編集長が語る!講義の見どころ
いまこそ「本当の徳川家康」を深く知ろう/特集&田口佳史先生【テンミニッツTV】

2023/05/09

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

今年のNHK大河ドラマ「どうする家康」は、いろいろな評判がインターネット上でも飛び交っています。

先日も、「どうする家康」を観た知人から、「あの徳川家康の話は、本当?」と聞かれ、「う~ん……!」と答えざるをえないことがありました。

もちろん、ドラマはドラマ。話のストーリーをおもしろくするために、色々な脚色が入るものですし、すべてが史実どおりというのは、ありえない話ではありましょう。

そうはわかっていても、どうしても大河ドラマといえば、ある程度は史実に則っていると思っている方々も多いのも事実。このあたりのバランスは、きっと制作側にとっても、なかなか難しいところであるに違いありません。

思えばこれまでも、様々なドラマで名だたる名優たちが「徳川家康」を演じてきました。知らず知らずのうちに、何らかのイメージが自分のなかに出来上がってしまっているかもしれません。

しかし、何といっても家康は、日本史の最重要人物。ぜひとも「真実の姿」や「歴史的な意義」も知っておきたいものです。

テンミニッツTVには、徳川家康にまつわる講義が多数あります。いまこそ、あらためて徳川家康の「知られざる実像」を深掘りしてみましょう。

■本日開始の特集:本当の徳川家康

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=189&referer=push_mm_feat

・田口佳史:『貞観政要』とはいかなる書か?家康は何を学んだのか?

・片山杜秀:徳川家康の「天下泰平」デザインとは?先人達の失敗に学ぶ

・小和田哲男:今川「人質」時代、徳川家康の実像を物語る3つのエピソード

・山内昌之:徳川家康の2つの功績…現代日本はいかに形づくられたか

・小和田哲男:10分でわかる「徳川家康の経済学」

・山内昌之:パックス・トクガワーナを築いた徳川家康の大胆さと慎重さ

・本村凌二/中村彰彦:なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか


■講座のみどころ:徳川家康と貞観政要~学びで掴み取った成功とは(田口佳史先生)

本日、まず紹介するのは、田口佳史先生(東洋思想研究家)の《徳川家康と貞観政要》講義です。

よく知られているように、徳川家康は「学び」から多くを掴み取った人物でした。その家康が愛読したことで知られる中国古典の名著が『貞観政要』です。

よく知られているように、『貞観政要』は、「貞観の治」と呼ばれる中国屈指の善政を行なった唐の太宗(李世民。598年~649年)とその側近たちの逸話を集めた書です。

唐の太宗は自分に諫言してくれる側近を置いており、その側近たちは太宗にリーダーのあり方を示すため、漢籍の古典や歴史を引用し、わかりやすく説いていました。そのエピソードを集めた『貞観政要』は、つまり、太宗と側近たちの具体的なやりとりを通して、それまでの中国古典のエッセンスをを実践的に学べる稀有の書なのです。

今回の田口先生の《徳川家康と貞観政要》講義は、家康の事例も紹介しながら、実際に『貞観政要』の文章を読み解いていく内容です。それゆえ、『貞観政要』のメッセージがとてもわかりやすく、ダイレクトに胸を突き動かします。

はたして家康は『貞観政要』から、どのような「人間力」を学んだのか。そのことがとてもよくわかる名講義です。

◆田口佳史:徳川家康と貞観政要(全9話)
(1)徳川家康が太宗から学んだ治世の要諦
『貞観政要』とはいかなる書か?家康は何を学んだのか?
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4845&referer=push_mm_rcm1

まず田口先生は、家康が『貞観政要』から何を学んだかを教えてくださいます。

第1は「武断政治から文治政治への転換」。第2は「トップの要注意点(=御法度)」。第3は「主役は部下=条件を整えてくれているのは部下のほう」……。それらを家康が学んだというのです。

それぞれの「心」は、ぜひ講義の第1話をご覧ください。

第2話からは、実際に『貞観政要』の文章を解説しながら、唐の太宗の故事や、家康のエピソードを紹介くださいます。太宗だけでなく、家康の故事も交えていただくことで、『貞観政要』の理解もおのずと深まっていきます。

どのような項目をご解説いただいているか、各話のタイトルを並べてみましょう。

第2話:安定した長期政権を築くために
盤石の四天王、質問力、仁と義…長期政権の要諦とは

第3話:文治政治の象徴「弘文館と昌平黌」
弘文館と昌平黌…儒学を基盤にして幹部の知性を底上げする

第4話:学問第一と江戸の幼年教育
教育のトップを変えず幼年教育も徹底…学び重視の見事さ

第5話:法整備の重要性
民を守り、公平に運用せよ…家康が力を入れた法整備とは

第6話:人情と天人相関
儒家の思想「天人相関」…天に代わり愉快な社会をつくる

第7話:政教仁義の道と古典
政治も教育も「五倫」や「仁義」に限る…古典を読む大切さ

第8話:『詩経』の教えと日本の国家運営の形態
喜ばせて撤回するのは最悪…トップは口を出さず最後まで聞く

第9話:君臣の関係と「十思」の教え
トップの徳が見られている…本心を表明し良臣と心を1つに

それぞれの内容は、ぜひ講義本編をご覧ください。歴史と古典とをベストミックスした講義で、家康の考え方と、『貞観政要』のエッセンスを同時に学べる、非常にありがたい講義です。


■講座のみどころ:「家康特集」から、片山杜秀先生と小和田哲男先生の講義も紹介します!

