編集長が語る!講義の見どころ
いま、ぜひ知っておくべき「自由主義」/特集&柿埜真吾先生【テンミニッツTV】
2023/04/28
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です
失ってはじめて、しみじみ「大切さ」が痛感されるものがあります。現代日本人にとって「自由」は、その最たるものではないでしょうか。
日本の「自由」には、短く見積もっても幕末以来の長い伝統があります。
しかし案外、「自由とはいったい何か」といわれると、明確なイメージが頭に浮かばないかもしれません。「リベラル」というと、どちらかといえば「左派」的な印象が強くなります。「新自由主義」などといわれると、まったく異なったイメージになります。
世界的にも「自由民主主義vs権威主義」などといわれる昨今です。大切な「自由」について、ぜひ体系的に学んでおきたいものです。
本日は、「自由とは何か」に多角的に迫る特集と、そのなかから柿埜真吾先生の講義を紹介いたします。
柿埜先生は「本当によくわかる経済学史(全16話)」も大人気となりましたが、いよいよ「自由主義」についての講義がスタートしています。前回の経済学史講義に続き、まことに秀逸な必見講義です。
■本日開始の特集:「自由」とはいったい何か?
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=199&referer=push_mm_feat
・柿埜真吾:消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
・川出良枝:モンテスキューとルソー…二人の思想家の共通の敵とは?
・本村凌二:独裁・共和政・民主政――繰り返されてきた世界の歴史
・中島隆博:20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
・橋爪大三郎:法の支配があるから自由がある…信仰の自由と政治の基本
・納富信留:僭主制が一番いい?欲望の奴隷になるのが本当に幸せですか
・小原雅博:国際政治を理解するために知っておくべき「3つの危機」
・津崎良典×五十嵐沙千子:「リベラル・アーツ」と「自由」の関係を歴史的に振り返る
・田村潤:「自由」がないと「行動する勇気」はわいてこない
多彩なラインナップですので、ぜひ気になった講座をご覧ください!
■講座のみどころ:日本人が知らない自由主義の歴史~前編
本日は特集のなかから、上述のように柿埜真吾先生の講義を紹介いたします。
◆柿埜真吾:日本人が知らない自由主義の歴史~前編(全7話)
(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4894&referer=push_mm_rcm1
柿埜先生は第1話で、こうおっしゃいます。
《「自由主義」とは近代社会をつくった思想なのですが、これがどういうものかということは、実は意外ときちんと理解されていません。言葉についても、「リベラリズム」と「自由主義」の両方が使われていて、かなりの混乱があります》
ここは、まさにおっしゃるとおりでしょう。では、そもそも「自由主義」とはどのようなものなのか。
ここで柿埜先生は興味深い事例をご紹介くださいます。たとえばスペインでは、19世紀の初めくらいまで、「自由主義者」といわれると「過激派」というイメージがつきまとっていたというのです。
しかし、やがて自由主義の考え方、すなわち「法の支配を確立して国民の私有財産をきちんと守る、制限された政府をつくる、自由貿易を行う」などといったことを実際にやってみたら、すごくうまくいくことがわかり、そこから、皆が「自由」という言葉を名乗りたがるようになったといいます。
しかしそもそも、一口に「自由主義」といっても、色々な側面があります。
「〇〇への自由」というように自分がしたいことを実現できる「自己実現」のようなあり方に注目する「積極的自由」。一方、「〇〇からの自由」というように、自分が他人から侵害されない側面に注目する「消極的自由」。
パッと見ただけでは、語感もあって「積極的自由」のほうが良さそうに見えますが、実は「積極的自由」が「消極的自由」を侵害してしまうことも起きうるのだといいます。はたしてどのようなことか……は、ぜひ講義本編(第1話)をご覧ください。
第2話からは、いよいよ思想家に迫っていきます。
第2話は、ホッブズ、ロックです。彼らの名前は教科書などで読まれた方も多いことでしょう。まさに自由主義が生まれていく時代の先駆けとなる思想家たちですが、その思想はずいぶん異なります。
とてもわかりやすく整理くださっているので、まずは基礎を押さえるために必見です。
第3話は、アダム・スミスを中心に、自由主義と自由主義経済の関連を見ていきます。
アダム・スミスは、一般に抱かれがちなイメージとは異なって、市場万能主義者ではありませんでした。あくまで、政府の恣意的な介入はかえって有害な結果を招くという主張でした。そして、社会はゼロ・サムゲームではなく、自由貿易によって全体が豊かで便利になっていくことを示したのです。
第4話では、ベンサムとJ・S・ミルについてご解説いただきます。
ロックなどは自然権や人権思想という見地から「自由主義」を説いていきました。しかし、ベンサムやロックはそのような神学的な議論はせず、「最大多数の最大幸福」というスローガンで有名な「功利主義」的な発想から自由主義を位置づけていきました。
