編集長が語る!講義の見どころ
異色テーマの名講義/特集&川上浩司先生【テンミニッツTV】

2024/02/23

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

2月の「特集」では、【テンミニッツTV10周年企画】として、さまざまな角度からおススメ講義を紹介しています。

(アンケート企画「あなたが選ぶベスト講義は?」も、いよいよ来週が締切です。ぜひよろしくお願い申しあげます。詳しくはトップページのバナーから!)

今回、ご紹介するのは、「異色テーマの名講義」です。

とてもおもしろい切り口や着眼点の講義なのだけれども、世の中の「枠」から少しはみ出るので、一般的な分類には入りづらくて見つけづらいかも……。

そんな異色の講義を、編集部がこっそり教えます。「こんな講義があったんだ」とお気に入りを見つけていただければ、まことに嬉しく存じます。


■特集:【10周年記念】異色テーマの名講義

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=228&referer=push_mm_feat

・川上浩司:「不便益」とは何か――便利の弊害、不便の安心

・片山杜秀:映画『ゴジラ』の作曲家・伊福部昭、知られざる経歴を追う

・松田次泰:日本刀の持つ「至高の美」と「強さ」をいかに両立するか

・一ノ瀬正樹:なぜ人はハチ公の物語に感動するのか?

・長谷川眞理子:『人、イヌと暮らす』オオカミはいつからイヌになったのか

・和田有史:食べ物のおいしさは味や匂いだけでは決まらない

・小泉武夫:納豆1パックでご飯を3膳…一汁一菜とお酒の極意&愉しみ

・竹内昌治:食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る

・片岡一則:ナノテクノロジーで『ミクロの決死圏』の世界を実現させる

・岡島礼奈/柳川範之:人工流れ星の実現を目指す宇宙ベンチャー起業への経緯


■講義のみどころ:「当たり前」を疑って発想力を鍛える…不便益の魅力(川上浩司先生)

今回、特集からピックアップするのは、川上浩司先生(京都先端科学大学教授)が「不便益」という視点から、発想力を鍛えるヒントを教えてくださる講義です。

「~すべきだ」「~しなければならない」「~に決まっている」……。そんなふうに、知らず知らずのうちに「とらわれてしまっている」ことがあるのではないでしょうか。

「これが当たり前」という「通念」は、物事をスピーディーに判断し、なおかつ大きな間違いを減らすためには便利かもしれませんが、イノベーションを起こしたり、画期的な発想をしたり、物事を根本から考え直してみたりするためには、かえって邪魔になることが多いものです。

川上先生は、『ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも行き詰まりを感じているなら、不便をとり入れてみてはどうですか?―不便益という発想』(インプレス)という、風変わりなタイトルの本をお書きになっています。

このテンミニッツTVの講義も、まことに洒脱で、大いに色々なことを気づかせていただけるものです。

◆川上浩司:不便益システムデザインの魅力と可能性(全7話)
(1)「便利・不便」「益・害」の関係
「不便益」とは何か――便利の弊害、不便の安心
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3968&referer=push_mm_rcm1

では、川上先生にとっての「当たり前」はどういうことだったか。川上先生は工学部ご出身なので、「便利で豊かな社会を!」というのが工学の使命だと思っていたそうです。

そう聞くと、皆さん「それはそうだよなあ」と思われることでしょう。しかし、川上先生は、そこを疑いだしたのです。どういうことでしょうか?

たとえば、川上先生が「便利なものが売れて、社会を発展させる」1つの事例として紹介されるのが「甘栗むいちゃいました」(クラシエフーズ)です。たしかにこれは、「甘栗の硬い殻をむいておく」という発想で、消費者に「便利さ」を提供して大ヒットした商品です。

では、何でもかんでも「便利」にすればヒットするのか?

ここで川上先生が「たとえば」として空想するのが、「プラモデル組み立てときました」とか、「富士山の山頂に行けるエスカレーター」あるいは、必ずホームランが打てる「ゴールデンバット」ですが……。

川上先生は、このような商品があったとしたら、「便利だけど、なんだかな」というものになるだろうとおっしゃいます。確かに、そうでしょう。

であるならば逆に、「不便だからこそ、良いことがある」という事例があるはずだ……。その発想が「便利で豊かな社会を!」という工学的な常識から飛躍するヒントとなりました。

では、不便だからこそ良かったものには、どのようなものがあるのか。川上先生は、この講義で次々とご紹介くださいます。

たとえば、1986年に発売されて、その当時は便利さからヒットした「写ルンです」(富士フイルム)。デジカメ&ケータイ・スマホの時代になって、市場で見る機会が減りましたが、これが2016年に30周年復刻版を発売したところ、一瞬で売り切れたそうです。

買ったのは、デジタル世代の若者たちでした。撮れる枚数が限られているので、撮り方や被写体を「ちょっと考えて」から撮る。また、現像してみないと出来栄えがわからないのがいい。あるいは、フィルム式カメラの独特の風合いがインスタ映えする……。そんなニーズだったといいます。

さらに川上先生は、わざと「バリアアリー(バリアフリーの反対。あえてバリアを設けること)」にした山口市のデイケアセンター、足が不自由な人のための車椅子に足こぎ機能をつけた「Cogy」、行きづらい場所にある高級ホテル、書評合戦の「ビブリオバトル」、本店に行かなければ入手できない京都みやげ、などなど数多くの事例をご紹介くださいます。

ちなみに川上先生が勤務されていた京都大学では、大学生協で「素数ものさし」なるものを売り出して、4万本を超える大ヒット商品になったとのこと。定規の目盛りに「素数」しか書かれていないものですが、なぜ、これがヒットになったのでしょうか。

また川上先生は、「不便がもたらす4つの益」などについても、整理をして語ってくださいます。はたしてそれは、どのようなことなのでしょうか。

それらの興味深い「不便益の事例」の数々については、ぜひ講義をご覧ください。上記で紹介したもの以外にも、本当にさまざまなポイントを教えてくださいます。

この紹介の最初にも書きましたとおり、「通念の罠」を軽やかに乗り越えさせてくれて、「豊かな発想力」へのヒントを与えてくれる講義です。ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆【10周年記念】異色テーマの名講義
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=228&referer=push_mm_feat

◆川上浩司:不便益システムデザインの魅力と可能性(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3968&referer=push_mm_rcm2


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編集部#tanka
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ドラマ「不適切にもほどがある」は、コンプライアンス狂騒を痛快に描きますが、世のコンプラが外面ばかりなのは、差別される自分を忘れているから?と、渡部昇一先生の講義でふと思います。(達)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=986&referer=push_mm_tanka