編集長が語る!講義の見どころ
「三日坊主」「だらしない」などを解決する行動分析学(テンミニッツTVメルマガ)

2020/09/08

皆さまこんにちは。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
「三日坊主になってしまう……」「どうしても部屋が片付けられない……」「どうも自分は根気がなくて、だらしないところがあって……」。このようなことは、多くの人が経験している悩みではないでしょうか。もしかすると、子供や部下などのことで同様の悩みを抱えている方もいらっしゃるかもしれません。

本日は、そんな悩みに答えてくれる、島宗理先生(法政大学文学部心理学科教授)の「行動分析学」講義をご紹介します。問題行動についての考え方が一変し、人生を変えるきっかけになるかもしれない、とても興味深い内容です。

◆島宗理:人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(全7話)
(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2848&referer=push_mm_rcm1

まず島宗先生は、「行動分析学」は通常の心理学とは大きな違いがあるとおっしゃいます。「人の行動の理由を、人の心や能力、性格といったもので説明しない」というのです。つまり、「部屋を片付けられない」という事実があったときに、「だらしないから」などといった理由では説明しないということです。それはなぜでしょうか。

島宗先生は2つの理由を挙げます。1つは、片付けられない理由を「だらしない」ことに求めてしまうと、解決法が出てこないから。もう1つは「循環論に陥ってしまうから」です。

「循環論」とは何か。ひと言でいえば「堂々めぐり」ということです。「片付けられない」ことを例にすると、「なぜ片付けられないか?→だらしないから→どうしてだらしないのか?→片付いていないから→なぜ片付けられないか?→だらしないから」と、延々と繰り返す思考パターンになってしまうことです。

えてして、できない理由について、「だらしない」「やる気がない」「能力がない」などいった性格や能力で説明すると、循環論に陥り、問題の解決にならないことが多いといいます。つまり、「だらしない」などという説明は、一見すると「片付けられない理由」を述べているようですが、実のところは「片付いていない状況」を言い換えているにすぎないのです。

たしかにおっしゃるとおりです。そういわれてみると、会社などの会議でも、部下への指導でも、あるいは子どもへの小言などでも、延々と堂々めぐりになってしまうのは、まさに「性格」や「能力」「心」などを議題してしまっているケースが多いように思われます。

では、どうすればいいのか。「行動分析学」では、行動を変える要因として「環境」に着目するのだといいます。「片付けられない」ということについていえば、その理由は「スペースがないから」ということが多い。ならば、スペースを増やす努力をすれば問題は解決するはずというのです。たしかに、そのとおりです。

この講義で島宗先生は、行動分析学のさまざまな手法も教えてくださいます。たとえば、ABC分析です。Aは英語の「Antecedent(できごと)」、Bは「Behavior(行動)」、Cは「Consequence(結果)」。つまり、「どういうときに、どういうことをすると、どうなる」という3つの要素をよく観察してみて考えて書いてみることです。

まずは現状把握として「ベースライン」を測定してみる。現状が把握できたら「介入」してやってみる。それで出てきた結果を、さらに分析検討していくのです。

また、そもそも人間は、なぜ三日坊主になってしまうのでしょうか? 島宗先生は「ちりも積もれば山となる」「天災は忘れた頃にやってくる」という2つの理由を挙げられます。

前者は、英語の習得でもジョギングでも、1回10分やってすぐに効果が出ればやれるが、日々の積み重ねで「ちりも積もれば」にならないと変わらないので、やらなくなってしまうこと。後者は、行動と環境の関係性の確率が非常に低く、やらなければと思っていても、ついつい後回しになってしまうことです。これは、誰しも心当たりのあることではないでしょうか。

これを避けるためにどうするか……それはぜひ講義の本編をご覧ください。上記以外にも、「行動分析学」の手法を数々ご紹介いただいています。日々の行動に、大いに参考にしていただける講義です。

(※アドレス再掲)
◆島宗理:人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2848&referer=push_mm_rcm2


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今週のひと言メッセージ
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「玄人とは『暗いところが見える人』」

https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=758&referer=push_mm_hitokoto

見えない世界こそがわれわれが本当に見るべき世界
田口佳史(東洋思想研究者)

ですから、プロとは暗いところが見える。
暗いところ、つまり普通の人では、肉眼では見られないところが見える人がプロフェッショナルと言い続けられてきたのです。
では、暗いところ、肉眼では見えないところとはどういうところかというと、要するに、明日や、遠く離れたところです。


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今週の人気講義
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「オール・サポーティング・オール」社会のためにすべきこと
出口治明(立命館アジア太平洋大学<APU>学長)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3524&referer=push_mm_rank

55年体制期、政権を争う選挙を行わなかった日本の特殊性
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3173&referer=push_mm_rank

「自国ファースト」は悪いかどうか、改めて考える必要がある
山内昌之(東京大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3554&referer=push_mm_rank

2700年前の詩人ホメロスが時代を超えて感動を与え続ける理由
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
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近年、なぜ異常気象の連鎖が起こっているのか
中村尚(東京大学 先端科学技術研究センター 副所長・教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2673&referer=push_mm_rank


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編集後記
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編集部の加藤です。
先日、日本の古典文学作品『太平記』について、兵藤裕己先生(学習院大学文学部教授)の講義を収録しました。
『太平記』は「鎌倉幕府の滅亡から南北朝内乱という、14世紀の日本の動乱を描いた歴史文学」で非常に興味深い講義なのですが、私が特に高い関心を持ったのは、原文についてです。
詳しくは後日、配信予定の本編をぜひご視聴いただきたいのですが、少しお伝えすると、『太平記』と「祇園精舎の鐘の声」で始まる『平家物語』を、原文をもとに対比してお話されています。『太平記』の序文がふまえている先行作品は『平家物語』とのこと。
そこで、ポイントとなる原文の箇所を挙げて二作品の関係性、違いなどを分かりやすく解説されているので、中学・高校時代に苦手意識を持っていた「古文」(原文)への関心が湧いてきたのです。

ということで、今後も収録後記をいろいろとお伝えしていこうと思います。お楽しみに。