編集長が語る!講義の見どころ
カーボンニュートラルが日本を変える/特集&夫馬賢治先生【テンミニッツTV】

2022/12/02

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。

ロシアによるウクライナ侵略により、エネルギー事情が一変しましたが、カーボンニュートラルへの大きな潮流が変わることはないでしょう。

産業のあり方を激変させる大きな「ゲームチェンジ」を、飛躍のチャンスとして捉えて動いている国や企業も多いからです。ガソリン車からEV(電気自動車)への動きのなかで新興メーカーが大きく飛躍しようとしていることは、まさに象徴的です。


■本日開始の特集:カーボンニュートラルが日本を変える

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=133&referer=push_mm_feat

残念ながら現在、日本がこの潮流の先頭を走っているとは言い難い状況です。この動きの本質はどのようなものなのか。今後、どのような考え方が必須なのか。日本人が進むべき未来とは、いかなるものか。これは、これからの時代を見据えるうえで、知っておかねばならないことといえましょう。本日は、そのことを解き明かす特集を紹介いたします。

・夫馬賢治:なぜ「脱成長」は解決策にならないか…ESG投資の可能性

・夫馬賢治:10分でわかる「カーボンニュートラル経営」

・猪瀬直樹:カーボンニュートラル革命が今、ビジネス世界で起きている

・小宮山宏:10分でわかる「エネルギー問題」

・小宮山宏:10分でわかる「自然エネルギーの可能性」

・小林喜光×小宮山宏:鮮明になった「カーボンニュートラルな社会」実現の大変さ


■講座のみどころ:なぜESG投資なのか?…その現状と課題(夫馬賢治先生)

環境問題・地球温暖化委問題などを背景として、日本では、むしろ「脱成長」を説く本がベストセラーになったりしています。しかしこれは、あたかも産業革命の折に、機械を打ち壊す運動を起こした「ラッダイト運動」のようなものかもしれません。インパクトはあったとしても、社会を導く動きになれるかどうかは、大いに疑問です。

そこで注目されるのが「ESG投資」のような考え方です。

「ESG投資」という言葉を耳にしたことがある方も多いと思います。「ESG」は、それぞれ「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」の頭文字を取ったものです。

とはいえ、「そもそもESG投資とは何か?」「ESG投資は、本当に効果的なのか?」「やっぱり脱成長こそが答えではないか?」などの疑問を持たれる方も数多くいらっしゃることでしょう。

本日は、そのような疑問に的確に答えていただいた、夫馬賢治先生(株式会社ニューラルCEO)の講座を紹介いたします。まことに合理的かつ説得力のあるご解説です。自分の理解を増すだけでなく、誰かに説明をしなければならないときにも、とても参考になると思います。

◆夫馬賢治:ESG投資の現状と課題(全3話)
(1)資本主義とサステナブルファイナンス
なぜ「脱成長」は解決策にならないか…ESG投資の可能性
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4674&referer=push_mm_rcm1

まず最初に夫馬先生が解説くださるのは、「『人新世』などといわれるように、人類が地球の環境に莫大な影響を与えてしまっている時代には、もはや資本主義ではダメであり、コミュニズム的な脱成長経済にしなければいけないのではないか」という問いへの答えです。

夫馬先生は次のようにおっしゃいます。

《産業革命から爆発的に温室効果ガスの排出が増えていきました。ですので、一つの考え方としては、「では元に戻ろう」という考え方があります。「脱成長」という一つのシンボリックな思想として語られたりします。

けれど、実際に気候変動に関して、多くの国際会議を主催している国連の国連環境計画や、開発途上国への支援をまとめている国連開発計画などでは、「脱成長が解決策になる」という話はないのです。

どうしてかというと、「元に戻る」ということが、そもそも人の意思というものからすると極めて非現実的であるということが一つです。もう一つは、人口増加です。

当然、人が増えれば、食べ物も、着るものも増やさなければいけませんし、家も確保しなくてはなりません。それぞれが気候変動の温室効果ガスをもたらしてきた原因になっています。

