編集長が語る!講義の見どころ
世界史を知ればウクライナ侵略と台湾危機の本質が見える/山内昌之先生【テンミニッツTV】
2023/04/04
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
3月21日に岸田文雄首相がウクライナを訪問しました。折しもロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席が首脳会談を行なったのと重なるタイミングであったことも、「象徴的なこと」としてさまざまに取り沙汰されています。
ウクライナ東部の要衝バフムトでは、ロシアの猛攻が続いていましたが、ロシア軍が数万人の死傷者を出しながら攻勢に失敗しつつあるのではないかとの見方も出されています。
一方、中国は、3月にアステラス製薬の日本人社員をスパイとして拘束しています。林芳正外相が4月1日から訪中して日中外相会談が行なわれましたが、中国側は早期解放要求に対して「法に照らして処理する」と主張。さらに台湾問題については「中国の核心的利益の核心だ」と繰り返し、対中半導体規制について「中国の自立自強の決意をさらに呼び起こすだけ」と牽制したと報じられています。
その間、尖閣諸島では、3月30日以降、中国公船が、過去最長となる80時間を超える領海侵犯を行ないました。
はたして、現状をどのように見るべきなのか。さらに、東アジア情勢への波及は……。
本日は、その点について山内昌之先生(東京大学名誉教授)が、世界史の教訓をひもときつつご解説くださった講義を紹介します。
歴史的事象と比べることで、見えてくるものがあります。現代の時事問題も、ぜひとも様々な深い角度から検証しかなくてはなりません。
◆山内昌之:世界史から見たウクライナ戦争と台湾危機(全5話)
(1)長期戦の歴史と「ピュロスの勝利」
ウクライナ戦争は何年続く…世界史が物語る戦争の不可思議
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4872&referer=push_mm_rcm1
すでにウクライナ侵略も1年以上が経過したわけですが、まず山内先生は、30年戦争、7年戦争、さらに8年間続いたイラン・イラク戦争と比較していきます。
7年戦争は、プロイセン(フリードリヒ2世)とオーストリア(マリア・テレジア)との戦争でした。この戦争は、様々な波及をもたらします。
《戦争というのは目論見と違って何が起きるか、何が発生するかが分からないところがあり、これが歴史にとってたいへん不可思議なところであります》
この山内先生のご言及は、まことに重要なものでしょう。
さらに山内先生は「ピュロスの勝利」に言及されます。
ピュロス(前319年~前272年)とは、エペイロス(現在のギリシア北部からアルバニア)を支配していた王であり、ローマやカルタゴを相手に戦い、名将ハンニバルが「自分より上の優れた将軍」として名前を挙げたほどの人物でした。
では、「ピュロスの勝利」とはいかなることでしょうか?
これは「損害が大きく、得るものが少ない勝利のこと」を意味します。ピュロスは、カルタゴやローマ相手に勝利を収めますが、損害の大きさに比して、得るものがあまりなかった。ピュロス自身も「われわれは次にローマ軍隊と戦えば、仮に勝利したとしても壊滅するだろう」と語ったといわれます。
山内先生は、この故事を踏まえたうえで、「ウクライナ戦争は、どちらが勝ってもピュロスの勝利なのだろう」と指摘されます。
その分析は、ぜひ講座本編をご覧いただければと思いますが、ここで興味深いのは、各国からの武器支援が「有償なのか、無償なのか」という視点です。
山内先生が比較として例に出すのは、ベトナム戦争を戦ったベトナムです。実は、ベトナムへのソ連の武器供与は「有償」でした。ベトナムはそれを返済するために大変な思いをした。ソ連にベトナム人を労働者を派遣して働かせたというのです。
山内先生は、かつてソ連を訪れたときに、そのベトナム人労働者を差別するソ連人と出会ったエピソードをお話しくださいます。歴史の一面として、必見です。
さらに山内先生は、ウクライナのゼレンスキー大統領を、古代アテネのペリクレスと比較するのが妥当かどうかを検証していきます。
そして語られるのが、ウクライナ問題から日本人がいかなる教訓を学び取るべきかということです。つまり、台湾危機をどう考えるのかです。
山内先生は、以前の講義でも指摘されていた「ドイツやフランスが、ウクライナ侵攻を許してしまった」側面を、今回も強調されます。つまり、エネルギー輸入や商品輸出の観点から、ロシアへの宥和策を続けてきたことが、結局、プーチンの今回の侵略判断を招いてしまったということです。
台湾は、兵役期間を4カ月から1年に延ばした。だが、日本はどうか。山内先生はこうおっしゃいます。
《台湾への中国の武力侵攻を、いわば爪牙(そうが)のままにさせて良いのかどうかということが今度問われるのは、EUやNATOではないのです。アメリカもちろん問われますが、やはりG7の中でそこにきちっと答えを出さなければいけないのは、ほかならぬ日本であるということについて、我々はもう一度注意を払うべきではないかと思うのです》
そのうえで、日本、台湾、そして中国の現状を分析していきます。たしかに日本にとって中国市場は大事である。では一方、中国にとって日本や台湾はどうなのか。この視点も、まことに重要でしょう。
山内先生は、第2次世界大戦前、ミュンヘン会談で英仏の首脳がヒトラーやムソリーニに宥和策を打ち出したことが、結果として、「次も譲るだろう」という誤ったメッセージになって世界大戦を招いてしまったことを挙げつつ、「妥協し、日和見を決め込めば、弱さを示していると受け取られて、ズカズカ入ってくる。これがウクライナでの教訓として学ばなければいけないこと」とおっしゃいます。
いまの日本を考えるとき、考えさせられる部分がとても多い講座です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆山内昌之:世界史から見たウクライナ戦争と台湾危機(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4872&referer=push_mm_rcm2
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☆今週のひと言メッセージ
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《地面はミミズによってつくられている》
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2880&referer=push_mm_hitokoto
ダーウィンが発見した「穴ふさぎのアフォーダンス」とは
佐々木正人(多摩美術大学美術学部・統合デザイン学科客員教授/東京大学名誉教授)
ダーウィンの主張は、地面はミミズによってつくられているということです。ミミズは4億年前からこういうことをやっているそうです。日本にも研究者がいて、間違いないことなのです。
ミミズは半水生の生物です。われわれは体内に腎臓を持っていますが、ミミズは、周囲の湿った土壌に腎臓の機能を担ってもらっています。
ミミズは土を食べ、有機物を取り入れて残りを排泄します。岩石粒子はミミズの体内で砕かれて小さくなります。これらのことはすなわち、地球の全表層が数年ごとにミミズの体を通るということです。さらにミミズは地中を動くので、土はミミズによってかき混ぜられます。このように、大地はミミズによって常に生きていてかき回されているということです。
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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。
さて、2023年度が始まりました。テンミニッツTVでは引き続き皆さまの知的好奇心を刺激する新たな講師、講義を続々と配信してまいりますので、大いにご期待ください。
また先日お伝えしましたメモ機能についても現在準備中ですので、整いましたら改めてお伝えいたします。そちらもご期待ください。
ということで、引き続きテンミニッツTVをご愛顧のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
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