編集長が語る!講義の見どころ
日本人のルーツを核DNAからさぐる/斎藤成也先生(テンミニッツTVメルマガ)

2020/09/22

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
昨日は「敬老の日」でしたが、折にふれ自分のルーツを意識するのは、とても大切なことです。さらにいえば、そのルーツを太古にまでさかのぼるのは、知的にも極めて興味をそそられます。

皆さんご存じのように、人類はアフリカで誕生し、そこから世界に広がっていきました。とすれば、日本人のDNAは、日本と距離的に近い国々と類似しているのでしょうか?

実は、一概にそうともいえないようなのです。最近、DNA研究が進み、いろいろなことがわかるようになってきました。本日は、そのことを斎藤成也先生(国立遺伝学研究所集団遺伝研究室教授)にお話しいただいた講義をご紹介します。

◆斎藤成也:核DNAからさぐる日本のルーツ(全11話)
(1)人類の起源と広がり
人類の祖先による「出アフリカ」は3回あった
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2553&referer=push_mm_rcm1

冒頭でも書いたように、人類はアフリカで誕生し、世界に広がっていきました。しかし、われわれの直接の祖先である「新人」がアフリカから出る前に、旧人(ネアンデルタール人)や原人がアフリカから世界に出て行きました。

実はわれわれ人類は、世界に広がっていく過程で、遺伝子的に変異していくとともに、旧人との混血も進めていきました。ネアンデルタール人の遺跡は、西ユーラシアに偏っていますが、不思議なことにゲノム的に見ると、むしろ東ユーラシアの人間のほうが、ネアンデルタール人のゲノムを少し多めにもらっているといいます。

そして日本には、北から南まで、いろいろな方面から人類がやってきました。加えて、日本が早い段階で島国になりました。これらのことが、日本と近隣のアジア諸国との違いをつくっていったようです。

たとえば、縄文人から現代日本人に12パーセントのDNAが伝わっていると推定されるとのこと。実は縄文人は系統的にはかなり古く、分岐したのは最低でも2万年前、もっと古い場合、4万年ぐらい前かもしれないこともわかりました。

人類発祥の地であるアフリカ、さらに西ユーラシア、東ユーラシアのそれぞれに住む人を調べると、もちろん大きく異なりますが、縄文人はやはり東ユーラシア人に近いところには位置づけられます。しかし、そうはいいながら、東ユーラシア人と比べても明らかな違いがあるのです。

加えていえば、現代の日本人(斎藤先生によればヤマト人)は、東ユーラシアの人たちから、DNA的には少し離れたところに位置しています。どちらかといえば、より縄文人に近くなっているのです。つまりこれは二重構造モデル、すなわちヤマト人が土着の縄文人のDNAを残しつつ、大陸からの人々の混血を受け入れたことを明らかに示していると、斎藤先生はおっしゃいます。

また縄文人は、明らかにオキナワ人よりアイヌ人に近く、一方、オキナワ人はヤマト人のほうに近い。さらに見ていくと、東北は、北海道よりも沖縄と類似性を持つ。加えて、出雲の人たちは中国や韓国と距離的には近いにもかかわらず、DNA的には関東の人よりも中国北部や韓国の人と離れていて、むしろ東北の人たちに近い……。それがなぜかは、ぜひ講義の本編をご覧ください。

そこで斎藤先生が提唱されるのは、日本への渡来が3段階だったのではないか、という説です。はたして、それはどういうことなのでしょうか。

遺伝子から歴史に迫るのは、とても知的刺激に満ちたプロセスです。本講義も、受講すれば新しい視野が広がることうけあいです。ぜひご覧ください。

(※アドレス再掲)
◆斎藤成也:核DNAからさぐる日本のルーツ(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2553&referer=push_mm_rcm2


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☆今週のひと言メッセージ
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「乳児はしっかり肌を離すな。幼児は肌を離せ、手を離すな。少年は手を離せ、目を離すな。青年は目を離せ、心を離すな」

https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3444&referer=push_mm_hitokoto

子離れ、親離れで大事なのは、「心を離さない」ということ
井口潔(九州大学名誉教授/日本外科学会名誉会長/医学博士・理学博士)

独立しようとすることが当たり前というしつけ、教育をしなきゃいかん。だから、よくいわれるやないですか。「乳児はしっかり肌を離すな。幼児は肌を離せ、手を離すな。少年は手を離せ、目を離すな。青年は目を離せ、心を離すな」と。どうですか。


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今週の人気講義
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https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3520&referer=push_mm_rank

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https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3517&referer=push_mm_rank

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https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2961&referer=push_mm_rank


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編集後記
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編集部の加藤です。
先週土曜日(19日)から新シリーズ講義として、川出良枝先生(東京大学大学院法学政治学研究科教授)の「政治思想史の古典『法の精神』と『社会契約論』を学ぶ」が配信開始となりました。
こちらは今月の特集「教養としての『世界の古典』の読み方」のなかの講義の一つで、全11話からなっており、毎週土曜日配信となります。

実は、私は学生の頃、モンテスキューの『法の精神』やルソーの『社会契約論』という名前は聞いたことがあっても、その中身、エッセンスについてほとんど知りませんでしたし、深く学んできませんでした。というよりも、当時はその気がほとんどありませんでした。
それが、今頃になってといいますか、今回の川出先生の講義と出会ったことで、自由とは何か、また権力や民主主義について考えるうえで『法の精神』と『社会契約論』が非常に大事な古典であることに気づかされ、大きな学びの機会を得たという思いでいっぱいになりました。

ちなみにこのシリーズ講義、二つの古典の内容に迫るだけでなく、著者であるモンテスキューとルソーの人物像やその違いが分かる興味深いエピソードがいろいろと取り上げられていますので、見どころ、聴きどころは実に豊富です。ということで、ぜひシリーズを通してご視聴ください。

<ご紹介したシリーズ講義の1話目はこちら>
モンテスキューとルソーには共通の敵がいた
川出良枝(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3620&referer=push_mm_edt