仮に私たちが、今の生活のスタイルを産業革命前に戻せたとしても、本当の意味で戻すためには、今いる人の数を半分にしないといけなくなってしまうのです。どうしますか。誰かを選んでお亡くなりになっていただくのですか。こんな非人道的な策を国連が提唱することはできないのですね》

まことに説得力のある答えといえましょう。「脱成長」の高唱がいかに非現実的かを、みごとに浮かび上がらせる議論です。

夫馬先生は、「脱成長」で「進歩を止める」のではなく、ESG投資によって加速型の資本主義の原理をうまく使い、「進歩の方向を変える」のだとおっしゃいます。資本主義には、イノベーションを生み出していく力がある。資本主義には「破壊する」面もあるけれども、それを伴わない形に変えて、創造を加速していけば、社会的な負の面を減らした状態で経済成長できるというのです。

次に解説くださるのは、すでに世界がそちらの方向に動きはじめていることです。それが、「経済成長」と「温室効果ガス」のデカップリング論。つまり、再生可能エネルギーへの方向を推し進め、カーボンニュートラル型の経済へと変えていくことです。

夫馬先生は、欧州などにおいて2010年代に再生可能エネルギーが大幅に普及したのも「資本主義の力」だといいます。日本の電力が規制と既存の構造でがんじがらめになっているあいだに、欧米などでは民間の営利企業によって大量投資と技術開発が行なわれて、コストが大幅に下がったのです。

さらに、必ずしも投資の世界は「1パーセントの金持ちがガッポリ稼いで、99パーセントは貧乏」という姿だけではない、とも指摘します。

ここで夫馬先生が指摘するのが、年金基金や保険会社などといった「機関投資家」の存在です。

年金基金や保険会社は、長期投資を行なっている。しかも、未来を破壊する投資をしてしまったら、「未来に備えるため」という自分たちの目的からも逸脱してしまう。だからこそ彼らは、未来に向けて望ましい方向をつくっていこうとするのだというのです。

現在の機関投資家の姿や動きをこの講義で学ぶと、これような考え方がいかに至当かも、よく見えてきます(ぜひ講座の第3話をご参照ください)。

経済のあり方が抜本的に大きく変動していることが、肌身で理解できる講座です。ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆特集:カーボンニュートラルが日本を変える
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=133&referer=push_mm_feat

◆夫馬賢治:ESG投資の現状と課題(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4674&referer=push_mm_rcm2


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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回は「ソクラテスの議論」についての問題です。ではレッツビギン。

ソクラテスは対話相手と議論しながら、そういう場面まで対話相手を追い込んでしまうのです。そこで対話相手が怒ることもあるわけですが、そうしたプロセスの場面が「ソクラテスの論駁」といわれている場面のことです。そこで、ソクラテスと対話相手は、「私たちは実は、正義(あるいは勇気)についてよく知らなかった」という確認をします。
これを(     )と、私は呼んでいます。日本では「無知の知」という言い方がよく使われますが、実はこれも誤りで、近代日本で作られてしまった、かなり誤解を含んだ言い方なので、使わない方がいいと思っています。

さて(    )には何が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2337&referer=push_mm_quiz


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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて昨日、12月プレゼント本を案内したメルマガでもお伝えしましたとおり、本日(12月2日)より小原雅博先生(東京大学名誉教授)の以下、新シリーズ講義の配信がスタートしました。

◆小原雅博:2024年危機~米中関係の行方(全5話予定)
(1)台湾統一をめぐる米中の攻防
どうなる台湾危機…中台の政治的節目と米中の軍事的緊張
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4717&referer=push_mm_edt

この講義は9月に開催されましたウェビナーを収録・編集したもので、まさに喫緊の問題である台湾危機をはじめとした米中関係について解説した貴重な講義です。毎週金曜日配信で、全5話の予定です。ぜひ続けてご視聴ください。