編集長が語る!講義の見どころ
「幸せになるためのメカニズム」の謎に迫る!/前野隆司先生(テンミニッツTVメルマガ)
2020/09/29
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
「幸せ」について考えない人はいないと思います。しかし、「あなたは幸福ですか」と問われると、「う~ん」と考え込んでしまう人が大半ではないでしょうか。
しかし、幸福とはけっして単なる哲学的命題や精神論ではありえません。「幸せな人は、免疫力も高まって、寿命も平均で7年から10年ほど長い」ことも明らかになっているとのこと。「幸せか否か」は「リアル」に大きく跳ね返ってくる問題なのです。
本日は、前野隆司先生(慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授)の幸福論講義をご紹介します。8月に配信スタートして以来、とてもご好評をいただいている講義です。
◆前野隆司:「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(全7話)
(1)心理学研究と日本の幸福度
実は今、「幸せにも気をつける」べき時代になっている
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3527&referer=push_mm_rcm1
前野先生は、心理学をベースに「どのような条件を満たせば人は幸せでいられるか」ということを、世界中の研究成果をひもときつつ、とてもわかりやすく解説してくださいます。
もともと前野先生は、機械工学を学び、ロボットの研究をされていました。ロボットの心を作ろうと試みるうちに、人間の心に興味が移り、その後、人間の心の働きについて研究するうちに、「幸せとはどういうことか」について研究するようになったそうです。だからでしょう。前野先生の「幸福論」はとても分析的で、エビデンスの説得力もあり、新たな知見をいくつも与えてくれます。
この講義で、前野先生は「幸せの4つの因子」について解説してくださいますが、そのほかにも、興味深い論点が目白押しです。
たとえば第1話では、よくニュースなどでも話題にのぼる「世界幸福度調査(World Happiness Report)」のからくりについて指摘されます。2020年の結果では、日本の幸福度は先進国中最下位の62位とのことで、このような結果から「日本人は不幸だ」などと論じられることが多くあります。
しかし前野先生は、「この調査は割り引いて考えるべき」とおっしゃいます。なぜなら、この調査は、「0が最悪の人生、10を最高の人生としたときに、あなたの人生は何点ですか?」と質問して、その回答の平均値をランキングしたものだからです。
前野先生によれば、欧米に多い個人主義の人たちは「10からの引き算」で考える。つまり、最高な人生(10)から考えて、自分の人生はどのくらいマイナスかを考えるので、平気で8とか9などといった数値をつける。一方、アジアに多い集団主義の人たちは、「周りを見て普通程度かな」と考える。そのため「5」を基準として、その前後の点を選ぶので「5」を中心とした富士山のような正規分布となりやすい……なるほど、思い当たる節のある話です。
このような客観的な分析で、前野先生は次のようなテーマについて、とても納得感の高いお話を繰り出してくださいます。
●高齢社会と幸福
●長続きしない幸せと、長続きする幸せとは
●幸せの「4つの因子」とは
●「夢や目標」と幸福の関係
●「友だちの多様性」と幸福
●日本人は遺伝的に「心配性」?
●個人主義は幸福にマイナス?
●自分らしさと幸福
●幸せをめざすと不幸せになる?
●幸福度を高める方法とは
いずれも興味深い視点です。とかく「つかみどころ」が見失われがちな「幸福」について考えるうえで、明確な1つの座標軸を与えてくれる講義です。必ずや、自分自身の「幸福のあり方」についても、大きなヒントを得られるはずです。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆前野隆司:「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3527&referer=push_mm_rcm2
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☆今週のひと言メッセージ
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「特に上手になった人がぎこちなさを回復することは、大事なこと」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2865&referer=push_mm_hitokoto
知識を知性に変えるために必要な「変容」とは
中島隆博(東京大学東洋文化研究所 教授)
初心者のときはうまくいかず、動きがぎこちない。しかし、慣れてくるにつれ、あまり意識せずにいろいろな動作ができるようになる。
ところが、ある程度できるようになった時点で、もっと本当に突き抜けたレベルに達するためには、どうすればいいかという問題があります。
それには、身に付けた動作をいったん壊さなければならなくなる。つまり、初心に戻らなければならない。ある種のぎこちなさを回復しなければいけないわけですが、これは熟達した段階の人ほど難しいといわれています。
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今週の人気講義
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人類の祖先による「出アフリカ」は3回あった
斎藤成也(国立遺伝学研究所集団遺伝研究室教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2553&referer=push_mm_rank
無名候補ハーディングが大統領選に勝利した100年前との共通点
東秀敏(米国安全保障企画研究員)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3546&referer=push_mm_rank
「文は人なり」――原文を読んで名僧の思想の息吹に触れる
頼住光子(東京大学大学院人文科学研究科・文学部心理学研究室教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3631&referer=push_mm_rank
モンテスキューとルソーには共通の敵がいた
川出良枝(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3620&referer=push_mm_rank
夜間頻尿になりやすい人の特徴とその対策
堀江重郎(順天堂大学医学部大学院医学研究科 教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2539&referer=push_mm_rank
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編集後記
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編集部の加藤です。今回は9月最後のメルマガですが、いかがでしたか。
ところでノーベル賞の発表が来月10月5日から始まるそうですが、今年は日本からどなたか受賞者が出るのでしょうか。
そのノーベル賞について、曽根泰教先生が興味深い興味深い講義をされていますので、少しご紹介いたします。
「ノーベル賞を取った人はどこでトレーニングを受けているかというと、以前にノーベル賞を取った人のところでトレーニングを受けているケースが非常に多いわけです。
アメリカのトップ20の大学では、学生の努力はほとんど同じだし、大学院生や研究員の努力もそれほど変わらないと思います。ただ、ノーベル賞を受賞したところで研究をすると、そこまでの水準の下駄が履かせられているので、そこから先をやればいいということになり、同じ努力量でもかなり有利な形でスタートできるのではないかと思います」
なお、これはノーベル賞を取るということが主眼となっているということで、もちろんこれだけでノーベル賞を取りやすくなるということではないですが、考えてみれば納得できる話ですね。
このほかにも、曽根先生は日本についてもお話されていますので、この機会にぜひご視聴ください。
<上でご紹介した講義はこちら>
ノーベル賞をたくさん取りたければ評価システムの確立を
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=99&referer=push_mm_edt
人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
「ブッダに帰れ」――禅とは己事究明の道
藤田一照