編集長が語る!講義の見どころ
春に人間力を高める!今年はこの講座(特集&頼住光子先生)【テンミニッツTV】

2023/03/31

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

今年の桜の開花は、気象観測史上でも有数の早さとなりました。各地で、諸々の花が咲き誇る春を迎えています。

さて、新年度となる春は、様々な変化が訪れる時期でもあります。

この時期に、自分の「人間力」を高める講座を学ぶことも、大きな意味があることではないか……ということで、毎年、ご紹介している「人間力」特集。

本日は、その「令和5年版」を紹介します。

テンミニッツTVには、様々な角度から人間力を高める内容の講座が盛りだくさん。今年版は、もちろん昨年とはラインアップを一新してお届けします。

■本日開始の特集:春に「人間力」を高める(令和5年版)

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=197&referer=push_mm_feat

・頼住光子:親鸞が「非僧非俗」と名乗った真意と妻・恵信尼の影響

・川上浩司:「不便益」とは何か――便利の弊害、不便の安心

・納富信留:理性・気概・欲望――魂の中に3つの階層とその真意

・小宮山宏/長谷川眞理子:学問は関係ない。教養がある人の「素敵な振る舞い」とは

・本村凌二:なぜ新渡戸稲造は『武士道』を英語で著したのか

・桑原晃弥:禅はジョブズの哲学にどのような影響を与えたのか

・田口佳史:10分でわかる「東洋思想の徳と道」

・為末大:為末メソッドに学ぶ「自分の人生を見つけるヒント」


様々な種類の講座をピックアップしましたので、ぜひ、気になった講義からご覧ください。思いもしなかった気づきを得られること、うけあいです。


■講座のみどころ: 親鸞の生き方と思想の真髄に迫る(頼住光子先生)

自分自身の「人間力」や「生き方」について考えるとき、日本人としては、ぜひとも仏教の叡智も参考にしたいものです。

しかし、何しろ仏教の言葉や用語は難しく、どうしても「とっつきにくく」感じてしまいます。

そこで本日は、名僧の生涯を概観し、さらに彼ら自身が書いた文章を熟読玩味(じゅくどくがんみ)していく、頼住光子先生(東京大学大学院人文社会系研究科・文学部倫理学研究室教授)の「【入門】日本仏教の名僧・名著」シリーズより、親鸞についての講義をピックアップいたします。

頼住先生は大乗仏教の深遠な哲学を、とてもわかりやすくご解説くださいます。

加えて、テンミニッツTVの良いところは、画面で文章を見ながら先生のお話を聞けるところです。最初は「素読」よろしく、原文はさらりと聞き流したとしても、「名僧のこころ」が間違いなく伝わってくること、うけあいです。

よく知られているように、親鸞(1173年~1263年)は浄土真宗の宗祖とされます。浄土真宗といえば「南無阿弥陀仏」の念仏ですが、親鸞は、その念仏について、哲学的な思索を深めました。まさに大乗仏教の核心に迫る議論が展開されます。

◆頼住光子:【入門】日本仏教の名僧・名著~親鸞編
(1)親鸞と法然の違い
親鸞が「非僧非俗」と名乗った真意と妻・恵信尼の影響
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4378&referer=push_mm_rcm1

まず頼住先生は、同じ浄土教の考えでも、源信→法然→親鸞とどのように変わっていったかを教えてくださいます。

源信は「観相念仏(念仏といっても「南無阿弥陀仏」と唱えるだけではなく、仏様の姿を思い浮かべるような修行も伴うもの)」を中心としていて、そこからさらに法然は「専修念仏(南無阿弥陀仏と唱えるだけでいい)」へと教えを突きつめましたが、親鸞はその法然の教えを理論化していきます。

法然は、実践的に教えていくことを重んじてあまり自分自身で文章を遺しませんでしたが、親鸞は『教行信証(顕浄土真実教行証文類)』など多くの書を著していったのです。

この3人の比較は、頼住先生の源信編、法然編も参照できますので、さらに理解を深めることができるでしょう。

◆【入門】日本仏教の名僧・名著~源信編(1)末法思想と浄土信仰
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3933&referer=push_mm_rcm3

