編集長が語る!講義の見どころ
どうなる?どうする?少子化と人口減少/特集の講義を一挙紹介【テンミニッツTV】

2023/06/16

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

6月13日に「こども未来戦略方針」が閣議決定され、会見に臨んだ岸田文雄首相は少子化対策のラストチャンスだと強調しました。

少子化対策のメニューとして、「24年度にも児童手当を拡充し、所得制限を撤廃して高校卒業までに。第3子以降は高校生まで月3万円支給に増額」「出産費用の保険適用導入検討」「育休給付率の引き上げ」「こども誰でも通園制度(仮称)創設」などが挙げられました。

「これが異次元?」という声も聞こえてきますが、しかし少子化がきわめて重大な問題であることは、あらためていうまでもありません。小宮山宏座長も「少子高齢化といわれるけれども、長寿化は人類の夢であり悪いことではない。最大の課題は『少子化』だ」と指摘しています。

いったい、少子化と人口減少でどのようなことが起きるのか。対策としてどのようなことを本当は考えるべきなのか。

そのことに迫る特集です。

■特集:どうなる?どうする?少子化と人口減少

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=64&referer=push_mm_feat

・森田朗:日本の総人口は2080年まで減少が続く

・曽根泰教:的外れな少子化対策…男女共同参画や待機児童より非婚・晩婚

・小宮山宏:日本の課題は「少子高齢化」ではなく「少子化」

・長谷川眞理子:進化生物学から見る「母親の子殺し」の理由と歴史

・楠木建:「逆・タイムマシン経営論」は本質を見抜くための方法論


■講座のみどころ:様々な角度から「少子化問題」の本質に迫る

本日は、今回の特集に掲げた講義のポイントを一挙に紹介いたします。

【人口減少の驚くべきデータ(森田朗先生)】

特集の最初に紹介するのは、森田朗先生(東京大学名誉教授)が「少子化と人口減少の驚くべきデータ」について教えてくださった講義です。

日本の人口は1600年には1227万人でした。それが江戸時代に3倍近くになり、2010年に1億2806万人となりました。しかし、2010年をピークにして急速に人口が減少するということです。森田先生の資料のグラフを見ると、いかに急激な変化だったかがわかります。

このグラフを見れば、「従来の右肩上がりの発想を捨て、ダウンサイジングの考え方へと発想を切り替えることが重要」という森田先生のお話もうなずけます。

よくいわれるように、人口動向ほど確度の高い未来予想はありません。たとえば森田先生は、「老年人口は、2040年ぐらいまで増え続け、それからは老年人口が4割、生産年齢人口が5割、そして年少人口が1割という比率の状態でだんだん総人口が減ってくる」とおっしゃいますが、これがまず間違いなくやってくる「未来」なのです。

しかも、少子化対策がうまくいっても、すぐ人口が増えるわけではありません。そのことを人口ピラミッド図でわかりやすく教えてくださいますので、ぜひ講義本編でご覧ください。

さらに第3話の「世界との比較」もまことに興味深いデータです。とりわけ日本以上の規模とペースで少子高齢化がやってくる中国やインドのデータは注目です。

人口が増えていく時期は人口ボーナスがある。しかし減少していくときは「人口オーナス」の足かせとなる。その点について第4話で示される国際比較のデータも、様々なことを教えてくれます。

さらに地方の人口消滅と、大都市圏の高齢者激増など、日本の人口予想とそれに伴う社会問題の分析(第5~7話)もデータ満載で、とても考えさせられる問題提起です。

◆森田朗:人口減少と日本の未来(全7話)
(1)日本人口の歴史的推移と予測
日本の総人口は2080年まで減少が続く
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2255&referer=push_mm_rcm1


【見当違いな少子化対策…男女共同参画や待機児童より非婚・晩婚(曽根泰教先生)】

曽根泰教先生(慶應義塾大学名誉教授)が指摘されるのは、「日本のこれまでの少子化対策が見当違いだったのではないか」ということです。

これまで、日本では「男女共同参画」や「待機児童問題の解決」などが主たる少子化対策とされてきました。

日本で最初に少子化担当大臣(特命担当大臣・少子化対策担当)が任命されたのが2007年ですが、それから何らか大きな効果を挙げたでしょうか? 

