編集長が語る!講義の見どころ
古典と歴史に学ぶリーダーの極意/特集の講義を一挙紹介【テンミニッツTV】
2023/06/30
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
リーダーや補佐役のあり方一つで、国家から小さな組織まで、その命運は大きく左右されます。
上の立場であっても、下から支える立場であっても、日々、多くの悩みに直面するものです。進むべき道が見つからない。思いが伝わらない。自分では「うまくいった」と思っていたのに、逆の見方をされてしまう。空回りをしてしまう。なんとなくギクシャクしてしまう。しっくりこない。
そのようなとき、とりわけ古典の名著や、歴史的事実をひもとくことで、自分では気づけなかった大切なヒントを得ることができます。
そのようなヒント満載の名講義を4つピックアップしました。先生方の珠玉の講義が、胸に響きます。
■特集:古典と歴史に学ぶリーダーの極意
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=10&referer=push_mm_feat
・田口佳史:部下を育てるには、まず佐藤一斎に学べ!
・田口佳史:北条政子も愛読した長期政権のバイブル『貞観政要』
・楠木建:「逆・タイムマシン経営論」は本質を見抜くための方法論
・小和田哲男:織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
■講座のみどころ:
本日も、今回の特集に掲げた講義のポイントを一挙に紹介いたします。
【佐藤一斎の日本人必読の「心得」を現代的に読み解く(田口佳史先生)】
最初に紹介するのは、江戸儒学の精華ともいうべき佐藤一斎の「重職心得箇条」を、田口佳史先生(東洋思想研究者)に読み解いていただいた珠玉の講座です。
佐藤一斎といえば、その著『言志四録』でご存じの方もいらっしゃるかもしれません。安永元年(1772年)に江戸の岩村藩邸で、佐藤家の次男として生まれます。佐藤家は岩村藩(現在の岐阜県恵那市岩村町)の家老を務める家柄でした。
文化2年(1805年)に昌平坂学問所の塾長に、天保12年(1841年)には儒官(総長)となり、多くの門弟を指導します。
その弟子には山田方谷、佐久間象山、横井小楠、渡辺崋山、安積艮斎、中村正直、大橋訥菴ら、錚々たる名が並びます。西郷隆盛はじめ、多くの幕末人が座右の書としていたことも有名でしょう。
その佐藤一斎が、文政9年(1826年)に岩村藩主となった松平乗美(のりよし)を支える重臣のための「心得」として執筆したものが「重職心得箇条」です。
田口先生は、その「重職心得箇条」を、現代的な見地も交えながら、とても生き生きと解説してくださいます。まさに目からウロコの講義です。どのような内容か、まず、講座全体の各話のタイトルを紹介いたしましょう。
(1)時代に請われ、時代に応えた佐藤一斎
――部下を育てるには、まず佐藤一斎に学べ!
(2)一途と覚悟で道を究める
――自己鍛錬を目指す人に知ってほしい数々の名言
(3)覚悟と対応力
――「重職」とは「とんでもないこと担当」のこと?!
(4)重みの要
――「威厳がない上司」のもたらす害は「老害」どころじゃない
(5)大臣の心得
――「死ぬ気で考えろ!」と言ってくるオニ上司のありがたさ
(6)部下を使う要点
――部下にノリノリで仕事をさせる、一斎流リーダーシップ
(7)守るべきもの・変えるべきもの
――守るべき核があれば、臨機応変に変わってもいける
(8)リーダーの条件は「機」を読む想像力
――「秒に生きて思考する人」こそがリーダーの定義だ!
(9)常日頃の心得がリーダーをつくる
――優れたリーダーは、森と木、両方を見る「活眼」を持つ
(10)職責と職権の関係を心得よ
――リーダーたるもの「忙しい、忙しい」は恥ずべき禁句
(11)日々の送り方がリーダーをつくる
――「人を容るゝ気象」と「物を蓄る器量」が誠の大臣の体
(12)「虚懐転化」と「抑揚之勢」
――政治でも経営でも、大切なのは「ドライブ」感覚?
(13)「実政」と「虚政」
――シンプルな手順こそ、仕事の加速力を倍加する
(14)社風と秘密
――トップの顔色と会社の雰囲気は、社風を測るバロメーター
(15)現代の経営管理にも通じる教え
――「17条の経営憲法」を実践し、重職の責務を全うせよ!
