編集長が語る!講義の見どころ
続!ぜひ知っておくべき「自由主義」/特集&柿埜真吾先生【テンミニッツTV】

2023/07/21

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

失ってはじめて、しみじみ「大切さ」が痛感されるものがあります。現代日本人にとって「自由」は、その最たるものではないでしょうか。

4月末にも、「自由主義」特集を紹介いたしました。「自由主義」というテーマにもかかわらず、おかげさまで大変に数多くの皆さまのご視聴をいただきました。

その折、巻頭講義として掲げた柿埜真吾先生の《日本人が知らない自由主義の歴史》の後編が、いよいよ配信スタートとなりました。本日はそれを機に、再度、「自由主義」特集を掲出いたします。

柿埜真吾先生の《日本人が知らない自由主義の歴史・前編(全7話)》は、ホッブズ、ロック、アダム・スミスからミル、さらにニューリベラリズムの潮流までを描きました。

最初は危険思想と思われてさえいた「自由主義」が、いかに理論として確立していって、社会の発展と繁栄を導き出したか。しかし、それがだんだんと本来のあり方から介入主義的な「大きな政府」へと変容していったかが、手に取るようにわかります。

後編は、いよいよ現代的な「自由主義」の課題に、深く迫っていきます。

■本日開始の特集:「自由」とはいったい何か?

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=199&referer=push_mm_feat

・柿埜真吾:ハーバート・スペンサーとダイシー…20世紀の危機の予言者

・柿埜真吾:消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか

・川出良枝:モンテスキューとルソー…二人の思想家の共通の敵とは?

・本村凌二:独裁・共和政・民主政――繰り返されてきた世界の歴史

・中島隆博:20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」

・橋爪大三郎:法の支配があるから自由がある…信仰の自由と政治の基本

・納富信留:僭主制が一番いい?欲望の奴隷になるのが本当に幸せですか

・小原雅博:国際政治を理解するために知っておくべき「3つの危機」

・津崎良典×五十嵐沙千子:「リベラル・アーツ」と「自由」の関係を歴史的に振り返る

・田村潤:「自由」がないと「行動する勇気」はわいてこない


■講座のみどころ:日本人が知らない自由主義の歴史~後編

本日は特集のなかから、上述のように柿埜真吾先生の講義を紹介いたします。

◆柿埜真吾:日本人が知らない自由主義の歴史~後編(全14話)
(1)ニューリベラリズムへの異議
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4996&referer=push_mm_rcm1

第1話は、「前編」の後半に現われた「ニューリベラリズム」を鋭く批判したスペンサーとダイシーに光を当てます。

当初、自由主義は「専制的な政府」に対して、その介入に反抗する色彩の強いものでした。「権力は腐敗する」と強調し、政府による介入に「NO」を突きつけたのです。

しかし、ニューリベラリズムになると、それが変わってきます。

専制的な政府が覆され、議会政治が行なわれる世になると「国民に選ばれている代表が政治をするようになったのだから、政府に権限を与えてもよいのではないか。福祉のために行動しているのなら何を行なってもいいのではないか」という発想になっていくのです。

もちろん、至極もっともな考え方ではあります。しかし、「それは危ないのではないか」と警鐘を鳴らした自由主義の思想家がいたのです。それが19世紀後半のハーバート・スペンサーとダイシーでした。

彼らは、その当時は「反動的な思想」だと思われていました。しかし、彼らの「絶対主義的な専制国家が現れる」という予見は、不幸にも20世紀に実現してしまうことになるのです。

続いて見ていくのは、ミーゼス、ハイエクなどオーストリア学派の思想です。彼らは、社会主義計画経済が必ずうまくいかないこと、さらに必ずひどい独裁国家になることを論じました。

計画経済は、必然的に強力な中央集権国家にならざるをえない。とはいえ中央集権にしたところで、自由な市場機能でやりとりされる暗黙のうちの膨大な情報処理を担うことはできない。むしろそのあまりに強大な権力をめざして、最悪の野心家がうごめき、抑圧的な国家にならざるをえない。そう喝破したのです。

この主張の正しさも歴史の流れのなかで証明されることになります。

そのミーゼスやハイエクも参加して開かれたのが、1938年のリップマン・シンポジウム、そして1946年のモンペルラン会議でした。ファシズムが猛威を振るい、その後、スターリニズムが世界の半分を席捲(せっけん)していく時期に開かれたものです。

彼らは、「自由放任でも国家主義でもないバランスのとれた場所があるはずだ」と論陣を張ります。彼らの主張は、大きな政府による介入主義的な「ニューリベラリズム」に対して、「ネオリベラリズム」と称されるようになります(ミーゼスやハイエクたち自身は、「自分たちは本来のリベラリストだ」と考えて、ネオリベラルという言葉は好まなかったようですが)。

彼らは、自由な競争を守るための政府介入(独占禁止など)はすべきだと主張していましたが、企業の国有化や計画経済的なあり方は間違っていると考えていました。そのようなネオリベラリズムの思想に基づいて戦後復興を果たしたのが、西ドイツやイタリアでした。

ネオリベラリズムというと、現在では「新自由主義」というイメージで、市場経済万能主義・競争至上主義のようにとらえられがちですが、本来的にはまったく違う「中庸の思想」なのです。

さて、最近では「リバタリアニズム」という言葉を聞くこともあります。多くの日本人には、あまりピンとこない言葉かもしれません。

リバタリアニズムというのは、アメリカで生まれた言葉です。アメリカでは「リベラル」というと、すっかり左派色の強い言葉になってしまいました。政府介入を是とするニューリベラリズムの流れのなかで、社会主義とほぼ同じような色彩を帯びるようになってしまったのです。

このような「リベラル」に対して、本来の古典的な自由主義を主張したい人たちが「リバタリアニズム」という言葉を用いるようになるのです。古典的自由主義を継承し、個人の自由を何よりも大事にする思想です。

柿埜先生は、このリバタリアニズムについて、ノラン・チャートという図を用いてご解説くださいます。考え方がとても整理されますので、ぜひ講義本編でご覧ください。

この講義シリーズの後半は「文献編」です。

ニューリベラリズムの古典ともいうべきロールズの『正義論』。
社会主義や全体主義の危険性を説いたハイエクの『隷従への道』。
経済的自由の優位性と採るべき政策を論じたフリードマンの『資本主義と自由』。
ロールズを批判したノージックの『アナーキー、国家、ユートピア』。

それぞれの内容をわかりやすく解説いただきますが、これについては、またあらためて紹介いたしましょう。

20世紀から現在までの流れを大局的に見通せるようになり、自分の頭の中に明確な座標軸を打ち立てることができる講義です。ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆特集:「自由」とはいったい何か?
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=199&referer=push_mm_feat

◆柿埜真吾:日本人が知らない自由主義の歴史~後編(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4996&referer=push_mm_rcm2


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編集部#tanka
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哀しくもお金が絡むと目が曇り だから知りたい「お金の教養」

三井住友銀行で市場取引に携わり、30年以上、金融の動向を見てきた養田功一郎氏が「資産運用の思考プロセス」を開陳。短・中・長期を連関させる大局的なお金の教養が学べます。(達)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4974&referer=push_mm_tanka