編集長が語る!講義の見どころ
幕末と戦前から考える「インフレ」と歴史の大転換/養田功一郎氏【テンミニッツTV】
2024/03/12
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
物価の高騰、株高……。いま、このときも様々な経済的な出来事が起きています。はたして、これからどんなことが起きるのか。歴史を振り返ることで、それが見えてくるかもしれません。
経済の動向が、歴史を大きく動かすことがあるのは、少し歴史を学べば、すぐにピンとくることです。
たとえば、江戸時代末期(幕末)に日本は「開国」するわけですが、その結果、激しいインフレになってしまい、徳川幕府が倒れる大きな要因になったことをご存じの方も多いことでしょう。
また、第一次世界大戦の後にも、日本経済は深刻なインフレと不況に直面します。そのことが、その後の戦争の時代へと結びついたことも、皆さまご存じのとおりです。
では、それぞれの時代に、具体的にどのようなことが起きていたのか。
本日は、そのことについて養田功一郎さん(三井住友DSアセットマネジメント株式会社執行役員)にご解説いただいた講義を紹介いたします。
養田さんは、具体的な数値で探求し、それをグラフ化してくださるので、当時に何が起きていたのかが手に取るようにわかります。
まさに、いまこそ見ておくべき講義といえましょう。
◆養田功一郎:歴史的転換点における影の主役「インフレ」(全2話)
(1)現代と幕末の共通点
紛争・震災・疫病・インフレ…幕末と重なる現代日本の姿
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5241&referer=push_mm_rcm1
養田さんは運用を長らく手掛けてこられたなかで、過去の歴史を調べることがあるとおっしゃいます。何が経済・金融危機の発端になっているか。安全保障の脅威、紛争との関係、震災や疫病、パンデミック発生後の財政・金融政策などについて共通点がないか……。
そこで、最近気になることがあるといいます。「歴史的転換点」や「社会情勢の大きな変化」と、「紛争」「震災」「疫病」、そして「インフレ」との関係性です。
その視点で見ていくと、最近の情勢が過去のある時代とかぶるように見えてくるとおっしゃいます。それは、江戸時代終盤から幕末までの時期と、第1次大戦と第2次大戦の戦間期です。
ここから、歴史の検証がはじまりますが、とても興味深い事実をグラフや図表でお示しいただけるので、その時代に何が起きていたのかが一目瞭然です。
まず、江戸時代末期から幕末です。
江戸時代には、現在のような金融政策はなかったわけですが、徳川幕府は貨幣の改鋳によって対応をしていました。
端的にいえば、小判の金の含有量を減らせば、その分、貨幣の流通量を増やすことができ、現在でいう「金融緩和政策」と同じ意味を持たせることができたのです。さらに、少ない金で、同じ1両として流通させるので、幕府は貨幣発行益を得ることもできました。
徳川幕府が、この貨幣改鋳によって、いかに経済を上向きにさせていたかは、養田さんのグラフでよくわかりますので、ぜひ講義本編をご覧ください。
しかし、幕末になって問題が起きます。それは、「開国」が引き金になりました。
天保の大飢饉に伴う財政難から、「天保1分銀」という貨幣を発行し、この1分銀4枚で1両小判と交換する仕組みとしました。これは、より少ない銀の含有量で、1両小判と交換できる仕組みでした。幕府は、「政府の信用」によって、それを通用させていたのです。
しかし、開国して海外と広く交易をするようになると、貨幣の交換比率が問題になります。
当時、ドル銀貨は、重さをベースにした貨幣であり、海外においてはドル銀貨4枚(4ドル)が、日本の小判1枚(1両)相当と交換できる価値を持っていました。そして、銀の含有量は、ドル銀貨のほうが、日本の「天保1分銀」よりも高かったのです。
そこで、米国総領事のハリスは、銀の量が違うものを等価交換できないと主張し、重さを基準に、ドル銀貨1枚と1分銀3枚を交換することを主張します。その結果、日本と海外との交換比率の違いを巧みに利用して日本国内と海外で両替を繰り返すことで大きな利益が生まれることになってしまいました。
この部分は、養田さんの図表による説明がとてもわかりやすいので、ぜひ講義本編をご覧ください。
もちろん、幕府もただ手をこまねいていたわけではありません。本来であれば、銀貨の銀の含有量を海外と同じにすればよいのですが、銀の産出量が落ちていたので、それができません。そこで、金の含有量を3分の1程度に減らした「万延小判」を発行します。
これが、すさまじいインフレを引き起こすことになってしまいました。
養田さんは次のように指摘されます。
《この話は、日本と海外で金と銀の交換比率が違ったため、金が流出して国富が失われたというような解釈になっていることが多いと思います。そういう側面もありますが、話の本質としては、幕府の威信があるときに銀貨の価値を重さ以上に評価して財源を確保していたところ、海外との比較により実質的な評価の見直しが行われ、実は価値がなかったことが露呈したというのが実態ではないかと思います》
そして養田さんは、これを今風にいえば、震災やパンデミックなどの折に、政府が財源確保のために国債を大量に発行して中央銀行が買い取っていたところ、海外から「政府は本当に返済能力があるのか」「このお金、あるいは国債は本当に前と同じ価値があるのか」と疑問を投げかけられてしまい、通貨の価値が下落してインフレが発生することと重なるのではないかと指摘するのです。
実際に、幕末にどれほどのインフレが起きたかは、第2話でグラフでお示しくださいますが、驚くほどの急騰ぶりです。これを見れば、歴史が大きく変わった理由も見えてくるように思われます。
さらに、1910年代から1930年代についてもご解説くださいます。この時代、日本では安全保障の脅威が高まり、スペイン風邪の流行や、関東大震災などもありました。
この時期にも、大きな物価上昇が起きていました。さらに関東大震災後の金融政策で悪手を重ねてしまいます。その結果、日本の状況は一気に不安定化してしまうのです。
この経緯も、養田さんのグラフで一目瞭然です。
幕末、戦間期を詳細にご分析いただいたうえで、その両時代と現代を比較する一覧表を示してくださいます。そして「歴史は繰り返さないが韻を踏む」という言葉をご紹介くださいます。
何が歴史を動かしたのか。そしてこれから何が起きるのか。そのようなことを考える、大きなヒントをいただける講義です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆養田功一郎:歴史的転換点における影の主役「インフレ」(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5241&referer=push_mm_rcm2
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編集部#tanka
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編集後記
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今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。
さて、今年2月にもお伝えしました以下「読書」コラムのコーナーですが、いくつかお読みになられたでしょうか。
https://10mtv.jp/pc/column/?referer=push_mm_new_function
改めてお伝えしますと、「読書」コラムでは毎月数冊ずつテンミニッツTV編集部が独自の視点で選んだ新たな書籍を取り上げ、そのエッセンス、読みどころを紹介しています(テンミニッツTV講師の著書に限らず、興味深い書籍を幅広く選んでおります)。
そして、今月3月注目のコラムは以下になります。
『ケアの倫理』で学ぶケアの政治思想史
https://10mtv.jp/pc/column/article.php?column_article_id=4079&referer=push_mm_edt
このコラムでは同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授である岡野八代氏の著書『ケアの倫理 フェミニズムの政治思想』(岩波新書)のエッセンスを紹介しているのですが、本書は近年さらに重要性が増しているケアについて、「フェミニストたちの思索と葛藤の歴史を、一つの物語として叙述」している書籍ということです。
非常に興味深い内容ですので、ぜひご一読いただければ幸いです。
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