編集長が語る!講義の見どころ
江戸とローマのトイレ事情~下水道と肥溜め/本村凌二先生【テンミニッツTV】

2023/08/29

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

尾籠(びろう)な話ではありますが、人間が日々の生活を営み、食文化をはじめ様々な文化を堪能した帰結としての「排泄物」をどうするかの問題は、人間の幸福度を大きく左右する問題です。

人間1人あたり、1日に「大」をおよそ200グラム、「小」を1~2リットル排泄するといいます。

ということは、100万人都市であれば、「大」が1日に200トン、1年で7万トン以上。「小」が1日に100万~200万リットル、1年では……。

さあ、これをどうするか。この点でも、江戸とローマではさまざまな工夫が重ねられていました。本日は、そのことを楽しくご解説いただいた本村凌二先生の講義《江戸とローマ~下水道と肥溜め》編を紹介いたします。

◆本村凌二:江戸とローマ~下水道と肥溜め(全3話)
(1)日本人の清潔感と肥溜め
江戸の下水道は世界一!? 欧米が驚いた「日本の肥溜め」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5037&referer=push_mm_rcm1

本村先生はヨーロッパに足を運ばれた経験も豊富なだけに、まず、ヨーロッパのトイレ事情をお話しくださいます。

トイレの後で手を洗っているか否か、下水が整備される以前の集合住宅(アパート)のトイレ事情。パリの下水道が整備されたのは、ナポレオン3世の時代(19世紀後半)……。

このあたりのことは、ぜひ第1話でご覧ください。これらの諸事情と、日本の常識との乖離(かいり)は、やはり衝撃的でさえあります。

それに対して、江戸時代の日本では大都市でも地方でも「肥溜め」が設けられ、溜められたものが「肥料」として活用される循環ができていました。

さらに日本の場合、糞尿を買い取ってもらえることがこの循環を支えていました。第2話でも紹介していますが、『江戸の卵は1個400円』(丸田勲著、光文社新書)によれば、10世帯程度の長屋の場合、その糞尿を得ることで、大家は年間2両くらいの収入になったといいます。貨幣価値は時期によって異なりますが、25万円くらいになるとのこと。

これは長屋の一部屋の年間の賃料に相当する金額でした。これは、なかなかバカにできない金額です。循環の仕組みが成立するためには、やはり「メリット」がどのように成立しているかが重要になることを、あらためて実感させられます。

古代ローマでも、ある程度のものは集めて肥料として使うシステムはありましたが、かなりのものは川に流されていた。そのため、紀元2世紀ごろの医学者ガレノスの言葉に「テベレ川の川魚を食べるな」というものがあるそうです。

テベレ川はローマ市内を流れる川ですが、医学者であるガレノスのこの言葉が何を意味しているかは、あらためていうまでもないでしょう。

また皇帝ウェスパシアヌス(西暦9年~79年)は、公衆便所を整備し、そこで集まったものを肥料として使って、けっこうなお金を集めていました。冗談半分に「お金が儲かっていますね」と批判されたとき、ウェスパシアヌスはお金を出して「どうだ、臭うか?」といったという話が伝わっているとのこと。

江戸もローマも、上水・下水ともに「清潔」ということが重視されていました。その「清潔感の重視」は、たとえば身だしなみなどにも反映していきます。そのようなことが、様々な習慣やジョークに残されているといいますが、それはぜひ講義第3話をご覧ください。

トイレ事情の話は、誰にも関わる問題だからこそ、知っておくと、ちょっとしたときに話のネタにもなりやすいものです。人間の生活にも直結するテーマでもあります。ぜひ江戸とローマの知恵を学んでみてはいかがでしょうか。


(※アドレス再掲)
◆本村凌二:江戸とローマ~下水道と肥溜め(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5037&referer=push_mm_rcm2


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編集部#tanka
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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて、残暑厳しい今日この頃ですが、8月も本日をあわせてあと3日となりました。9月からは新シリーズ講義が続々と配信開始となる予定です。
現在、それに向けて編集の最終段階というものもありますので、ここではそのテーマを少しだけお伝えできればと思います。

クライン『ショック・ドクトリン』の真実
『江戸名所図会』で歩く江戸・東京
インド神話の基本を知る

このほかにも、50年ぶりの円安をもとに円の価値や為替レートについて解説した講義や、ChatGPTや生成AIの話題をもとに「AIは社会をどう変えるか」というテーマで解説した講義の配信を予定しています。ということで、まさに見逃せない講義が目白押しです。9月のテンミニッツTVも引き続きお楽しみください。

なお、今後の配信予定(毎月1日、15日頃更新)は以下より確認できます。

https://10mtv.jp/pc/content/release_schedule.php?referer=push_mm_new_function