編集長が語る!講義の見どころ
初詣が100倍楽しくなるおみくじと神仏の基礎知識/特集&平野多恵先生【テンミニッツTV】
2023/12/29
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
いよいよお正月が目前です。新年には、ぜひ初詣に……。そのようにお考え方も多いのではないでしょうか。
しかし、初詣に行くときに、日本古来の神道や仏教の考え方を知ると、そのありがたさが幾倍にもなること、うけあいです。お正月には、ぜひ日本古来の考え方に親しみ、大事にしたいものです。
さらに、おみくじの「本当のあり方」は、吉凶だけを見るのではないというのですが……。
■本日開始の特集:初詣が100倍楽しくなる神仏の基礎知識
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=147&referer=push_mm_feat
・平野多恵:おみくじは「吉凶」だけでなく「和歌や漢詩」を読むのが本当
・田口佳史:神道とは何か――本居宣長が『古事記伝』で語っていること
・田口佳史:川は急流、水は澄み切る―日本のリーダーの条件「清明心」
・鎌田東二:世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
・上野誠:「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
・北河原公敬:「無財の七施=七つの施し」で身につく菩薩の精神とは?
・大野玄妙:仏国土は水平的世界だが「浄土に登る」―日本的仏教観
■講座のみどころ:おみくじは「吉凶」だけでなく「和歌」を読む(平野多恵先生)
初詣に行った際に、おみくじを引く方も多いことでしょう。しかし、ほとんどの方が、「大吉」「小吉」などという吉凶に一喜一憂し、また「学業」「待ち人」「商売」などにつけられたコメントに思いを馳せるだけになっているのではないでしょうか。
平野多恵先生(成蹊大学教授)は、そうではなく、おみくじの一番上に書かれた「和歌」(寺社によっては「漢詩」)を読むことが、本来のおみくじの姿だとおっしゃいます。大切な気づきがそこから得られると。
おみくじと和歌の歴史をひもとくと、日本文化について興味深い知見を得ることができます。
◆平野多恵:おみくじと和歌の歴史(全5話)
(1)おみくじは詩歌を読む
おみくじは「吉凶」だけでなく「和歌や漢詩」を読むのが本当
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5196&referer=push_mm_rcm1
平野先生は、おみくじの歴史をたどると、神様のお告げをいただくことがルーツにあり、しかも日本では、「神様が和歌でお告げをした」という伝統があったといいます。
その後、様々な歴史的な経緯のなかで、中国の「くじ」や「占い本」の影響も受けながら、現在のような「おみくじ」が成立していきました。
案外、気づいていない方も多いかもしれませんが、実は多くのおみくじの最上部に「和歌」(寺社によっては「漢詩」)が書かれています。これを自分の現在の状況にあてはめつつ、読み解くのが、おみくじの本来の形だというのです。
第1話では、おみくじに書かれた和歌の1例を取りあげつつ、どのように読み解くかを平野先生が教えてくださいます。
平野先生は、和歌を研究しつつ、おみくじや占本などの文化史も研究されている先生でいらっしゃいます。そのご視点からの興味深いご指摘が続きます。
タロット占いなどをされた方もいらっしゃるかもしれません。タロット占いの場合、出てきた絵柄を自分の境遇に当てはめつつ読み解いていくわけですが、ある意味で、おみくじの和歌を読むのも、同じような意味合いがあります。
つまり、和歌の言葉は象徴的で、さまざまな解釈が成り立ちうるものでもあります。だからこそ、自分自身で感じる部分が何かということで、さまざまなメッセージを感じ取れるものでもあるのです。
そのうえで平野先生は、おみくじの歴史をひもといていきます。
おみくじは、「くじ」という言葉の前に「お」「み」という尊敬の意味を持つ接頭語がついたもの。つまり、基本的には神仏など聖なるものにかかわる「くじ」だということです。
ですから昔々には、お経や真言を何百回も称えたり、願いを込めた和歌を称えたりした後で、おみくじを引くという作法がありました。
そもそも、おみくじの歴史をさかのぼると、「太占(ふとまに)」や「亀卜(きぼく)」などにさかのぼります。動物の骨や、亀の甲羅を焼いて、その割れ方などを見て吉凶を解釈するのです。
その後、占いが変化していきますが、現在のおみくじにつながるルーツは、「和歌みくじ」「神仏の前で引く自作のくじ」「漢詩のみくじ」の3つだといいます。
テンミニッツTVの鎌田東二先生や渡部泰明先生の講義でも指摘されていますが、和歌のルーツはスサノヲノミコトが詠んだ次の歌だとされます。
八雲立つ出雲八重垣妻ごみに八重垣つくるその八重垣を
それゆえ、神様は和歌でお告げを伝えるという信仰が形づくられていきます。平安時代の古典文献にも、神様が歌を詠んで思いを伝えるという事例がいろいろと出てきます。平野先生はそのような事例の数々もご解説くださいます。
さらに、神仏の前でくじを引く伝統も、脈々と続いていきました。勅撰和歌集の撰者を決めたりするときにも行なわれましたし、征夷大将軍を決める際にも、くじが用いられたことがありました。戦の方法を決める際にも、くじは多用されていました。
そのような歴史を受けつつ、江戸時代に中国の「漢詩占い」書籍の影響も受けて流行したのが「歌占本(うたうらぼん)」です。
平野先生は、数々の実際の「歌占本」の現物を示しながら教えてくださいます。たとえば歌占本には64首の和歌が載っています。
まず、「ちはやぶる神の子どもの集まりて作りし占は正しかりけり」という和歌を称えたあとで、サイコロのような札を振ります。その出た記号にしたがって、該当する歌のページを読むのです。
これも平野先生が実演くださるので、やり方や読み解き方がよくわかります。
そのような伝統が、現代のようなおみくじに大きく変わっていくのが明治時代です。明治時代の神仏分離令によって、神社と寺院が分離することになります。それまで寺社では「漢詩みくじ」などが用いられていましたが、神仏分離によって、「和歌みくじ」が現在のおみくじのような形になっていくのです。
さらに現在に至るまで、和歌みくじは様々な発展を遂げていきます。一例として、明治神宮のおみくじは、明治天皇と昭憲皇太后がお詠みになった和歌のみをのせたものです。明治天皇と昭憲皇太后はお二方で10万首を超える和歌を詠んでおられます。その和歌を厳選しておみくじにしているのです。
また、平野先生は、ゼミの教え子たちと一緒に、いろいろな神社の和歌みくじを作ってもいます。さらに歌占カードなども手がけました。
このようなあり方を学ぶと、和歌が、現在の社会にもいろいろな形で、深く息づいていることを知ることができます。
日本文化の奥深さを知るとともに、占いの歴史やあり方についても、しっかりと理解することができる講義です。文字通り、初詣のおみくじが100倍以上、楽してためになるものになることうけあいです。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆特集:初詣が100倍楽しくなる神仏の基礎知識
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=147&referer=push_mm_feat
◆平野多恵:おみくじと和歌の歴史(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5196&referer=push_mm_rcm2
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編集部#tanka
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はやふるゴジラの響きは戦前のポストモダンの咆哮なりき
「ゴジラ-1.0」が全米でも大人気とのこと。素晴らしい映画でした。とりわけ伊福部昭サウンドが鳴り響くときの感動たるや。片山杜秀先生の講義で伊福部音楽と近代日本史を深く!(達)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5133&referer=push_mm_tanka
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テンミニッツ・アカデミー編集部