たとえば、講座の第6話では「部下を使う要点」が語られますが、その箇所の佐藤一斎の原文は以下のようなものです(第2条の一部分です)。
《もし有司の了簡より一層能き了簡有りとも、さして害なき事は、有司の議を用ひるにしかず。有司を引立て、気乗り能き様に駆使する事、要務にて候》
この文章を、田口先生は以下のように読み解かれます。
《目の前の案件に対する腹案が自分にあっても、部下に「君たちはどうだい」と聞いてみる。自分の案よりは多少落ちるとはいえ、部下が考えてきたものを採用して実施しても、そう大した害や差はないと考えられる場合は、自分の考えは引っ込め、部下の意見を「A君、君の考えはなかなかいいじゃないか」と取り入れる。
もし、「こんな意見やアイデアしか出せないなんて、君たちは駄目だな。私はこう考えてきたよ。このぐらいの考えは持たなければ駄目じゃないか」という具合に解決したら、部下は表面は「ははーっ」となりますが、心の中では「なんてつまらない上司だろう」と思いかねない。
部下を引き立てて、気乗りよくさせてやる。気乗りがいいかどうかは、その仕事に対する士気に関わる。ファイト満々、「大いにやります!」というのと、渋々やるというのでは、結果にも響きます》
以上のように田口先生にご解説いただくと、人間心理の機微と物事の核心をついた佐藤一斎の名言が、心にスッと染み渡っていきます。
東洋思想に立脚し、日本人の性情にも合致した佐藤一斎の教えは、われわれの心の深くに響きます。わが身を省みるのに、これほど最適な講座はありません。このような解説が全17条にわたって展開される本講座、まさに必見です。
◆田口佳史:重職心得箇条~管理職は何をなすべきか(全15話)
(1)時代に請われ、時代に応えた佐藤一斎
部下を育てるには、まず佐藤一斎に学べ!
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1235&referer=push_mm_rcm1
【リーダー論の不朽の名著『貞観政要』を読み解く(田口佳史先生)】
次に紹介するのは、『東洋思想』のリーダー論の必読の名著『貞観政要』について田口佳史先生(東洋思想研究家)が解説してくださった講義です。
『貞観政要』は、なぜリーダー論の不朽の名著と呼ばれるのか。それはこの書が、中国古典のエッセンスを、実例に即してわかりやすく集約した本だからです。
そもそも『貞観政要』は、「貞観の治」と呼ばれる中国屈指の善政を行なった唐の太宗(李世民)の逸話を集めた書です。唐の太宗は自分に諫言してくれる側近を置いており、その側近たちは太宗にリーダーのあり方を示すため、様々な漢籍の古典や歴史を引用し、わかりやすく説いていました。
なぜ側近たちは、古典や歴史を引用して諫めたのか。それは、君主に説くのに、「古典」に語らせれば角が立たないからです。
そのやり取りや事績が収録されていますので、本書を読めば、太宗の具体的なエピソードを通して、それまでの中国古典が説いてきた「リーダーの心得」を実践的に学べるのです。
田口先生の講義は、実践的でとてもわかりやすく、単なる「本読み」には終わりません。原文の名句を読み解きつつ、もう一方で具体的な事例を差し挟んでご説明くださるので、本当によくわかります。
講座全体でどのようなことが語られるのか。全15話のタイトルを見ていただければ、イメージが湧くはずです。最初からでも、気になったところからでも、自分自身の興味に基づいて学んでいただければ幸いです。
◆田口佳史:『貞観政要』を読む(全15話)
(1)長期政権を目指す者の必読書
北条政子も愛読した長期政権のバイブル『貞観政要』
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1467&referer=push_mm_rcm2
【「逆・タイムマシン」で時流の本質を見抜く(楠木建先生)】
どうすれば、正しい判断基軸を持てるのか。それを考えるうえで、とても参考になる「発想法」について、楠木建先生(一橋大学大学院経営管理研究科国際企業戦略専攻教授)が講義くださっています。
楠木先生が説く「逆・タイムマシン経営論」は、「過去の経済雑誌や新聞などの記事を振り返り、近過去にさかのぼって読んでみる。すると、同時代のいろいろなノイズがないため、本質的な論理が非常に鮮明に見える」というものです。
楠木先生が一例として挙げるのが「人口問題」です。
かつて、受験戦争、交通戦争、住宅難、公害などが噴出していた日本では、「こんな狭い国に、こんなに人がいて、どうするのだ」と、人口が増えてしまうことが諸悪の根源のように考えられていました。
しかし、今では「人口減」こそが諸悪の根源のように思われています。
これは「同時代性の罠だ」と、楠木先生はおっしゃいます。
社会全体が、「これこそが問題だ」と口を揃えるなかでは、それが問題の核心だと思ってしまいます。しかし、リーダーたる者、みんなが「寒い、寒い」といっているときには、「いや、少なくとも暑くないじゃないか」というべきではないか。
それが楠木先生の視点です。このリーダー論は、まことに興味深いものといえましょう。
さらに楠木先生は、「1人当たりのGDP」の例も出します。日本は1980年代末には、1人当たりGDPで世界第2位でした。しかし、その当時の経済雑誌の記事を読んでも、「日本は危機だ」「日本はダメだ」という人たちばかり……。
