編集長が語る!講義の見どころ
江戸の愉しみ~『江戸名所図会』で歩く東京/特集&堀口茉純先生【テンミニッツTV】

2023/09/22

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

なぜでしょうか。江戸時代のあり方や、江戸の人々の暮らしを知れば知るほど、心が豊かになってくる感じを覚えます。

きっと日本人が時間をかけて育んできた社会のあり方や文化のかたちには、いまなお日本人の身体のリズムや呼吸に響くものがあるのでしょう。

一昔前には、教科書などでも「貧農史観」ともいうべき見方(=庶民は虐げられ、窮乏していた)ばかりが強調されることもありました。

もちろん、気象異常により飢饉(ききん)も起こりましたし、貧しい人がいなかったわけでもありません。しかし、そのような側面ばかりをとりあげるのは、あまりに偏っています。客観的に見ても、江戸時代の庶民の暮らしは、同時代の世界で比べれば、そうとうに幸せなものでした。

日本ならではの多様な文化が花開いた時代でもあります。愉しみがいっぱいの江戸を色々な角度から取り上げた講義を集めてみました。

■特集:江戸を愉しむ

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=211&referer=push_mm_feat

・堀口茉純:徳川家康と江戸の町づくりー江戸時代の「日本橋」の姿とは

・本村凌二×中村彰彦:なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか

・本村凌二:江戸時代の粋が生んだ「川柳」を詠んで俳諧の歴史を楽しむ

・本村凌二:樽廻船とアンフォラの山、酒文化を謳歌した江戸とローマ

・小泉武夫:「食乱れて、民族滅ぶ」今こそ和食に注目すべきわけ


■講座のみどころ:飽食時代の「選食」のススメ(堀江重郎先生)

本日は、『江戸名所図会』を紹介しつつ、実際に東京の街を歩いて江戸の面影を辿る、堀口茉純先生(歴史作家/江戸風俗研究家)の講義を紹介いたします。

堀口先生はベストセラーとなった『TOKUGAWA15』(草思社)で作家デビューされ、『江戸はスゴイ』『吉原はスゴイ』『歌舞伎はスゴイ』『徳川家松平家の51人』(以上、PHP新書)など、江戸ファンをうならせる本を次々に発刊しています。

また、NHKラジオ「DJ日本史」でのレギュラーをはじめ、TOKYOMX「ぐるり東京江戸散歩」、NHK「知恵泉」など、テレビの歴史番組にも数多く出演されていますので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

その堀口先生が紹介してくださる、江戸と東京。愉しみ満載の講義です。

◆堀口茉純:『江戸名所図会』で歩く東京~日本橋(全2話)
(1)日本橋に見る徳川家康の手腕
徳川家康と江戸の町づくりー江戸時代の「日本橋」の姿とは
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5061&referer=push_mm_rcm1

『江戸名所図会』は、江戸時代後期の天保年間に書かれた、絵ときの地誌です。神田の町名主・斎藤月岑(さいとう・げっしん)が刊行した7巻20冊のシリーズです。

実はこの『江戸名所図会』、祖父の代から3代にわたって刊行事業を引き継ぎ、月岑の代で完成したものでした。この書について、堀口先生は次のようにおっしゃいます。

《やはり、かなり江戸の町名主が携わっている本ですから、情報の密度が濃いですし、また精度も高いといわれております。とくに、長谷川雪旦(はせがわ・せったん)という絵師による挿絵が非常に細かくて、当時の町の雰囲気が手に取るようにわかるということで、とても面白いのです》

町名主が本気でつくった、自分たちが誇る町の本というのは、なんとも惹かれます。

その絵は、実際にこの講義動画でも見ることができますが、町の人々がとても生き生きと描かれているのが、とても印象的です。じっくりと見れば見るほど、まるで江戸の町に降り立ったような感覚にとらわれます。

この《『江戸名所図会』で歩く東京》講義のシリーズ第1回は「日本橋」です。『江戸名所図会』の冒頭も日本橋で始まるのです。

まず堀口先生は、日本橋の由来を詳しく教えてくださいます。もちろん、徳川家康の町づくりがその誕生には大きく関わっています。詳細はぜひ、講義本編をご覧ください。

1604年には、日本橋が江戸と地方を結ぶ五街道の起点となり、立派な橋が整備されるようになります。

『江戸名所図会』の日本橋の絵は、俯瞰図で描かれていますが、ものすごい数の人々が橋を行き交い、物資を運搬する船も過密と思えるほどに航行しています。当時のにぎわいぶりが、よく伝わってきます。

この日本橋の橋詰には魚市場が置かれました。その魚市の模様を詳細に描いた絵も、『江戸名所図会』には載っています。俯瞰図だった日本橋の全景とは異なり、この絵では人々の表情が詳細に描かれています。

この絵を、堀口先生の解説を聞きながら隅々まで楽しむのは、まことに愉快な時間です(第1話~第2話)。

魚市が開かれたエピソードを語るには、摂州(現在の大阪)からやってきた森孫右衛門は欠かせません。実は、「本能寺の変」ともかかわる物語であり、いかに江戸という町が多様な人材を集めて築かれていったかがわかるのですが、詳細はぜひ講義をご覧ください。

生き生き描かれた『江戸名所図会』の「日本橋 魚市」の絵をじっくりと愉しんだ後は、実際に現在の日本橋に繰り出します。よく見てみると、いろいろな痕跡が、いまなお残っています。歴史を知ってその地を歩く醍醐味(だいごみ)を、しみじみ実感できます。

この《『江戸名所図会』で歩く東京》講義シリーズは、現在、第2回の「駿河町・本町」編も配信しております。ぜひ続けてご覧ください。

堀口先生の楽しくて詳しいお話に導かれて、江戸の情景が目に浮かんでくる講義です。


(※アドレス再掲)
◆特集:江戸を愉しむ
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=211&referer=push_mm_feat

◆堀口茉純:『江戸名所図会』で歩く東京~日本橋(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5061&referer=push_mm_rcm2


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編集部#tanka
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このカネは臭うかと笑む皇帝のトイレぞ昔の香ににほひける

歴史のさまざまな出来事の背景には、間違いなく人間の「くらし」のすべてがあります。そのような諸事万端に思いをはせることができる、本村凌二先生の江戸とローマ講義、絶好調です。(達)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5038&referer=push_mm_tanka