編集長が語る!講義の見どころ
憲法を考える…私たちは何を守るべきか?/特集&川出良枝先生【テンミニッツTV】
2024/05/03
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
5月3日は「憲法記念日」。日本国憲法が昭和22年(1947年)のこの日に施行されたことを記念してのものです。
このような日には、憲法の背景となる哲学をあらためて学び、憲法について大切なことを深く考えてみるのも意義深いことではないでしょうか。
改憲論も高まるなか、あらためて「憲法」について根本部分から考える講義を集めました。ぜひ気になる講義をご視聴ください。
■本日開始の特集:憲法を考える
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=235&referer=push_mm_feat
・川出良枝:モンテスキューとルソー…二人の思想家の共通の敵とは?
・柿埜真吾:ホッブズ、ロック…生命、自由、財産の権利をどう守るか
・橋爪大三郎:「憲法9条に自衛隊を書き込む」という改憲案は「姑息」
・橋爪大三郎:中華人民共和国憲法は人権型ではない
・片山杜秀:独裁ができない戦前日本…大日本帝国憲法とシラスの論理
■講座のみどころ:モンテスキューとルソーから考える(川出良枝先生)
本日は特集のなかから、川出良枝先生(東京大学大学院法学政治学研究科教授)の講座を紹介いたします。川出先生は、モンテスキューとルソーの対比から、社会について考えるうえでの基盤となる思想をわかりやすくお話しくださいます。
この講座は、講義形式でモンテスキューとルソーについて論じていただいた「講義篇」と、質問にお答えいただく形で疑問点を深掘りした「質疑篇」からなっています。
講義編では、モンテスキューの「三権分立論」とルソーの「社会契約論」「一般意志・特殊意志・全体意志」などについてお話しいただき、深掘り編では、それぞれについての理解を深める質疑とともに、現代的意義についての考察や、両者の人間性の違いなどについてお話しいただきました。
講義形式のなかでわかりづらかった点が、質疑篇で見えてくることもあると思います。また、「この二人の哲学者については、昔学んだ」という方は、講義編は少し飛ばして、質疑編(第8話)からご覧いただいても良いかもしれません。
◆川出良枝:政治思想史の古典『法の精神』と『社会契約論』を学ぶ(全11話)
(1)二人の思想家
モンテスキューとルソーには共通の敵がいた
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3620&referer=push_mm_rcm1
モンテスキューは自由主義思想を確立した重要な人物。ジャン・ジャック・ルソーは、人民主権や市民の政治参加を主張した民主主義思想のチャンピオンです。
本講座後半の「質疑篇」でも詳しく語られる話ですが、モンテスキューはフランスのボルドー出身の貴族です。ボルドーという地名から連想されるようにワインの醸造と輸出などの経営も手がけつつ、法律家や文筆家としてマルチな才能を発揮し、家庭にも恵まれた人物でした。
一方のルソーは、フランスで活躍したものの、好んで「ジュネーブ市民」と名乗っていました。相手から好かれるタイプですが、なぜかその人とケンカ別れしてしまうようなことが非常に多かった破格な人物だといいます。
モンテスキューは、あくまで現実的に物事を見て、常識的なものの見方や中庸の美徳を重んじるタイプ。ルソーは曖昧なものが許せず、極端から極端に振れるタイプであるようです。
思想家の人間像を知ることは、とても興味深いことです。その人となりを前提に思想に迫ると、見えてくるものも変わってきます。
この2人は、さまざまな面で異なっていたけれども、「共通の敵」がいたと川出先生は指摘されます。共通の敵は「専制(デスポティズム)」でした。
しかし、その闘い方が異なりました。
モンテスキューは絶対王政を厳しく批判しましたが、一方で人民が完全に主権を掌握する純粋な民主政も、絶対王政と同様に危険という発想でした。
ルソーは、「問題を解決するためには、新しく契約を結び直して新しい国家をつくりあげる必要がある」という「社会契約論」を展開し、さらに真の人民主権を確立するために「一般意志・特殊意志・全体意志」の議論を展開します。
ところが、このルソーの議論は、後にフランス革命のジャコバン派の恐怖政治や、ロシア革命のボルシェビキ、あるいはナチスの独裁の(ある種の)理論的背景にもなりかねないものだったのです。
第3話で川出先生が引用してくださったモンテスキューの印象深い言葉を紹介します。対立や分断ばかりが煽られる現在、あらためて心に留めたい言葉です。
《政治体において統合と呼ばれているものは、きわめて曖昧なものである。真の統合とはすべての部分がいかに相互に対立しあっているように見えても、社会の公共善に向かって協力している、そのような調和からなるものである。それは、ちょうど音楽において、不協和音が全体の調和に協力するのと同じである》
とてもわかりやすく基礎的理論が腑に落ちる、まさに今こそ学ぶべき講義です。
(※アドレス再掲)
◆特集:憲法を考える
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=235&referer=push_mm_feat
◆川出良枝:政治思想史の古典『法の精神』と『社会契約論』を学ぶ(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3620&referer=push_mm_rcm2
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編集部#tanka
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どうせなら「姑息」ではない改憲を考えてみる青空の下
今日は憲法記念日です。橋爪大三郎先生は「自衛隊を明記する」という改憲案は「姑息」だと指摘します。どうしてでしょうか。今の時代と憲法について、ぜひ本質から考えましょう。(達)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5192&referer=push_mm_tanka
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