編集長が語る!講義の見どころ
一人負け?「日本経済」危機突破の重要論点/特集&宮本弘曉先生【テンミニッツTV】
2023/11/10
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
昨今では、円安が進んだこともあって、世界から見て、すっかり「安い」存在になってしまった日本の姿が浮き彫りにもなっています。「一人負け」とさえいわれる状況に勝機はあるのか?
現下の経済の様々な問題の根本を考える講義をピックアップしました。
■本日開始の特集:「日本経済」危機突破の重要論点
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=105&referer=push_mm_feat
・宮本弘曉:世界で一人負け…「安い国」日本と急性インフレの現実
・柳川範之:日本だけ特殊!?デフレ脱却を困難にした日本の労働市場環境
・島田晴雄:なぜ世界の半導体不足は起きた?台湾TSMCと日本復活への鍵
・曽根泰教:マルクス主義から革命へ…政治体制をも変える学説の影響力
■講義のみどころ:衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(宮本弘曉先生)
本日は特集より宮本弘曉先生(東京都立大学経済経営学部教授)の講義をピックアップします。
宮本先生は、慶應義塾大学経済学部をご卒業後、米国ウィスコンシン大学マディソン校にて経済学博士号を取得。国際通貨基金(IMF)エコノミストなどもご経験されて現職をお務めです。
宮本先生は、多くのデータを示しながら、日本経済の現状をわかりやすくご紹介くださいます。客観的に見ることで、日本経済の課題も非常にクリアに理解できるようになります。見えてくるのは、なかなか厳しい状況ですが、では、勝ち筋はどこにあるのか?
その点も説得力をもってお話しいただいています。
◆宮本弘曉:衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(全6話)
(1)安いニッポンと急性インフレ
世界で一人負け…「安い国」日本と急性インフレの現実
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5119&referer=push_mm_rcm1
第1話で宮本先生がお示しくださるのが、諸外国と比べて日本がいかにデフレ状況だったか、いかに日本が「安く」なってしまっているかです。
デフレについても、グラフでお示しくださるので、一目瞭然。どれほどデフレを続けてきてしまったかがよくわかります。また、日本と欧米での価格差について、ビッグマックや、Amazonプライム、さらにラーメンの比較などで如実にお示しくださいます。
そのうえで宮本先生は、日本円の「弱さ」は1970年初頭と同等だと、実質実効為替レートの図を提示されます。
《1970年代初頭は、まだ「1ドル360円」という固定為替(相場)制度の時代でした。その頃と同じレベルまで今、日本円が弱くなってしまっているということが、データの示す姿です》
なぜ、このような姿になってしまったのか。宮本先生は「日本病」にかかってしまったからだといいます。「日本病」の特徴は、3つの「低」と1つの「高」。すなわち、低賃金、低物価、低成長、高債務です。
それぞれ、グラフでお示しくださるので、ぜひ詳細は第2話をご覧ください。そのうえで、宮本先生は次のような実態もご紹介くださいます。
《日本の企業とタイの企業の年収を比べた図です。これを見ていただくと(お分かりのように)、課長レベルの年収についてタイの企業と日本の企業を比べると、タイの企業の課長の年収がすでに日本の企業の課長の年収を上回ってしまっているという、非常に衝撃的なデータです。
この差は部長レベルになってくると広がり、タイの企業での部長の年収が、日本の企業の部長の年収を大幅に上回るということです。さらにタイの企業と日本の企業とで、昇進のスピードも違い、タイの企業のほうが比較的早く課長、あるいは部長に昇進するといわれています。そうすると、早い段階に日本よりも高い時給がもらえるという状況になってしまっているのです》
なぜ、かくも給料が上がらないのか。その解説は第3話です。
ここで宮本先生がご提示くださるのが、いかに日本が労働生産性が低いかということ。労働生産性の決定要因は、
●労働の質(=労働者のスキルや知識)
●資本装備率(=労働者にどういった機械を提供するのか)
●TFP(=全要素生産性。「労働の質」「資本の装備率」以外の全て≒技術水準、経営の質など)
ですが、日本はその三拍子そろって悪い。ここで宮本先生がご提示くださるのが、いかに日本企業が労働者に教育費(人的投資)をかけず、資本装備(設備投資など)もしてこなかったかの姿です。
「マクロ経済がデフレに留め置かれていたから」ということは大いにあるにしても、宮本先生が示される各国との比較は、あまりに衝撃的です。ぜひ第3話でご確認ください。
では、その原因は何なのか。宮本先生が指摘するのは、1つめは日本の経営者にあまりにもドメスティックな人材が多いこと。2つめは正社員より給与水準の低い非正規社員が増えたことです。
そして、この背景にあるのが「日本的雇用慣行」の限界だといいます。
日本的雇用慣行の前提条件は「持続的で高い経済成長」と「豊富な若年人口」の2つでした。しかし、いまや2つとも失われています。
そして前提条件が失われているために、日本的雇用慣行で「想定外」とされていた労働者にしわ寄せがいっていると、宮本先生はおっしゃいます。
《それは何かというと、女性、高齢者、あるいは非正社員です。女性が働こうとすると、家庭と仕事の両立ができない。高齢者が働こうとすると給料が下がってしまう。非正社員として働こうとすると賃金が正社員と全然違う。そういった問題が起こってきている状況です》
では、どうするのか。労働生産性を上げるためにも、また労働者へのしわ寄せを解消するためにも、「労働市場を流動化させること」が必須だと宮本先生は強調されます。
なぜ、労働市場の流動化が必要なのか。その背景となるメガトレンドは何か。それらは、ぜひ第4話、第5話をご覧ください。
そして、解決の方向性が第6話で説かれます。日本の慣行や制度、規制のうち「壁」になっているのが何か、「後押し」するために何が必要かが具体的に挙げられていくので、まさに一目瞭然です。
そのうえで宮本先生はこうおっしゃいます。
《また同時に、日本はまだまだポテンシャルがあります。改革をしっかり進めていくことによって、これからの30年、40年、再浮上する可能性は十分ある》
原因はわかっている。背景もわかっている。しわ寄せがどれほど酷く、各国と比べてどれほど悲惨かもわかっている。なのに、なぜ変えられないのか。ここはじっくりと考える必要があることでしょう。ぜひご覧ください。
(アドレス再掲)
◆特集:「日本経済」危機突破の重要論点
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=105&referer=push_mm_feat
◆宮本弘曉:衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5119&referer=push_mm_rcm2
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編集部#tanka
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ガザ地区の悲劇が拡大しています。現地のあまりの惨状に胸が痛みますが、俯瞰でわかる動きもあります。この衝突でほくそ笑んでいるのは誰か。そしてウクライナの行方は…。(達)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4395&referer=push_mm_tanka
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