◆【入門】日本仏教の名僧・名著~法然編(1)鎌倉仏教と専修念仏
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4066&referer=push_mm_rcm4

また親鸞の場合、僧侶でありながら恵信尼という女性と結婚をしたことを指摘されることも多いですが、その背景や意味についても頼住先生は教えてくださいます。親鸞が置かれた「非僧非俗」という地位によるものということですが、これについては講義本編をご覧ください。

この「親鸞編」の白眉は、何といっても、親鸞の考え方をとてもわかりやすく解説くださった第2話以降です。頼住先生は、『唯信鈔文意』や『歎異抄』『自然法爾章』などを引きながら、教えてくださいます。

まず、頼住先生のご説明で印象深いのは、親鸞が「阿弥陀仏は無限の光(アミターバ)である」「阿弥陀仏は無限の命(アミユータス)である」といっているというご指摘でしょう。

仏様は、「方便」として色々な姿で現われるが、真実の阿弥陀仏の姿は形も色もなく、光なのだといいます。世界全体が命や光に満たされていて、それが一つのかたちを取るときに阿弥陀仏になったり、念仏を唱える自分になったりする、というのです。

阿弥陀仏は実体ではなく、世界に満たされた光である。ここまで突きつめて思考を深めると、むしろ哲学的かつ普遍的な世界観にどんどん近くなってきます。

さらに頼住先生は、大乗仏教で重要な「空-縁起」の考え方についても、とてもわかりやすくご説明くださいます。

「空」というと、字面から「空っぽ」「何もない」と誤解されることもあるが、そうではない。「関係の中で存在している」ということで、それ自体として存在しているのではないということ。つまり、絶対的な自分というものがあるのではなく、他者との関係の中で常に移り変わっていく相対的な存在が自分であるということです。

この「空-縁起」の考え方は、まさに大乗仏教の真髄であり、日本人としてぜひとも知っておきたいところです。

親鸞は、そのような大乗仏教の根幹の中に、念仏の教えを置き直して、体系化したのだと、頼住先生はおっしゃいます。

親鸞の思想について、やさしく解説くださる頼住先生の講義に圧倒されるうちに、驚くほど理解が深まる講座です。ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆特集:春に「人間力」を高める(令和5年版)
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=197&referer=push_mm_feat

◆頼住光子先生:【入門】日本仏教の名僧・名著~親鸞編(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4378&referer=push_mm_rcm2

※頼住光子先生の「頼」は、実際は旧字体(件名、本文いずれも)


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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回は「カエルとヒトの共通原理」についての問題です。ではレッツビギン。

よく調べてみると、ヒトやマウスも、イモリやカエルも、基本的には同じ共通原理を持っています。もともとは1個の卵から、オタマジャクシになったり、胎児になったりします。胎児とオタマジャクシを比べると、形は違うかもしれませんが、横に引っ張ってみるとほとんど同じ形になってしまいます。さらには、成体になると、カエルにあってヒトにないものはほとんどありません。逆に、ヒトにあってカエルにないものは、例えば(    )などです。ですから、人間を「哺乳動物(mammal)」と呼ぶのは、まさに(   )などを持っているからです。

(    )には同じ言葉が入ります。さて何が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2458&referer=push_mm_quiz


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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて本日で3月も最後の日となりました。今回は今年1月~3月までの3か月間でよくご視聴された3つのシリーズ講義を以下、お伝えいたします。

◆橋爪大三郎:「アメリカの教会」でわかる米国の本質 (全5話)
(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4762&referer=push_mm_edt

◆小和田哲男:家康の人間成長~戦略性をいかに培ったか (全5話)
(1)今川「人質」時代と今川義元の思惑
今川「人質」時代、徳川家康の実像を物語る3つのエピソード
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4756&referer=push_mm_edt

◆宮脇淳子:モンゴル帝国の世界史 (全7話)
(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4749&referer=push_mm_edt

こうみると、歴史という関係線はもちろん見えてくるのですが、「なぜ今これらを学んだり、知ったりする必要があるのか」という問いの糸のようなものもぼんやり見えてきます。それは学ぶこと、知ることで見えてくるもの、広がる世界が違ってくるということではないでしょうか。

いずれもシリーズを通してぜひご視聴ください。