編集長が語る!講義の見どころ
2024年、世界の危機を読む/特集&山添博史先生【テンミニッツTV】
2024/03/22
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
3月15日から17日にかけて、ロシアで大統領選挙が行なわれ、プーチン大統領が7627万票を獲得して再選されました。得票率は87.28%とのことですが、各国から選挙が本当に公正なものだったのか疑いの声が上がっています。
ともあれ、これでプーチン大統領は5期目に入り、2030年までの任期ということになりました。
2024年は、4月以降も韓国総選挙、インド総選挙、欧州議会選挙、アメリカ大統領選挙など、世界各国で重要な選挙が相次ぎます。その一方、ロシアによるウクライナ侵略や、取りざたされる台湾危機、さらに中東情勢の混迷など、「危機の火種」に枚挙の暇はありません。
はたして、この世界的な危機の根底に流れるものとは何なのでしょうか。徹底検証します。
■特集:2024年、世界の危機を読む
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=163&referer=push_mm_feat
・山添博史:なぜウクライナに侵攻?弱小国を狙ってきたロシアの歴史
・曽根泰教:世界の危機は3つの空間で起こる…重要な「認知空間」とは
・橋爪大三郎:核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
・島田晴雄:第3期習政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
・山内昌之:第二次独立戦争か第二次ナクバか…悲劇的なガザ戦争の行方
■講義のみどころ:歴史から考える「ロシアの戦略」(山添博史先生)
本日は、山添博史先生(防衛研究所 地域研究部 米欧ロシア研究室長)に、ロシアの歴史を振り返りながら、その戦略を検証いただいた講義を紹介いたします。
歴史から考えることで、これからロシアがどのように動きそうなのか、そしていかに備えるべきかが見えてきます。
いうまでもなく明治以降、ロシアは日本にとって「脅威」である時期が長かった国です。そのため、案外、実像が正しく映っていない部分もあるかもしれません。ぜひとも本講義で、ロシアの実像を把握しておきたいところです。
◆山添博史:歴史から考える「ロシアの戦略」(全7話)
(1)ロシアの基本戦略と行動
なぜウクライナに侵攻?弱小国を狙ってきたロシアの歴史
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5251&referer=push_mm_rcm1
まず最初に、山添先生はロシアの現在の行動について、「国際秩序の中で、これほど外れた行動に出ているというのは、私が見ている200~300年の歴史の中でもなかなか事例が見出しにくい」と指摘されます。
主権国家の主権や対等性を認めずに、客観的には確認できないようなことを主張し(ウクライナはナチ政権)、一方的に軍を動かして侵攻する。まさにかつての帝国主義的な行動であり、このまま進んでいけば、一方的な勝手な論理によって他国の主権を損ない、人権侵害が大規模におこなわれていくことが許容される時代になってしまう。
危機が長引くにつれて、このような「基本の部分」が見えづらくなってしまう恐れもあります。ウクライナの政権のあり方を批判し、ロシアの行為を「相対的」にするような論説も現われますが、やはり基本的な図式はしっかりと踏まえておくべきでしょう。
さて、山添先生はロシアの歴史を振り返り、多くの日本人にとっては少し意外な指摘をされます。「ロシアが強国と好んで対決して、打ち破って拡張しようとする事例はほとんど考えられない」とおっしゃるのです。
世界史などでも、「グレート・ゲーム」などという言葉が使われ、19世紀以降、ロシアがイギリスと世界のあちこちで対峙していたイメージが語られますし、20世紀のロシア革命以後は、ソ連が世界に革命を輸出しようと画策する姿が想起されます。しかし、歴史を見ればそうだというのです。
19世紀のクリミア戦争は、誤って強いところとぶつかってしまった典型例。たとえば、1875年に日本とのあいだで「樺太・千島交換条約」を結んだ例などは、弱い相手であっても譲る姿の現われだといいます。
なぜ、ロシアはそうなのか。
実はロシアは18世紀後半まで、草原の遊牧民から攻められて荒らされていた弱い国だった。中央アジアには、遊牧民の様々な「ハン国」が割拠していましたが、遠征軍でそれらの国々を上回れるようになったのは、ようやく19世紀後半になってからだったのです。
19世紀後半といえば、日本がいよいよ開国するかしないかというところです。そのようなロシアの姿は、日本人には少し意外なところかもしれません。
さらに山添先生は、1853年からのクリミア戦争、さらに19世紀後半以降のアジアへの進出、そして日露戦争への動きをご解説くださいます。
このあたりもしっかり講義で整理しておきたいところです。
日露戦争後、ロシアの目は極東よりもバルカン半島に向くようになり、日本とは協約が結ばれて、ほぼ同盟国のようなあり方になっていきました。
しかし、その結果もあって第1次世界大戦が勃発し、ロシア帝国は倒れ、レーニンが率いるボルシェヴィキが政権を握ります。
このとき、彼らの自己認識は「外国が敵だらけ」という危機感だったといいます。そのため、侵略的な行為も、ソ連の視点からすれば「防衛のための拡張」であり、あるいは「かつて帝政ロシアが持っていて、分裂によって手放してしまったものを取り戻したい願望だった」と。まことに厄介な話です。
一方、アジアでは第2次大戦までの日本は、なかなか手が出せる相手ではなかった。そのため、ゾルゲ事件など様々な工作をしかけつつも、1945年に日本が弱り切った機会をまって侵攻してくることになります。
そして第二次世界大戦後、ソ連は革命の輸出を狙いながらも、直接アメリカと対決するのはスターリンの時代も避けていました。そして冷戦構造のなかで、朝鮮戦争やキューバ危機など様々なことが起こりますが、ようやくソ連が軍事的に(核兵器などで)アメリカと対等になってきたのは1970年代のことだったといいます。
このような、一連のソ連の思惑や動きも、ぜひ講義本編でご確認ください。
しかしその後、ソ連邦は崩壊し、紆余曲折があってプーチンの時代になります。これまでのロシアやソ連の歴史を見てくることで、プーチンの思惑や行動も透けて見えてくるところがあります。
では、そのようなプーチン政権に、いかに対するべきなのか。山添先生は、「ウクライナをできるかぎり支援する国があることが大事」だとおっしゃいます。「ウクライナの損害をどれだけ抑えられるか、それを国際社会が支えているかどうかで、これからの国際社会の機能や信頼度が大きく変わる」のだと。
さらに、ロシアがなぜ国際的な「規範違反」をするのかについても、山添先生は歴史をふまえて、熱く語ってくださいます。この部分も、ぜひとも歴史の教訓に学ぶべきところでしょう。
ぜひともいま、あらためて整理して学んでおきたい講義です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆特集:2024年、世界の危機を読む
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=163&referer=push_mm_feat
◆山添博史:歴史から考える「ロシアの戦略」(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5251&referer=push_mm_rcm2
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編集部#tanka
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https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4268&referer=push_mm_tanka
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