さらに今回は、もう2つ、講義を紹介しましょう。

1つは、片山杜秀先生(慶應義塾大学教授)の《徳川家康の果断と深謀~指導者論と組織論(全5話)》。

もう1つは、小和田哲男先生(静岡大学名誉教授)の《家康の人間成長~戦略性をいかに培ったか(全5話)》です。

片山先生は「徳川幕府が天下泰平を長く続けられたのは、家康の振るまい方や、デザインが優れていたから」という視点から、様々なことをご教示くださいます。

まず、家康は何といっても「率先垂範」の武将でした。これは源頼朝とは大きく異なる点です。

頼朝は、自分は鎌倉にいて、源義経などを派遣して平家と戦わせました。そのため、軍事的なカリスマ性は源義経が持ってしまう形になりました。

対して家康は、関ケ原の戦いも、そして70歳を越えての大坂の陣でさえ、常に自ら陣頭指揮をとりました。自分が不自然に身を引いたり、力を分ける素振りなどしなかったのです。

そればかりでなく、「権威と雅」も徹底的に「簒奪」してしまおうとしました。その象徴ともなるのが、家康が亡くなった後に「東照大権現」になったことです。

片山先生のご指摘は、さらに広がり、深まっていきます。「徳川」を名乗った理由。皇室をパクった御三家の仕組み。「儒教」をメインに持ってきた真の狙い。すべての権威を具現しようとする「東照大権現」のデザイン。秀吉的な中央集権国家への忌避……。

このあり方を、片山先生は「足利氏、源氏、織田、豊臣などでは考えつかないような途轍もなく超越的で、ローマ教皇も驚くようなデザイン」だとおっしゃいます。

その驚くべき全貌を、ぜひご覧ください。

◆片山杜秀:徳川家康の果断と深謀~指導者論と組織論(全5話)
(1)率先し陣頭指揮する
徳川家康の「天下泰平」デザインとは?先人達の失敗に学ぶ
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4726&referer=push_mm_rcm2

一方、小和田先生の講義は、最新の歴史学の学説も取り入れつつ、家康に対するイメージを一新してくださいます。ポイントは「家康が、いかに人間的に成長していったか」です。

実はあまり抑圧されていなかった「人質時代」、今川家の軍師的存在でもあった僧侶・太原雪斎の教え、一向一揆の鎮圧法に見る織田信長との違い、武田信玄との戦いの教訓、分権的な幕藩体制を構築していくときの巧妙な仕組み、多彩なブレーン集団……。

生き生きした魅力あふれる家康像が立ち上ってくる講義です。

◆小和田哲男:家康の人間成長~戦略性をいかに培ったか(全5話)
(1)今川「人質」時代と今川義元の思惑
今川「人質」時代、徳川家康の実像を物語る3つのエピソード
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4756&referer=push_mm_rcm3

以上のように、今回の特集では、「家康」の真実の姿と魅力に、様々な角度から迫れます。まさに、このタイミングで学びたい内容ばかり。ぜひ気になった講義からご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆特集:本当の徳川家康
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=189&referer=push_mm_feat


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☆今週のひと言メッセージ
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《歴史は明らかにサイクルを描いている》

https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4513&referer=push_mm_hitokoto

1979年に何が起こったのか――歴史的曲がり角の年を俯瞰する
中西輝政(京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者)

歴史は明らかにサイクルを描いている。あるいは振り子を振っていると言えると思います。ただ、それは同じところを行き来しているわけではありません。サイクルを描いていても、螺旋状に、また別の大きな進行方向をもって変化している。振り子は振っていても、振り子の平面がまた変わってくる。

普通の振り方をする時代もあれば、それがまた大きく一回転して、振り子が別の平面、別の立体を形成するときもあるでしょう。歴史を三次元、そして時間の軸を入れて四次元で考えるといった歴史観を持つことが今、グローバリゼーションを理解するうえで、非常に大切なことだと私は思っています。


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今週の人気講義
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未完の長編『銀河鉄道の夜』の魅力と宮沢賢治の思想に迫る
鎌田東二(京都大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4824&referer=push_mm_rank

「2年目のジンクス」は本当?原因の推定に関わるバイアス
鈴木宏昭(青山学院大学 教育人間科学部教育学科 教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4881&referer=push_mm_rank

「発酵はマジックだ」心も体も豊かにする発酵食品のアレンジレシピ
小泉武夫(農学博士)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4886&referer=push_mm_rank

アダム・スミスと見えざる手…自由にしたほうがうまくいく
柿埜真吾(経済学者)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4896&referer=push_mm_rank

AI、ディープラーニングとは…知能と身体性は不可分か?
長谷川眞理子(日本芸術文化振興会理事長/元総合研究大学院大学長)
松尾豊(東京大学大学院工学系研究科 人工物工学研究センター 技術経営戦略学専攻 教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2241&referer=push_mm_rank


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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて、先週水曜日(5月3日)より國廣正先生(弁護士・国広総合法律事務所パートナー)の新シリーズ講義〈本質から考えるコンプライアンスと内部統制〉の配信が開始となりました。

◆ 國廣正:本質から考えるコンプライアンスと内部統制(全6話予定)
(1)「法令遵守」でリスクは管理できない
「コンプライアンス=法令遵守」ではない…実例が示す本質
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4902&referer=push_mm_edt

「コンプライアンスと内部統制」をテーマに講義が展開されまして、2話目以降ではセクハラ、パワハラ、マタハラといったハラスメントや個人情報などについても扱っていきます。
リスク管理を行ううえで大事な講義です。毎週水曜日配信で全6話予定。ぜひシリーズ通してご視聴ください。