曽根先生は、明確な非婚化、晩婚化が進んでいるデータを示しながら、こうおっしゃいます。

《もちろんすでに結婚している人にとっては、男女共同参画や待機児童対策があれば、もう少し子どもを産みやすい環境にはなります。しかし、そこに問題があったわけではありません。実は非婚化・晩婚化が大きな理由なのです》

まさに、ご指摘のとおりでしょう。

今般、岸田内閣で閣議決定された「こども未来戦略方針案」でも、前提の部分に「若い世代において、未婚化・晩婚化が進行しており、少子化の大きな要因の一つとなっていると指摘されている」とは書いてあるものの、その理由や対策として挙げられるのは、やはり男女共同参画の強化や、子育て支援の加速などが中心です。

もちろん、それらも重要な課題ですが、曽根先生が指摘されているように、もっと抜本的な研究や対策が必要なのかもしれません。

◆曽根泰教:第三次ベビーブームはなぜ起きなかったのか
的外れな少子化対策…男女共同参画や待機児童より非婚・晩婚
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1692&referer=push_mm_rcm2


【日本の課題は「少子高齢化」ではなく「少子化」(小宮山宏先生)】

小宮山宏先生は、日本は課題先進国であり、課題を解決すれば世界のモデルを示すことになると提起しつつ、こうおっしゃいます。

《やはり最大の課題は「少子化」です。「少子高齢化」といわれるけれども、みんなが長く生きたい、つまり人類の夢が実現したということであり、長寿化は悪いことではありません》

この捉え方は重要でしょう。たしかに「少子高齢化が課題」といわれると、高齢者が悪いように思えてきてしまいます。

そうではなく、少子化を解決するためにどうすればいいのか。小宮山先生は各地域に仕事をつくり、2カ所居住などを実現できるようにすること、子育て環境の整備、高齢者に仕事をつくる取り組みなどを提言されます。

それぞれ、どのようなことか、ぜひ講義をご覧ください。

◆小宮山宏:2019年頭所感(全2話)
(2)日本の少子化対策と地方活性化のために
日本の課題は「少子高齢化」ではなく「少子化」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2452&referer=push_mm_rcm3


【動物の子殺しから考える少子化対策の本質(長谷川眞理子先生)】

長谷川眞理子先生(元総合研究大学院大学長)は、最近話題になることが多い児童虐待について、進化生物学の視点からメスを入れます。

講義は、実は動物にも、自分の子を殺す例があるというショッキングな話から切り出されます。どのような状況において、動物は自分の子を殺すのか。

その事例検証から始まり、人間における「避妊」の影響、女性の社会進出の影響などを論じつつ、社会として、少子化問題にどのようなサポートをしていく必要があるかを問題提起していきます。

長谷川先生が問題提起されるのが、「子供の頃に、赤ちゃんや幼児と共に過ごす経験が不足しているのではないか」ということです。そうすると大人になったときに、なかなか子育てのスイッチが入らないというのですが……。

子育ての魅力や面白さを発信できていない社会の問題にも気づかされます。

◆長谷川眞理子:進化生物学から見た少子化問題(全5話)
(1)近代以前の嬰児殺
進化生物学から見る「母親の子殺し」の理由と歴史
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1619&referer=push_mm_rcm4


【長期的かつ根本的な視点の大切さ(楠木建先生)】

物事を考えるときには、長期的かつ根本的な視点を持つことが必須である。すべての人がそう思っているはずですが、しかし案外、とんでもないバイアスにとらわれていることがあるものです。

そのことに気づかせてくれるのが、楠木建先生(一橋大学大学院経営管理研究科国際企業戦略専攻特任教授)のこの講義です。楠木先生は、こう指摘されるのです。

《日本はずっと、人口さえ減れば全ての問題は解決すると言ってきた国だということです。そのためのソリューションとして、かなり昔は移民で、その後、GHQが入ってきて、産児制限をしました。

 その後も、受験戦争、交通戦争、住宅難、公害といった問題が続き、「こんな狭い国に、こんなに人がいて、どうするのだ」となった。つまり、人口増を克服するのが、つい最近まで日本の課題だったのに、この20年、特にここ15年間は、人口減が全ての諸悪の根源になった》

このご指摘は、とても重要でしょう。こうなると、このメールの最初にご紹介した、森田朗先生の「ダウンサイジングへの発想の転換」の重要性にあらためて気づかされます。

◆楠木建:「逆・タイムマシン経営論」で磨く経営センス(全3話)
(1)人口問題の本質
「逆・タイムマシン経営論」は本質を見抜くための方法論
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3742&referer=push_mm_rcm5


いかがでしたでしょうか。今回の特集も、ぜひ気になった講義からご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆特集:どうなる?どうする?少子化と人口減少
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=64&referer=push_mm_feat


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編集部#tanka
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世の中に不便だからこそ良き物の 数多(あまた)ありけり鏡見て笑む

川上浩司先生曰く、「毎週届くディアゴスティーニは、不便だから良い」。そんな例を色々聞くと、自分の人生も少しばかり救われた気がします(笑)。「不便益」の考え、素敵です。(達)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3968&referer=push_mm_tanka