編集長が語る!講義の見どころ
世界の神話の原点!メソポタミア神話を知る/鎌田東二先生【テンミニッツTV】

2023/06/20

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

世界の文明や文化について深く知ろうとする場合、それぞれの地域の神話を知ることは、非常に大切なこととなります。

世界の成り立ちをどのように考えたのか。人間はいかに誕生したとされるのか。どのような物語が語り継がれてきたのか。そこからどのような文化が生まれていったのか……。

テンミニッツTVでは、鎌田東二先生(京都大学名誉教授)による「神話講義」を配信しています。

世界神話を総覧しつつ日本神話と比較していく講義を配信した後、日本神話、ギリシア神話、ユダヤ神話と進んできましたが、いよいよ「メソポタミア神話」についての講義がスタートしました。

「メソポタミア神話? いったい??」。そんなふうに思われる方も多いかもしれません。あるいは『ギルガメッシュ叙事詩』という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれません。

しかし、メソポタミア神話は、「人類史上の神話的原点」でもあるのです。

なにしろ、文字として記録された最古級の神話です(教科書でも学んだように、粘土板に楔形文字で記されました)。そして実は、ユダヤ神話やギリシア神話など、各地の神話にも、非常に大きな影響を与えているのです。

では、どのような神話なのでしょうか。興味深い、最古級の神話の世界に迫っていきましょう。

◆鎌田東二:メソポタミア神話の基本を知る(全3話)
(1)メソポタミア神話の神々と人間との関係
メソポタミア神話は、ギリシア神話はじめ世界の神話の原点
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4964&referer=push_mm_rcm1

鎌田先生は、まず第1話の冒頭で、上記のようにメソポタミア神話が「人類史上の神話的原点」だとご説明くださったうえで、次のようにおっしゃいます。

《この影響力は非常に大きく、また、私たちが神話を理解するための重要な手がかりとなっています。それこそが、メソポタミア神話なのです》

では、具体的にはどのようなことなのでしょうか。鎌田先生はメソポタミアの創世神話について解説されたうえで、次のような事例をご紹介くださいます。

《日本では人間は神の子孫という考え方があります。ですから、天皇家の先祖にあたるのは天照大神(あまてらすおおみかみ)であり、藤原氏や中臣氏の先祖は天児屋命(あめのこやねのみこと)といったように、人間的世界と神話的世界の間に(もちろん世代交代はありますが)血のつながりという連続線があるわけです。

これに対して、メソポタミア神話は決定的に違っています。どこがどう違っているかというと、神様が人間を創造するのですが、人間を何のために創造したかというと、色々な伝承があるのですけれども共通していえるのは、「人間は神の身代わりであり、労働者である」ということです。

現代では、私たちはAIやロボットを使ったりする社会構造になっていますが、そのロボットに近いものとして、人間が創造されたのです》

神と人間が決定的に違う存在として描かれます。人間が非常に「差別的、格差的」に扱われているのです。

それは、王権を支えるためでした。王様は神と直結している。一方、統治される人民との間には明確な違いがある。そのような世界観が描かれたのです。

しかも、神々の世界でも、「政権交代」のようなものがあり、そのときには前に登場した神様を打ち倒していく物語になります。

このような世界観が、ユダヤ神話やギリシア神話に大きな影響を与えたというのは、鎌田先生による「ギリシア神話」「ユダヤ神話」の基本を知る講義を学ぶと、よくわかります。

もう1つ重要な点は、神話上の英雄ギルガメッシュが、森の神フンババを打ち破ることです。ギルガメッシュは、神の血を引いているけれども、同時に人間でもある存在です。その英雄が森の神を殺し、都市文明を築いていくのです。

そのギルガメッシュが「不死」を求める話も、神話には登場します。メソポタミア神話では、神は死なないけれども、人間は死ぬ。3分の2が神で、3分の1が人間であるギルガメッシュは死んでしまう存在です。

それゆえギルガメッシュは、不老長寿の薬を探し求めます。その結果は……。ぜひ講義の第2話をご覧ください。

第3話では、メソポタミア神話に描かれる「大洪水神話」が紹介されます。いうまでもなく、これが『旧約聖書』の「ノアの箱舟」の話にも大きな影響を与えています。

この大洪水神話がどのようなもので、いかにユダヤ神話に受け継がれていったかは、ぜひ第3話をご参照ください。

もちろん、神話には「お酒」などの文化も描かれます。メソポタミア神話に登場するのは、ビールです。まさに現在の人間の信仰や思想、そして行動の原型にもなるものが、そこには描かれていたのです。

人間の文化や文明について、深い視点から考えることができる入門講座です。ぜひご覧ください。


◆鎌田東二:メソポタミア神話の基本を知る(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4964&referer=push_mm_rcm2


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編集部#tanka
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核兵器を握りて花をいしぶみに 首脳ら捧ぐ美しき花を

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https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4955&referer=push_mm_tanka


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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて、今年2023年も6月後半となりまして、もうすぐ折り返し地点です。今回は、今年人気の高い講義を以下、紹介いたします。

なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子(公益財団法人東洋文庫研究員)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4749&referer=push_mm_edt

こちらは、シリーズ講義〈モンゴル帝国の世界史〉(全7話)の第1話「日本の世界史教育の大問題」ですが、宮脇先生の講義はシリーズを通して非常に人気が高いので、続けて視聴いただくと満足度はより高くなると思います。
それは内容はもちろんのこと、宮脇先生の話っぷりがいいので、聴いていてグイグイ引き込まれるからではないでしょうか。まだこれからという方はぜひご視聴ください。