編集長が語る!講義の見どころ
戦後史を彩った巨人たち~福田赳夫/特集&井上正也先生【テンミニッツTV】

2023/05/12

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

いま振り返ってみると、戦後の日本には、「味のある」巨人たちが数多くいました。令和の現在と比べて見たときに、明らかに「大物感」が違う感じもします。まことに個性的な人物が多かったという印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

岸信介、福田赳夫、三島由紀夫、石原慎太郎、石原裕次郎、古関裕而、松下幸之助、豊田喜一郎、井深大、森田昭夫、本田宗一郎……。このように並べても、独特の迫力があります。

なぜ、この方々には独特の「味わい」があるのか。1つ考えられるのは、彼らの世代的特徴として、戦前からの歩みを引き受けていることでしょう。

激動と苦難の時代を経て、掴み取ったものとは何か。彼らの個性とはいかなるものか。彼らの実像とは。人物に深く迫った講義をピックアップします。


■特集:戦後史を彩った巨人たち

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=200&referer=push_mm_feat

・井上正也:福田赳夫と日本の戦後政治

・井上正也:岸信介と日本の戦前・戦後

・片山杜秀:石原慎太郎と三島由紀夫と近衛文麿

・本村凌二:歴史家が語る『裕次郎』

・刑部芳則:古関裕而・日本人を応援し続けた大作曲家

・江口克彦:松下幸之助の言葉~人間大事の心

・島田晴雄:戦後復興~“奇跡”の真実(12)豊田喜一郎とトヨタ自動車1

・島田晴雄:戦後復興~“奇跡”の真実(14)井深大、盛田昭夫とソニー

・島田晴雄:戦後復興~“奇跡”の真実(15)本田宗一郎とホンダ

政界、文学界、芸能界、経済界と、各界の「戦後史を彩った巨人」たちをラインアップしております。ぜひ気になった講義からご覧ください。


■講座のみどころ:「角福戦争」だけではわからない福田赳夫の実像(井上正也先生)

本日、特集からピックアップするのは、井上正也先生(慶應義塾大学教授)の《福田赳夫と日本の戦後政治》講義です。

「福田赳夫」と聞いて、どのようなイメージが頭に浮かぶでしょうか。

「角福戦争(田中角栄VS福田赳夫)」や「三角大福中(三木武夫・田中角栄・大平正芳・福田赳夫・中曽根康弘)」などと称された自民党内の権力闘争を、真っ先に思い起こす人もいるはずです。

あるいは、日本赤軍による日航機ハイジャック事件の折に「人の生命は地球より重い」と述べて、犯人の要求を呑んだことが強く印象に残っている方もいるかもしれません。その一方で、「ナショナリスト」や「タカ派」といった人物像をお持ちの方もいるでしょう。若い世代は、そもそもイメージが頭に浮かんでこないかもしれません。

しかし、福田赳夫の歩みをつぶさに調べると、戦後政治史のなかで果たした役割の大きさ、さらにイメージとはまったく異なる国際主義者のイメージが浮かび上がってきます。

福田の生涯を知れば、戦後の日本政治史を見通すための、1つの座標軸も見えてくるのです。

◆井上正也:福田赳夫と日本の戦後政治(全9話)
(1)福田赳夫のイメージと大蔵官僚時代
陸軍との予算折衝、汪兆銘政権、そして預金封鎖と新円切替
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4908&referer=push_mm_rcm1

第1話では、福田赳夫の「戦前史」をご紹介いただきます。この背景を知ると、福田赳夫に対するイメージも、かなり変わってきます。

福田赳夫は1905年(明治38年)に群馬県に生まれ、第一高等学校、東京帝国大学を経て、1929年に大蔵省に入省します。優秀だった福田は、入省後すぐに欧州留学をするエリート「白切符組」として、ロンドンで約3年間の経験を積みます。

彼がロンドンにいた時期は、まさに大恐慌期。ドイツやイタリアでファシズムが台頭し、イギリスがブロック経済を行ない、国際協調体制が崩壊していく場面をつぶさに見ることになるのです。