なぜ、悲観論ばかり噴出するのか。その動機について、楠木先生は興味深い視点を提示されます。
「会社が悪い」とか「経営が悪い」というと、「お前が悪いんじゃないか」といわれて自責の問題になってしまう。しかし、「日本はダメだ」といっておけば、自分の責任にはならない。だからこそ「究極の他責」として、犯人を「日本」にしてしまい、自分の責任を棚に上げる……。
「ハッピーエンドから説き起こしていったストーリーが、今の日本では強く求められている」。楠木先生は、そうおっしゃいます。
たしかに、明治期や戦後期は、現在とは比べものにならないほど条件が悪かったはずですが、当時のリーダーたちはハッピーエンドの夢を語り、人々を叱咤激励して、日本を高みへと導いていきました。
しかし、現代の日本人は、「究極の他責」に逃げ込み、できない言い訳ばかりを重ねて、どんどん日本を弱くしてしまっているのかもしれません。
まさに深く考えるべき問題点でしょう。とかく、浮ついた議論や責任転嫁の議論に陥りがちな現代日本人にとって、必見の講義です。
◆楠木建:「逆・タイムマシン経営論」で磨く経営センス(全3話)
(1)人口問題の本質
「逆・タイムマシン経営論」は本質を見抜くための方法論
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3742&referer=push_mm_rcm3
【豊臣政権の成功と失敗に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(小和田哲男先生)】
リーダーと補佐役の関係、さらに組織の統合と内紛……。このあたりの問題は、組織人であるならば必ずや直面するものではないでしょうか。
その点について、小和田哲男先生(静岡大学名誉教授)に豊臣秀吉家臣団を事例としながら、この問題を読み解いていただいた講義を紹介いたします。
秀吉といえば、名補佐役の弟・秀長の存在が有名です。その秀長の死後に、補佐役的な立場に立ったのが石田三成でした。
秀吉が農民から天下人へと一気に駆けのぼり、わずか2代で滅びてしまったのは、なぜなのか。同時代の徳川家、北条家などとの比較から見えてくるものとは何か。そのようなことを、小和田先生はとてもわかりやすくご解説くださいます。
小和田先生はまず、秀吉の成功の要因からお話しくださいます。
秀吉は自分自身でちょこまかと動くプレイングマネージャーで、走りながら考えるタイプ。しかも、織田信長という実力主義の主君に仕えていましたから、いかに信長から目に留まるようにするか、自分の働きで目いっぱい。上を見て仕事をしていたといっても過言ではないでしょう。
そのような人物は、得てして足元への目配りが足りなくなるものです。しかし、そのような目配りを、しっかりと行っていたのが、秀吉の弟・秀長でした。秀吉とは違って、じっくり考えてから動くようなタイプでした。違う人間性の組み合わせとして、非常にうまくいったのです。
ところが秀長は、ちょうど秀吉が全国統一を成し遂げるタイミングで死んでしまいます。それによってベストバランスが崩れます。ブレーキ役兼ナビゲーター役がいなくなってしまったので、豊臣政権の暴走が始まってしまうのです。
その後、補佐役的な立場に就いたのが石田三成です。
しかし、秀長死後の豊臣政権では、千利休の切腹や、関白を譲った豊臣秀次の粛清など、内紛が続いていきます。さらに朝鮮出兵では、朝鮮に派遣された武功派の武将たちと、日本に残った石田三成とで決定的な対立関係に陥ってしまいます。
豊臣秀長にできて、石田三成にできなかったこととは何なのか。
「秀長があと10年生きていたら」。その小和田先生の言葉が、心に迫ります。補佐役の重要性、リーダーとして必須の役割、組織運営の妙味などについて、とても多くのことを学べる講義です。
◆小和田哲男:豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(全5話)
(1)話し上手な天下人
織田信長が高く評価した秀吉の二つの才覚
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3956&referer=push_mm_rcm4
いかがでしょうか? ぜひ気になった講義からご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆特集:古典と歴史に学ぶリーダーの極意
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=10&referer=push_mm_feat
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編集部#tanka
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https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4777&referer=push_mm_tanka
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