編集長が語る!講義の見どころ
混迷の今だからこそ「自由主義」を学ぶ/柿埜真吾先生【テンミニッツTV】

2023/10/17

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です

大人気の柿埜真吾先生の「自由主義」講義(後編)、いよいよ今週の金曜日(10月20日)に最終第13話が配信されます。

なぜ、いま「自由主義」なのか。

ウクライナ、そしてパレスチナと悲惨な戦火が拡大していくなか、ともすれば眼前の圧倒的な状況に押し流されて右往左往してしまいがちです。そのようなときだからこそ、根本的なところに立ち戻って、「人間にとって、本当に大切なものは何か」をしっかりと考えておく必要があるのではないでしょうか。

柿埜真吾先生の《日本人が知らない自由主義の歴史》の前編(全7話)では、ホッブズ、ロック、アダム・スミスからミル、さらにニューリベラリズムの潮流までを描きました。

最初は危険思想と思われてさえいた「自由主義」が、いかに理論として確立していって、社会の発展と繁栄を導き出したか。しかし、それがだんだんと本来のあり方から介入主義的な「大きな政府」へと変容していったかが、手に取るようにわかります。

そして後編(全13話)では、その後の「自由主義」、つまり自由主義の現代的な課題に深く迫り、現代の自由主義の必読文献についてもわかりやすく解説していきます。

実は日本では、自由主義についての一般的な解説の多くは、本講義の「前編」部分で終わっています。本講義「後編」の問題意識を学んでいくことは、とても重要なことといえます。

この機会に、ぜひ前編から一気に、あるいはまずは後編を学んでみてはいかがでしょうか?

◆柿埜真吾:日本人が知らない自由主義の歴史~後編(全13話)
(1)ニューリベラリズムへの異議
ハーバート・スペンサーとダイシー…20世紀の危機の予言者
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4996&referer=push_mm_rcm1

第1話は、「前編」の後半に現われた「ニューリベラリズム」を鋭く批判したスペンサーとダイシーに光を当てます。

当初、自由主義は「専制的な政府」に対して、その介入に反抗する色彩の強いものでした。「権力は腐敗する」と強調し、政府による介入に「NO」を突きつけたのです。

しかし、ニューリベラリズムになると、それが変わってきます。

専制的な政府が覆され、議会政治が行なわれる世になると「国民に選ばれている代表が政治をするようになったのだから、政府に権限を与えてもよいのではないか。福祉のために行動しているのなら何を行なってもいいのではないか」という発想になっていくのです。

至極もっともな考え方ではあります。しかし、「それは危ないのではないか」と警鐘を鳴らした自由主義の思想家がいたのです。それが19世紀後半のハーバート・スペンサーとダイシーでした。

彼らは、その当時は「反動的な思想」だと思われていました。しかし、彼らの「絶対主義的な専制国家が現れる」という予見は、不幸にも20世紀に実現してしまうことになるのです。

続いて見ていくのは、ミーゼス、ハイエクなどオーストリア学派の思想です。彼らは、社会主義計画経済が必ずうまくいかないこと、さらに必ずひどい独裁国家になることを論じました。

計画経済は、必然的に強力な中央集権国家にならざるをえない。とはいえ中央集権にしたところで、自由な市場機能でやりとりされる暗黙のうちの膨大な情報処理を担うことはできない。むしろそのあまりに強大な権力をめざして、最悪の野心家がうごめき、抑圧的な国家にならざるをえない。そう喝破したのです。

この主張の正しさも歴史の流れのなかで証明されることになります。

そのミーゼスやハイエクも参加して開かれたのが、1938年のリップマン・シンポジウム、そして1946年のモンペルラン会議でした。ファシズムが猛威を振るい、その後、スターリニズムが世界の半分を席捲(せっけん)していく時期に開かれたものです。

彼らは、「自由放任でも国家主義でもないバランスのとれた場所があるはずだ」と論陣を張ります。彼らの主張は、大きな政府による介入主義的な「ニューリベラリズム」に対して、「ネオリベラリズム」と称されるようになります(ミーゼスやハイエクたち自身は、「自分たちは本来のリベラリストだ」と考えて、ネオリベラルという言葉は好まなかったようですが)。

彼らは、自由な競争を守るための政府介入(独占禁止など)はすべきだと主張していましたが、企業の国有化や計画経済的なあり方は間違っていると考えていました。そのようなネオリベラリズムの思想に基づいて戦後復興を果たしたのが、西ドイツやイタリアでした。

ネオリベラリズムというと、現在では「新自由主義」というイメージで、市場経済万能主義・競争至上主義のようにとらえられがちですが、本来的にはまったく違う「中庸の思想」なのです。

さて、最近では「リバタリアニズム」という言葉を聞くこともあります。多くの日本人には、あまりピンとこない言葉かもしれません。

リバタリアニズムというのは、アメリカで生まれた言葉です。アメリカでは「リベラル」というと、すっかり左派色の強い言葉になってしまいました。政府介入を是とするニューリベラリズムの流れのなかで、社会主義とほぼ同じような色彩を帯びるようになってしまったのです。

このような「リベラル」に対して、本来の古典的な自由主義を主張したい人たちが「リバタリアニズム」という言葉を用いるようになります。古典的自由主義を継承し、個人の自由を何よりも大事にする思想です。

柿埜先生は、このリバタリアニズムについて、ノラン・チャートという図を用いてご解説くださいます。考え方がとても整理されますので、ぜひ講義本編でご覧ください。

この講義シリーズの後半は「文献編」です。

●ニューリベラリズムの古典ともいうべきロールズの『正義論』。

●社会主義や全体主義の危険性を説いたハイエクの『隷従への道』。

●経済的自由の優位性と採るべき政策を論じたフリードマンの『資本主義と自由』。

●ロールズを批判したノージックの『アナーキー、国家、ユートピア』。

それぞれの内容をわかりやすく解説いただきます。現代の課題について、それぞれの思想家がどのように論じ、そしてどのように批判したのかが、とても明解に伝わってきます。

さらに、最後の講義では、「新自由主義」「新保守主義」とは何かも論究されます。実は欧米でもこれらの用語の用法が大いに混乱しており、日本での用法はさらに無茶苦茶だというのですが……。

普段、普通に使っている言葉でもありますので、海外にまで目を向けてその混乱状況を知るのは大いに意味あることといえましょう。

20世紀から現在までの流れを大局的に見通せるようになり、自分の頭の中に明確な座標軸を打ち立てることができる講義です。ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆柿埜真吾:日本人が知らない自由主義の歴史~後編(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4996&referer=push_mm_rcm2


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編集部#tanka
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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて、先週(10月10日)まで行いました会員アンケートへ、たくさんのご意見をいただきました。この場を借りて、お礼申し上げます。ありがとうございます。
その結果と内容については、今週木曜日(19日)配信予定の編集部ラジオでお伝えいたしますので、もう少々お待ちください。

今回、皆さまからのメディアに対するご意見を拝見しまして、改めて襟を正さなければと強く思いました。大事なことは、いい・悪いという二元論で終わらせるのではなく、なぜそうなっているのか、ではこれからなにをすればいいのか、また、それをどうやってやればいいのか、といったことを真摯に考えて進めていくことではないかと改めて感じた次第です。
そうすることで、皆さまの貴重なご意見を、皆さまの新たな学びの一助となるための講義づくり、そしてその土台としてのメディアとしてのふるまいにつなげていきたいと思います。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。