帰国すると陸軍の予算担当となり、当時の蔵相・高橋是清の補佐をします。高橋是清は、陸軍からの予算増の要求に抵抗していましたが、昭和11年(1936年)の二・二六事件で暗殺されてしまいます。

その後、福田は1941年に南京に日本が成立させた汪兆銘政府(南京国民政府)の財政顧問となります。これは、実質的に国家財政全体を運営する立場ですが、それを30代にして経験することになるのです。このあたりは、満洲国で一国を動かす経験を積んだ岸信介や椎名悦三郎らと重なるところがあります。

このような戦前の経験のなかで、福田が何をつかんだかは、ぜひ講義本編をご覧ください。

さらに戦後になると、福田は預金封鎖と新円切替を主導します。これは、敗戦後のインフレを抑え込むためのものでした。1回限りの例外として、1500万円以上の財産を持っている人は、90パーセント課税されるという法律をつくり、国民が隠して払わないことを避けるために、流通している日本の円を全部回収して、新しい円に切り替えることを行なったのです。

このような大胆(乱暴?)きわまりない政策を行なえたのも、福田の南京国民政府での経験があったからだったと、井上先生は分析されます。

しかし福田は、1948年(昭和23年)の昭電疑獄という贈収賄事件に巻き込まれます。後に無罪判決となりますが、これをきっかけに大蔵省を退職することになり、政界に打って出るのです。

政界進出にあたっては、吉田茂ではなく岸信介に近づきます。その理由の1つは、吉田茂の経済政策には自由放任主義的なところがあったのに対し、岸や福田は、国による経済計画による成長を志向していたことでした。

大蔵官僚としての経験もあり、政策通の福田は、あっという間に政界において重きをなすことになります。その一方で福田は、党人派的な「派閥政治」を嫌い、政党の近代化を志向してもいました。

しかし、これらのことが後年、党内で嫉妬されたり、激烈な派閥抗争のなかでマイナスに働いたりすることにつながるのです。

それらがどのようなものか。そして、福田が戦った政争の実相とはどのようなものだったのか。それらについても、ぜひ講義本編でご覧ください。

さらに注目すべきは、福田の国際性です。大蔵省に入省したばかりの若き日に、第二次世界大戦間近の欧州に留学した福田は、国際協調の重要性を肌身に染みていました。経済大国になった日本として、何をなすべきか。そのことを考えて、「全方位外交」を標榜していくのです。

大蔵官僚としての経験を生かし、様々な内閣で経済対策のかじ取りをし、そして国際協調による自由経済を推進しようとした福田。「戦後という時代」を考えるうえで、とても参考になる講義です。ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆特集:戦後史を彩った巨人たち
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=200&referer=push_mm_feat

◆井上正也:福田赳夫と日本の戦後政治(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4908&referer=push_mm_rcm2


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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回は「イエス・キリスト」についての問題です。ではレッツビギン。

この「イエス・キリスト」という名称について確認しましょう。この「イエス」という名前は、ある意味ではとても平凡な名前だったようです。しかし、名前一つ一つには意味があります。「神は救い」や「神は救う」という意味が、この言葉の背後にはあるそうです。他方で、キリストとは何なのか。これは名前ではなく、ましてや家族名(ファミリーネーム)でもありません。もともとの意味は(    )という意味だと聞いています。

さて(    )には何が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1607&referer=push_mm_quiz


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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて本日開始の特集〈戦後史を彩った巨人たち〉にはラインナップされていませんが、個人的に以下の講義も注目いただきたいと思い、この場で紹介させていただきます。

◆佐高信:『未完の敗者 田中角栄』を語る(全3話)
(1)今、なぜ田中角栄なのか
弱者への思いやり、格差社会の痛みを忘れなかった人
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=525&referer=push_mm_edt

この講義は、佐高信先生(評論家)が著書をもとに、田中角栄の政治家としての役割、またその人となりについて語った貴重な講義です。戦後の代表的な総理大臣として誰もが知っている田中角栄ですが、実際にどのような人物だったのか。改めてこの機会に学んでおくのもいいのではないでしょうか。ぜひシリーズを通してご視聴ください。