編集長が語る!講義の見どころ
宮沢賢治と『銀河鉄道の夜』の魅力を深掘りする/鎌田東二先生【テンミニッツTV】
2023/05/05
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
いよいよ映画『銀河鉄道の父』(門井慶喜さん原作)が、全国公開となりました。宮沢賢治の父・政次郎を役所広司さんが、宮沢賢治を菅田将暉さんが演じられています。
映画の公開もあって、宮沢賢治について語られる機会も増えておりますので、あらためまして、テンミニッツTVで鎌田東二先生(京都大学名誉教授)に宮沢賢治と『銀河鉄道の夜』について語っていただいた講義をご紹介いたします。
この講義は、昨年7月に開催したウェビナー《宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む》を元にしたものです。
◆鎌田東二:宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む(全6話)
(1)あらすじと賢治の原稿
未完の長編『銀河鉄道の夜』の魅力と宮沢賢治の思想に迫る
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4824&referer=push_mm_rcm1
宮沢賢治は明治29年(1896)生まれで、昭和8年(1933)に亡くなっていますが、自身が地学・宇宙好きだったこともあって、当時最新の学説も取り入れつつ、非常に豊かで幻想的な光景を描き出しました。また、熱心な法華経信者だったことも有名でしょう。そこからくる精神性が、独特の世界観を生み出しています。
鎌田先生は、『宮沢賢治「銀河鉄道の夜」精読』(岩波現代文庫、2001年)という書籍を発刊されています。『銀河鉄道の夜』についての鎌田先生独自の深い解釈を詳細に描き出すとともに、『銀河鉄道の夜』の1次稿から4次稿までを掲載して、その変遷も明らかにした本です。
今回の講義でも、その本からさらに進んだ鎌田先生の深い読みを教えてくださいます。誰しもが(程度の差はあれ)経験しているであろう孤独や悲しみを昇華させてくれる内容です。
ところで、『銀河鉄道の夜』といえば、「そういえば、昔読んだけれど」「作品名はよく聞くけれど」という方も多いことでしょう。そのような方々のために、まず、講座の第1話では、そのあらすじを紹介しています。
これは、より多くの方に、この講座を楽しんでいただこうという鎌田先生の発意によるもので、宮沢賢治の直筆原稿も映しながら内容を紹介し、そこに鎌田先生のコメントを挟むかたちで進んでいきます。
原稿用紙に書かれている部分、用紙の裏側に書かれている部分、走り書きのようなパート……。宮沢賢治の創作過程も垣間見えてくるのは、動画講義ならではのメリットでしょう。
鎌田先生は、『銀河鉄道の夜』をひと言でいえば、「宇宙的な悲しみ」だといいます。透明な悲しみに貫かれている、孤独感がとてもよく表現されている、というのですが……。
第2話からは、いよいよ印象深いシーンの味読・精読になります。
鎌田先生が、まず着目されるのは「青い火」という描写です。それは『銀河鉄道の夜』のこんなジョバンニの心の独白のなかに出てくる言葉です。
《どうして僕はこんなにかなしいのだろう。僕はもっとこころもちをきれいに大きくもたなければいけない。あすこの岸のずうっと向こうにまるでけむりのような小さな青い火が見える。あれはほんとうにしずかでつめたい。僕はあれをよく見てこころもちをしずめるんだ》
『銀河鉄道の夜』には、とても印象深い「孤独」の描写が出てきます。たとえば、ジョバンニが級友たちからバカにされ、いじめられたときの、《ぱっと胸がつめたくなり、そこらじゅうきいんと鳴るように思いました》というシーン。
「青い火」は、そのようなジョバンニの孤独に対置するように描かれるのです。
この孤独は、宮沢賢治自身の孤独の反映でもあったと鎌田先生は指摘されます。はたして、その賢治が描いた「青い火」にどのような意味があるのかは、ぜひ講座本編をご覧ください。
『銀河鉄道の夜』では、この「深い孤独や悲しみ」が「ほんとうのさいわい」へと超越すると鎌田先生はおっしゃいます。そのために銀河鉄道の旅をする“宇宙巡礼者”なのだと。
その「ほんとうのさいわい」とは何かの、きわめて重要なヒントとなるのが、謎の人物「ブルカニロ博士」がジョバンニと対話するシーンです。
実はこのシーンは、入沢康夫氏、天沢退二郎氏らの校訂では「カット」と判断された部分です。現在、それを反映して、筑摩書房の全集をはじめ、いくつかの文庫などでは掲載されないかたちになっていますが、岩波文庫や角川文庫などでは残っていたりします。
しかし、講座の動画内でも示されますが、別段、宮沢賢治自身が「×」をしたり「削除」と書いているわけでもありません。そのあたりの判断の余地も、未完の作品の魅力でしょう。
この箇所で、主人公・ジョバンニとブルカニロ博士が、まことに具体的に「ほんとうの幸福」をめぐる議論をするのです。
鎌田先生が注目するのは、「この世で救われるか」「あの世で救われるか」という論点です。さらに、以下の部分に特に言及されます。
《みんながめいめいじぶんの神さまがほんとうの神さまだというだろう、けれどもお互いほかの神さまを信ずる人たちのしたことでも涙がこぼれるだろう。それからぼくたちの心がいいとかわるいとか議論するだろう。そして勝負がつかないだろう。けれども、もしおまえがほんとうに勉強して実験でちゃんとほんとうの考えと、うその考えとを分けてしまえば、その実験の方法さえきまれば、もう信仰も化学と同じようになる》
ここは、まさに現代的な諸々の対立をも越える道だといいます。上記の経緯から、この部分をご存じない方も多いので、講座内で該当箇所の全文を引用して、解説いただいています。
そのほか、宮沢賢治の実家は浄土真宗で、賢治が法華経信者になっていく飛躍もあるのですが、鎌田先生は岩手県に広がっていた「隠し念仏」の世界観の影響も指摘されます。
そのような奥行きも含め、様々なことを考えることができる講座です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆鎌田東二:宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4824&referer=push_mm_rcm2
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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回は「心と感情と脳」についての問題です。ではレッツビギン。
脳は大きいのですが、真ん中の奥のところに( )という古い組織があります。そこが、体のいろいろな状態や感覚情報をまとめ、恐怖・怒り・欲求などに関わることを司っています。(具体的には)目の奥に位置し、脳の一番奥といいますか真ん中あたりにかけてで、外からは触れられない奥のほうです。
この( )は脳みそのもともとの始まりなので、「爬虫類脳」と呼ばれることもあります。動物はみんな、こういう組織を持っているからです。
( )には同じ言葉が入ります。さて何が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4559&referer=push_mm_quiz
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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。
GWもあと少しになりましたが、編集長が冒頭で紹介している鎌田先生の《宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む》講義は映画公開の有無にかかわらず、大変おススメの講義なので、ぜひこの機会にシリーズを通してご視聴ください。
また、こういった名著、名作を解説する講義も今度増やしていきたいと考えております。ぜひご期待ください。
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