この発想からすると「全部、自由放任がいい」ということではなくなっていきます。環境汚染の規制や貧困層の救済などは、むしろ進めたほうが「最大多数の最大幸福は大きくなる」ということにもなりうるからです。
ベンサムの弟子のミルは、「特別な理由がないかぎり、原則として自由放任がいい」と言いつつ、「政府関与が必要な場合もある」と書きました。
もう一方で、「他人を侵害しないかぎり自由だ」という「他者危害原則」も説きました。
この後者の考え方からすれば、たとえば現代日本の「芸能人の不倫バッシング」のようなものはどう考えられるのか……。そのような問題提起も含め、大いに考えさせられる解説が続きます。
第5話では、このような考え方のうちの一方である「政府関与が必要な場合もある」ということが「ニューリベラリズム」を生み出していく過程が描かれます。
19世紀も後半になると、かつての絶対主義のように国民に恣意的な政治を行なうのではなく、国民の代表として選ばれた議員が議会政治を行なっていくようになります。その結果、それまでの「自由放任」的な考え方ではなく、どちらかといえば「政府介入を良しとする」社会民主主義的な発想になっていきます。
「政府介入をどこまで是とするか」。これによって、自由主義はまったく正反対の色彩を帯びるようになっていきます。
ここが理解できると、自由主義の複雑さの原因が、明確に把握できるようになっていきます。
第6話では、そのような「自由主義」を日本やアメリカではどのように受容したのかについて、ご解説くださいます。
日本の戦前の「自由主義者」といえば、河合栄次郎や石橋湛山などの名前があがります。しかし、それぞれ背景とする自由主義の姿は、まったく異なっていました。このあたりが見えてくると、日本の「自由主義」の捉え方の違いも、浮かび上がって見えてくるようになります。
一方、アメリカでは、どうだったのか? 日露戦争のころの大統領だったセオドア・ルーズベルトなどが出てきますが、彼が信奉していた自由主義の姿を知ると、またアメリカに対する理解も深まっていきます。
第7話では、そのような自由主義が現代にどう流れていくかが語られます。
……と、ここまでが前編ですが、後編は、さらに現代の諸問題を深掘りする「ますます日本人が知らない自由主義の歴史」になっていきます。とはいえ、まずはこの前編を見ることで、「自由とは何か」の本質がしっかりと見えるようになるはずです。
いままで、頭の中でぼんやりしていたものが、明確な像を結んでいくのは、まことに痛快なことです。その痛快さを存分に味わえる講義です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆特集:「自由」とはいったい何か?
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=199&referer=push_mm_feat
◆柿埜真吾:日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4894&referer=push_mm_rcm2
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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回は「エネルギー問題」についての問題です。ではレッツビギン。
今、石炭は( )といわれています。船が座礁するのと同じように、今まで資源だった石炭がもはや価値をなくしているということで( )なのです。石油・天然ガスも、2050年までにはそうなるというのが、脱炭素のもたらす将来です。
それから、原子力には今コストが高くなってきたということに加え、やはり「怖い」という思いがあります。それと同時に原子力発電所を持っているというのは、テロ(物理的、サイバー・テロを問わず)の標的として破壊されると巨大な核爆発を招く可能性があるため、爆弾を抱えているのと同じことになっています。
( )には同じ言葉が入ります。さて何が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4177&referer=push_mm_quiz
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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。
さて、早いもので第3回・学びの投稿アカデミアの投稿期間の締切、4月30日(日)まであと2日ほどとなりました。
◆第3回・学びの投稿アカデミア「わたしの1冊」投稿募集
https://10mtv.jp/review/?review_id=3&referer=push_mm_new_function
本は学びの友といわれますが、あるときは友だちであり、あるときは先生であり、あるときは親のように叱咤激励してくれる。そんないろいろな役割を演じてくれる本とのかかわり、エピソードを皆さまで共有しませんか。ご投稿を、心よりお待ちしております。
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