」というイメージもそうです。すでに日本の賃金水準は、様々な換算方法によって多少の差はあれど、韓国に抜かれている、あるいは肉薄されている状況です。1人当たりGDPも2020年で世界第30位前後です。

環境対策についてもそうです。さまざまな公害対策や省エネ技術、さらにハイブリッド車などのイメージから、「日本は環境先進国」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、それは「世界の現実」からは、あまりにズレた認識です。

本日は、そのことをしみじみと思い知らせてくれるとともに、その一方で、打開の可能性も教えてくださる講義を紹介いたします。

◆夫馬賢治:武器としての「カーボンニュートラル経営」(全4話)
(1)カーボンニュートラルと日本の実状
10分でわかる「カーボンニュートラル経営」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4658&referer=push_mm_rcm1

夫馬先生は、東京大学教養学部を卒業後、ハーバード大学大学院リベラルアーツ(サステナビリティ専攻)修士などで学ばれ、現在は、環境やサステナビリティ(持続可能性)、さらにESG投資(環境〈Environment〉・社会〈Social〉・企業統治〈Governance〉に配慮している企業を重視する投資)の専門家として広くご活躍です。

ひと昔前の「環境専門家」のなかには、「環境にやさしいなら、社会や経済が悪化してもいい。むしろ、そのほうが好ましい」と考えていそうな人も散見されたように思います。しかし、夫馬先生のスタンスは、そのようなあり方とは、まったく異なります。

非常に大局的な視点から、とても具体的に「あるべき姿」「いまより良い未来」を教えてくださるのです。

この講座第1話の冒頭で、夫馬先生は日本の現状を、次のように喝破します。

《少なくとも、まずG7といわれる先進国の中では、産業転換が一番遅れていると思いますし、最近では、G20まで広げても、新興国にどんどん抜かれてきているというような状況ですので、産業状況としてはかなり深刻さを増してきていると思います》

日本はいまだに、「どれだけ節約できるか、いろいろな機会のエネルギー高率をどれだけ上げられるか」という発想に留まっている。しかし、いまや世界では数パーセント削減ではなく、「ゼロ」にするという発想になっている。そうなると積み上げ型の努力ではなく、抜本的にあらゆるものを変えていかないといけない。その点で、日本は大きく停滞してしまっている。そう夫馬先生はいうのです。

カーボンニュートラルの世界における「競走のゴール」について、夫馬先生はこう指摘します。

《その競い方はもちろん新技術を開発するということです。新製品、つまり抜本的に違う製品を作っていくということもありますが、そのコストを“下げ切る”ところまでが競争のゴールなのです》

これはたとえば、「オーガニックで、いいものだけど、値段が高い」という価値観ではなくなっていくということです。しかも、けっして一部の大企業だけの問題ではない。もし、ついていけなければ、このままでは5年後、10年後には悲劇的な状況が予測されてしまう……。

そして、その実現のために必要なのが「カーボンプライシング」だといいますが、そのことについては、ぜひ講座本編をご覧ください。

第2話からは、このような状況を打開するヒントとして、「具体的な成功例」を見ていきます。夫馬先生の、今回の講座における問題意識は次のようなものです。

《中堅・中小企業から、「どこから始めていいのかがなかなか分からない」とか、「本当にやっていけるかどうか分からない」という声をたくさん聞きましたので、先んじて動いている企業を中心に具体的に紹介したい》

第2話は、陶磁器や住設などを手掛けるニッコー(石川県)です。この会社では、廃棄される陶磁器を「肥料」として活用していく道を実現しようとしています。このビジョン自体が驚きですが、いかに現場の知恵をすくいあげ、また、地元の力を結集して課題に挑んでいったのかは必見です。

第3話は、コープさっぽろ(北海道)。ここでは、経営難から再建するタイミングで「食材に特化」し、徹底的に「地産地消」にこだわって、しかも生産者から流通経路までを含め、すべての商品をカーボンニュートラルにしようとしています。さらに再生可能エネルギーにも取り組んでいるのですが、そこに立ちはだかる「日本の制度的な壁」とは?

第4話で紹介するのは、今治タオルメーカーのIKEUCHI ORGANIC(イケウチオーガニック)です。この会社では、オーガニックを活用して自社ブランド化を進めていきました。しかし、インターネットで売っても数が出ず、直営店を作っても固定費がどんどんかかってしまう……。ここを突破すべくイケウチオーガニックが追求してきたのが、「ファン・エコノミー」であり、「サーキュラーエコノミー」だったのですが、その具体策とは?

現時点の課題と、それを突破するためのヒントを、幅広く論じていただいた講座です。社会や経済への見方、考え方を一変させる力を持つ内容です。ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆夫馬賢治:武器としての「カーボンニュートラル経営」(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4658&referer=push_mm_rcm2


----------------------------------------
☆今週のひと言メッセージ
----------------------------------------

《家康は文化の基礎というものをきちっとつくっていった》
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3838&referer=push_mm_hitokoto

今も残る「駿河本」は徳川家康が文化の維持に貢献した証
山内昌之(東京大学名誉教授)
神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)

家康には、信長あるいは秀吉が持っているような派手さがない。つまり家康の場合には、文化というものがあたかもないように感じられて、非常に実務的な政治家だという印象が強い。けれども、決してそんなことはない。これもまた非常に偉いことですが、家康は文化の基礎というものをきちっとつくっていったのです。
その基礎として、彼は苦しい幼年・少年時代に太原雪斎あたりからの薫陶を受けているということも大きいですね。


----------------------------------------
今週の人気講義
----------------------------------------

なぜわれわれは生涯をかけて学ぶ必要があるのか
小宮山宏(東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長)
長谷川眞理子(総合研究大学院大学長)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4653&referer=push_mm_rank

「一人負け」状態の日本経済、その回復が政治指導者の使命
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4657&referer=push_mm_rank

唐船建造は日宋貿易のため?…増大した源実朝の将軍権力
坂井孝一(創価大学文学部教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4635&referer=push_mm_rank

「サラダ記念日」誕生秘話でわかる “じわじわ”のホント
鈴木宏昭(青山学院大学 教育人間科学部教育学科 教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4665&referer=push_mm_rank

通勤は本当に必要か、メタバースが創造する新都市スタイル
廣瀬通孝(東京大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4646&referer=push_mm_rank


----------------------------------------
編集後記
----------------------------------------

皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて今年も残すところあと二カ月です。実は来月(12月)に年間ランキングの特集を予定しているのですが、ここで今年1月から10月までによく視聴されたシリーズ講義を以下、紹介いたします。

◆山内昌之:ロシアのウクライナ侵攻と中国、イラン(全5話)
(1)侵攻の背景
なぜロシアはウクライナに侵攻したか、中国の深謀遠慮とは?
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4393&referer=push_mm_edt

今年2月24日、ロシア軍はウクライナへの軍事侵攻を開始したのですが、その約2週間後に配信された本講義。全5話同日配信だったこともあるのですが、まさに緊張した状況下での配信でしたので、非常に注目度が高かったことを覚えています。
8カ月ほどたった今なお続くこの問題について、改めて考えるうえでとても貴重な講義です。ぜひシリーズを通してご視聴ください。