編集長が語る!講義の見どころ
驚くべき「脳」の正体/特集&毛内拡先生【テンミニッツTV】
2023/07/28
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です
「脳」とは、いかなるものか。脳はとても複雑で、心、身体、つまり健康や行動にも影響を及ぼすため、「脳科学」の知見が医学だけではなく教育や経済学にも応用されています。
今回は、「脳」の正体に多角的に迫る講義をピックアップ。不思議な脳の奥深くを探ります。
■本日開始の特集:驚くべき「脳」の正体
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=97&referer=push_mm_feat
・毛内拡:脳が生きている、死んでいるとは?最新研究で迫る脳の秘密
・長谷川眞理子:「心と感情」とは何か、行動生態学から考える大事な問題
・堀江重郎:「脳の性分化」に作用~男性ホルモンの特徴と多彩な役割
・尾崎紀夫:なぜ睡眠は生きるために必要?脳にある覚醒中枢と睡眠中枢
・遠藤英俊:多くの認知症の原因は「脳のゴミ」の蓄積
・西野精治:「眠育」のすすめ~睡眠不足は子どもの脳の発達にも悪影響
・森口佑介:青年期の暴走には脳の変化と感情面の実行機能に関係がある
・川合伸幸:脳が身体の状態にだまされて怒りが弱まることがある
■講座のみどころ:知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線
本日は特集から、毛内拡先生(お茶の水女子大学基幹研究院自然科学系助教)の講義を紹介いたします。
毛内先生は、第37回講談社科学出版賞を受賞した『脳を司る脳』(講談社ブルーバックス)をはじめ、数多くの一般の方々向けの本を書いておられます。
◆毛内拡:知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線(全8話)
(1)脳科学と「ミクロのマクロの隔たり」
脳が生きている、死んでいるとは?最新研究で迫る脳の秘密
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4977&referer=push_mm_rcm1
毛内先生はご自身の専門について、次のように語ります。
《私の専門は神経生理学なのですが、平たくいうと、「脳科学」です。皆さんがご想像する脳科学というのは、心理学とか行動学みたいなものだと思うのですが、私がやっているのは脳細胞とか脳内物質とか、より細かいことで、どちらかというと脳のハードウエアとしての側面について研究を行っています。私はむしろ脳細胞とか脳内物質がどのように心の働きを生み出すのかということを知りたくて研究をしています》
その毛内先生が、脳科学の基本的な知見から、最新の研究成果までをご紹介くださるのが、今回の講座です。
まず毛内先生は、第1話で最新の驚くべき研究の数々をご紹介くださいます。
1つは、死んだブタの脳を体外で数時間生存させることに成功したという実験。
もう1つは、実験室で培養して人工的に作った脳(ミニブレイン)にコンピュータのピンポンゲームをやらせたら、うまく学習してできるようになった、という実験です。
前者は、「食肉加工場で拾ってきたブタの脳をある特殊な溶液に浸したところ、また生き返った」という話です。脳細胞が活動を始めたというのですが、毛内先生はこうおっしゃいます。
《これまで死んでしまったものは生き返らないと思っていた脳がまた生き返るかもしれないと思うと、脳死すら不可逆的な死ではないのではないかという可能性があります》
脳がどのような活動をしているかは、脳波を測ることで、ある程度知ることができます。そのため、アメリカのニューラリンクという企業(テスラやスペースXを率いるイーロン・マスク氏が立ち上げた会社)が、髪の毛よりも細いワイヤーを何万本も脳に埋め込んで、脳の電気活動をすべて測るプロジェクトを進めています。
このニューラリンクの当面の目標は、身体が不自由な人が脳波で車いすを動かしたり、会話ができない人が脳波で意思疎通をしたりということ。さらに最終的には、記憶をバックアップして永遠に生き永らえることを目標にしているというのですが……。
しかし、毛内先生は次のように指摘されます。
《電気活動では理解できない脳活動が、むしろ、心の働きとか高次の精神活動に重要な働きをしているという考え方もあります。これは、例えば、ニューロンの速い電気活動に比べると遅くて調節的ではあり、むしろデジタルというよりはアナログ的な調節ではあるのですが、こちらのほうが人間らしさというものにとって大事なのではないかと考えて研究をしています》
このようなことを第1話でご解説くださったうえで、第2話からは脳研究の歴史を教えてくださいます。
実は古代エジプト時代から、脳障害がある人の行動がどのように変化するかの観察されており、その記録が残されているといいます。しかし長年、脳がどのような働きする場所かは謎でした。なんと1800年代の後半くらいまで、脳は単に血液を冷やす場所だろうと考えられてもいたといいます。
しかし1848年、アメリカの鉄道現場で事故があり、3メートルほどの鉄棒が、フィニアス・ゲージという人物の左目を突き破って脳の前頭葉を破壊してしまう事故が発生します。幸いに命は取り留めたものの、彼の性格は一変してしまいます。
この事故をきっかけに、脳の役割が少しずつ解明されていくことになります。
その後、どのような実験や研究が行なわれ、何がわかったか……などは、ここで説明するよりも、講義本編でイラストなどとともに解説いただいているのを見たほうが、はるかに理解が深まることでしょう。ぜひ第2話以降をご覧ください。
第4話は、ヒトの脳と動物の脳を写真で比べながら、脳の構造を解説し、どのような違いがあるのかを見ていきます。実は、「脳のしわが多いと頭がいい」は誤解だそうです。
第5話は、脳内で電気信号を科学信号に置き換えて情報伝達の役割を果たしていくニューロンについて解説します。
ニューロンがシナプス伝達によって情報伝達するのは「一対一のコミュニケーション」ですが、脳内では、「一対多」「多対多」の情報伝達の仕組みもあります。第6話以降は、それらの説明となります。
ノルアドレナリン、セロトニン、ドーパミン、アセチルコリンなどの神経修飾物質の名前をお聞きになったことがある方も多いと思いますが、そのようなものがどのように働くのかがわかります。
第7話は、脳がいかに老廃物を排出しているかについて。「アミロイドβ」というタンパク質が異常に蓄積するとアルツハイマー病の原因になるのではないかといわれますが、この排出の仕組みなども知ることができます。
第8話では、「頭が良い人ほど、脳がスカスカしている」という興味深い問題提起がなされます。その大きなカギとなるのが「アストロサイト」だといいます。
実は、ヒトのアストロサイトをマウスの脳の中に移植したところ、通常のマウスと比べて約2.5倍、学習にかかる効率が良くなったといわれます。
では、そのアストロサイトを活性化させるにはどうすればいいか……については、ぜひ講義本編をご参照ください。
様々な角度から、「脳」について学ぶことができる講義です。資料や写真などを数多く用いながらわかりやすくご解説いただいていますので、ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆特集:驚くべき「脳」の正体
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=97&referer=push_mm_feat
◆毛内拡:知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4977&referer=push_mm_rcm2
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編集部#tanka
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https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4726&referer=push_mm_tanka
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