編集長が語る!講義の見どころ
カルチャーショック!インド神話の基本を知る/鎌田東二先生【テンミニッツTV】

2023/09/26

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

インド。日本人にとっては、仏教が生まれた地ということもあって、古来、不思議な親しみがある地域です。ガンジーやネルーなどの偉人たちも大きな印象を与えていますし、カレーの食文化が、日本の食を豊かにしてくれていることも間違いありません。

近年ではIT産業の発展をはじめ、世界経済にも大きな影響を与えつつありますし、安全保障で考えても、インド太平洋の安定ということは日本にとっても死活的に重要な要素になっています。

その一方で、いまひとつ「わかりづらい」という部分もあるのではないでしょうか。よく、インドは好きになる人と、そうではない人で真っ二つに分かれる、などともいわれます。

しかし、インド神話を知れば、インドについての理解がグッと深まります。少なくとも、空気感や雰囲気を理解することができますし、どのような背景から仏教などが生まれてきたのかを知ることもできます。

大好評の鎌田東二先生(京都大学名誉教授)の「神話講義」、いよいよインド神話編です。

◆鎌田東二:インド神話の基本を知る(全4話)
(1)インドの特性と神話の成り立ち
ガンジーに影響を与えたインドの古典『マハーバーラタ』とは
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5077&referer=push_mm_rcm1

最初に鎌田先生が教えてくださるのは、インドの独特の位置づけです。インドは東と西をつなぐような特殊な場所にあって、中国とも、ギリシア・ローマともつながっている。東西交流の十字路のようなところでもありました。東西の文明文化に、大きな影響を与えているのです。

そのような土地柄ゆえ、宗教も言語も、まことに多岐にわたります。しかし、長大な歴史
をさかのぼって、一定程度の記録が、きちんと残ってもいるのです。

記録の最古のものが、3000年ほど前のものだといわれる『リグ・ヴェーダ』です。これは神々の讃歌集です。鎌田先生は次のようにおっしゃいます。

《『ヴェーダ』には『リグ・ヴェーダ』『サーマ・ヴェーダ』『ヤジュル・ヴェーダ』『アタルヴァ・ヴェーダ』の4つあり、最後の『アタルヴァ・ヴェーダ』は呪文のようなものです。その神々の讃歌の中で、最初の『リグ・ヴェーダ』という讃歌集の中に、神話的な部分が断片的に述べられている。

 それをベースにして、やがて『マハーバーラタ』や『ラーマーヤナ』など、いろいろな物語ができています。これらは日本でいえば、源平の合戦を描いた『平家物語』『太平記』といったものに当たります。もともとの『古事記』や祝詞のようなものが、『リグ・ヴェーダ』集に当たるということになります》

インド独立の父といわれるマハトマ・ガンジーは、『マハーバーラタ』の一節にあたる「バガヴァッド・ギーター」を座右の書にしていました。

ガンジーはイギリスに留学して、弁護士になったエリートでした。そのガンジーが、なぜ「バガヴァッド・ギーター」に傾倒するようになったのか。

そこには、19世紀末にイギリスで「神智学」が広まっていたことが大きな影響を与えていました。

「神智学」とは、人間が持つ神秘的な霊智を重んじ、これによって神の啓示に触れることを説く思想です。とりわけ1875年にニューヨークで設立された「神智学協会」は、インド神秘思想の大きな影響を受けていました。後に本部をインドに移すほどです。

ガンジーは、イギリスでその「神智学」のサークルを通して「バガヴァッド・ギーター」に惹かれていくのです。

では、「バガヴァッド・ギーター」には、何が書かれているか。鎌田先生は次のようにおっしゃいます。

《いってみれば、自分たちの国の独立などに向けた戦いの中ではどのような精神性をもって戦い抜いていくのかという心得、その現実をどう捉えるのか、といったことが描かれているのです。

 そこで登場してくる主人公は、アルジュナという戦士(王子)です。その王子が、従兄弟であり、従者でもあるクリシュナ(笛の名手でもあり、神様の化身とされている)からダルマやヨーガを学びます。そして戦士の義務、そして神々へどのような帰依、献身をするのか、奉仕をするのか、といったことが説かれています》

この物語を、ガンジーは自分自身の生き方の基本に据えていったのだと、鎌田先生は強調します。

講義の第2話では、インド神話の概括的なあらすじが語られます。パーンダヴァ王家とカウラヴァ王家という2つの王家の争いを軸とした一大叙事詩ですが、その内容は、ぜひ鎌田先生のお話(第2話)でお楽しみください。

第3話では、世界の始まり、人間の始まりについてご紹介いただきます。

インド神話では、断片的にいろいろな世界の始まりが語られているといいますが、有名なのは原人(巨人)プルシャの身体から分かれ出て人間や世界が生まれてきたという神話です。

その物語のなかで、アシュラやマヌやヤマが登場します。アシュラやヤマは、日本では阿修羅、閻魔として知られることになりますが、元々、どのような物語だったかは、ぜひ第3話をご覧ください。

第4話は、文化の始まり、死後の世界、そしてインド特有の「時間の観念」です。

鎌田先生は、生まれて1回だけカルチャーショックを受けたことがあるが、それがインドのカルカッタ(現:コルカタ)での経験だったといいます。

《カルカッタの街の中に立った時に、「今、自分はどこにいるのだろうか。本当に右も左も、上も下も分からない。自分は夢の中にいるのではないだろうか」といった不思議な時空間に投げ込まれたような感じがしました》

そのような感覚が、どのようなインド神話に立脚しているのかも、第4話から伝わってきます。

インドの奥深さを、じっくりと知ることができる講義です。カルチャーショックを「感じる」ためにも、ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆鎌田東二:インド神話の基本を知る(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5077&referer=push_mm_rcm2


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編集部#tanka
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あまロスはあの震災の2年後か……あらためていま「あまロス」になる

あまちゃん終了時のあまロスは、震災2年後だったんだなあ。今週でNHKBSの再放送も終わりますが、その感慨を覚えます。当時の想いをどう受け継ぐかは、いま大切な課題ですね。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2684&referer=push_mm_tanka


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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて、本日はまだ発売前ですが、とても興味深い新刊を取り上げたいと思います。

『宗教の起源――私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか』(ロビン・ダンバー著、長谷川眞理子解説、小田哲翻訳、白揚社)
https://www.amazon.co.jp/dp/4826902484/

何が興味深いかというと、この本、人類学のノーベル賞「トマス・ハクスリー記念賞」を受賞したダンバー氏の著書ということだけでなく、テンミニッツTV講師である長谷川眞理子先生(日本芸術文化振興会理事長/元総合研究大学院大学長)が解説をされているのです。アマゾンには以下の紹介文が載っております。

「宗教と人間の生活のあり方は、かくも複雑なのである。本書は、その両方を進化的ないきさつから説明しようと、真に大きな考察を展開しようと試みる大作である」

宗教と人間の生活のあり方を20万年という壮大なスケールで俯瞰・考察したということで、発刊後(発刊は来月〈10月〉3日予定)、機会があれば、この場でまたその内容について取り上げたいと考えております。

最後に、長谷川先生の以下の講義を挙げて終わりたいと思います。

◆長谷川眞理子:ヒトの進化史と現代社会(全4話)
(1)自然人類学でみるヒトの進化
人類進化史の事実!「人類みな兄弟」は生物学的に正しい
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1211&referer=push_mm_edt

こちらも非常に学びの多い講義です。ぜひシリーズ通してご視聴ください。