編集長が語る!講義の見どころ
なぜ日本の財政政策が効かないのか?高齢化社会の処方箋/宮本弘曉先生【テンミニッツTV】
2024/04/09
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
最近では、政治の話題で取り上げられるのは不祥事と不毛な政争の話ばかり。まったく嫌気がさしてきます。
しかし本来、政治には「われわれの暮らしを良くしていく」大きな役割があります。誤った政策や悪政は、われわれの日々の苦しさに直結してしまいます。
岸田総理も「増税メガネ」「バラマキメガネ」などと揶揄されましたが、そのような揶揄が飛び出すのは、それだけの理由があるということでしょう。
では、どのような政策を行なうべきなのか。本日はそこを真正面から宮本弘曉先生(一橋大学経済研究所教授)にお話しいただいた講義を紹介いたします。
宮本先生の今回の講義で重要なのは、「高齢化社会では、財政政策・金融政策の効果が低下する可能性がある」ということでしょう。そのことが、近年の研究で明らかになったのです。
さらに、財政政策にはジェンダー平等を促す効果もあるというのですが……。
では、どのようにすべきなのか。あるべき政策の姿が見えてくる講義です。
◆宮本弘曉:日本の財政政策の効果を評価する(全6話)
(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5266&referer=push_mm_rcm1
まず第1話で、「高齢化で財政政策・金融政策の有効性が低下した可能性」について詳述されます。
最初に「政府の経済対策」の一覧表で、各政権がどれほどの規模の経済対策・財政政策を実行してきたかを、とてもわかりやすく示してくださいます。日本は、1990年代に事業規模にして約130兆円、2000年代を通じて約二百数十兆円という規模のお金が投入されてきました。
一覧表を見ると、リーマンショックや新型コロナ禍などの折に、いかに支出が拡大されたかも、よくわかります。
とりわけコロナ禍の折には空前規模の財政出動がなされたわけです。ちなみに、この背景については、テンミニッツTVでの、元・国際通貨基金(IMF)日本代表理事の田中琢二さんの講義を視聴すると、よくわかります。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4798&referer=push_mm_rcm3
しかし、これだけ大規模の財政政策を行なっても、日本の経済は先進国のなかでもずっと低迷をしています。なぜか。
そこで宮本先生は、財政政策の有効性についてのデータを示してくださいます。ここでは、財政政策の効果の測り方も、まことにわかりやすく教えてくださいます。
その結果から見えてくるものは何か。実は1990年代には、財政政策の効果を測る「財政乗数」が1.2から1.3くらいありました(政府支出が1万円増えたら、GDPが1万2000円~1万3000円増えるということ)。
しかし、財政乗数は近年低下をしており、最近では1.1くらいになってしまっているといいます。
この財政乗数に影響を及ぼすのは、「景気局面」「政府債務」「為替相場制度」「高齢化」などの要因ということですが、このうち「高齢化」は世界のなかでも現段階では日本が突出して影響を受けている部分です。
第2話では、高齢化の現状について、宮本先生が世界比較のグラフなどで示してくださいます。日本がいかに突出しているかが一目瞭然です。
その趨勢は今後も続き、高齢化比率は2030年には30パーセントを超え、2045年には36.3パーセントまで上昇します。
ここで宮本先生は、ご自身が以前、IMFで勤務されていた折に研究された「高齢化がいかに財政政策の効果を下げるか」の結果を、グラフで提示されます。
まことに衝撃的な結果ですが、なぜそうなるかといえば、高齢化社会の消費と雇用パターンが要因とのこと。その仕組みも宮本先生はわかりやすく教えてくださいます。
では、高齢化社会には「希望」はないのでしょうか?
けっして、そうではないのです。ここで必要になるのが、高齢者の雇用をうまく活用する「改革」です。残念ながら、いまの日本の雇用形態は、まったく望ましくない姿なのです。
では、どうすべきか。それについては、ぜひ講義の第3話をご覧ください。どのように改革すれば、「高齢化がピンチではなく、チャンスになるか」が明示されます。
第4話からは、ジェンダー平等について論じられます。残念ながら日本のジェンダー平等は、世界と比べて大いに遅れた状況になっています。この点も、宮本先生はわかりやすいデータで示してくださいます。
実はIMFは、女性の労働参加はマクロ経済にも非常に大きなインパクトを与えると主張しています。ではなぜ、日本のジェンダー平等が諸外国と比べて低くなってしまうのか。
それについても、働き方のフレキシビリティを阻害する日本的雇用慣行が大きく足を引っ張っているのです。端的にいえば、正規雇用と非正規雇用の大きなギャップです。
さらに、女性の就労インセンティブを高める財政政策も非常に重要なカギを握ると、宮本先生はおっしゃいます。では、具体的にどうすればいいのか。
それについては、ぜひ第5話をご覧ください。
第6話で述べられるのが、どうすれば「賢い支出」ができるのかです。日本は「課題先進国」です、それを解決するような財政政策を打つためには、それが「賢い支出」であることが重要となります。
逆にいえば、現在、先進国で問題になっている「セキュラー・スタグネーション」という長期停滞から脱却するためには、賢い財政出動が必須でもあるのです。「賢い支出」であれば、借金も必ずしも悪ではないと宮本先生は指摘されます。
第6話では、その具体的なあり方も提示されます。
いかに財政政策の効果を見極め、全体としてどのような改革が必要かを熟考し、いかに政策を打っていくか。その重要性が、とてもよくわかります。未来が明るくなる講義です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆宮本弘曉:日本の財政政策の効果を評価する(全6話)
(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
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