編集長が語る!講義の見どころ
岡倉天心『茶の本』で日本文化の真髄を知る/大久保喬樹先生(テンミニッツTVメルマガ)

2020/10/27

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
皆さま、日本文化の「核」の1つともいえる「茶道」をご存じのことと思いますが、その「精神」について、どれほど理解しておられるでしょうか? そう問われたら、私自身、思わず顔を伏せてしまいますが……。

テンミニッツTVでは、大久保喬樹先生(東京女子大学名誉教授)が、岡倉天心の『茶の本』の精神について、全6回の講義でわかりやすく説いてくださっています。大久保先生は、『岡倉天心 驚異的な光に満ちた空虚』(小沢書店)で第1回和辻哲郎文化賞を受賞されています。

◆大久保喬樹:岡倉天心『茶の本』と日本文化(全6話)
(1)岡倉天心の生涯
岡倉天心とはどういう人物だったのか?
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2216&referer=push_mm_rcm1

岡倉天心の『茶の本』は、原題が『The Book of Tea』。ボストン美術館中国・日本美術部長を務めた岡倉天心が英文で書き、1906年にニューヨークの出版社から出版したのです。

茶道の手引書ではなく、茶道を通して日本あるいは東洋の世界観や自然観を、非常に幅広く説いています。日露戦争で日本が勝利した直後に英文で発刊されましたので、大きな反響を呼びました。西洋人の日本文化のイメージ、ひいては東洋文化のイメージを形づくるのに大きな影響を与えた一冊といえるでしょう。まさに新渡戸稲造の『武士道』(1899年に英文で発表)と並び立つ書です。

ポストコロナの時代には、これまでと違う世界観、人生観が必要になるという意見もあります。世界が大きく変わりゆくときに、今一度、自分たちのアイデンティティ、日本人が培ってきた思想や文化を見つめ直すのも大事なことでしょう。さらにいえば、外国人に日本について語るときに、まさに必須の一冊でもあります。

大久保先生は、たとえば岡倉天心のこんな言葉を訳出してくださっています。

《茶道は雑然とした日々の暮らしの中に身を置きながら、そこに美を見出し、敬い尊ぶ儀礼である。そこから人は純粋と調和、互いに相手を思いやる慈悲心の深さ、社会秩序への畏敬の念といったものを教えられる。茶道の本質は不完全ということの崇拝、つまりものごとには完全などということはないということを、畏敬の念をもって受け入れ処することにある。不可能を宿命とする人生の只中にあって、それでもなにかしら可能なものを成し遂げようとする心、優しい試みが茶道なのである》

まさに、いまこんな時代にこそ読みたいメッセージです。

また、大久保先生は講義の第3話で、岡倉天心が、「お酢は酸っぱいか、苦いか、甘いか」というたとえ話で、老荘思想をベースとした茶の湯の心を説いた話を紹介されています。お酢をなめた仏教の僧侶は「苦い」といった。儒教の達人は「酸っぱい」といった。老荘思想の達人は「甘い」といった……。つまり、仏教は現世の苦の世界からの離脱を説くのに対して、老荘思想では、「世の中は、ありのままに受け入れていけば、そこに心の平和が訪れる」と説いている。実は、一杯の質素なお茶も「甘いもの」「天上の滋味」として味わうのが老荘思想の極意だというのです。

(3)茶の歴史と老荘思想
茶の哲学のベースにある老荘思想
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2218&referer=push_mm_rcm3

孔子が説く人間社会は非常に小さいものにすぎない。老子はそれを超える自然、宇宙に重点を置いた。そして、お茶のなかには、実は人類をも超える宇宙の摂理が実現されている。それはたとえば、「数寄屋建築」のあり方から見えてくる……。そんな天心の話を大久保先生は紹介してくださいます。果たして、岡倉天心が説く真髄とは?

それについては、ぜひ講義で学んでみてください。たとえ話などもいくつもご紹介くださる、とてもわかりやすい講義です。

(※アドレス再掲)
◆大久保喬樹先生:岡倉天心『茶の本』と日本文化
(1):https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2216&referer=push_mm_rcm2
(3):https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2218&referer=push_mm_rcm4


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☆今週のひと言メッセージ
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「義を先にして、利を後にすれば栄える」

https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=12&referer=push_mm_hitokoto

バブルは過去6度あった―愚かな人間は歴史は繰り返す
大竹美喜(アフラック<アメリカンファミリー生命保険会社>創業者)

西川家の家訓に「三方よし」というのがあります。これは「買い手よし、売り手よし、世間よし」ということですが、「義を先にして、利を後にすれば栄える」ということですね。つまり社会に貢献してお客様を第一にする。
そして企業の社会である日本はまさに1千年以上のCSRを誇っている。そういうことを皆さんにお伝えしたい。


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今週の人気講義
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太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治(慶應義塾大学理工学部物理学科教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2557&referer=push_mm_rank

再選を狙うトランプ大統領がラシュモア山を演説の場に選んだ背景
東秀敏(米国安全保障企画研究員)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3649&referer=push_mm_rank

劇的な米中対立の深まりには大統領選挙より大きな要因がある
中西輝政(京都大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3634&referer=push_mm_rank

『ビジュアルマップ大図鑑 世界史』で一生モノの教養を学ぶ
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3707&referer=push_mm_rank

三国志の舞台、三国時代はどんな時代だったのか?
渡邉義浩(早稲田大学文学学術院 教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1999&referer=push_mm_rank


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編集後記
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編集部の加藤です。今回のメルマガ、いかがでしたか。

さて、現在放送中のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」の最終回が来年2021年2月7日となり、次期大河ドラマ「青天を衝け」は2月14日から放送開始となることが先日、発表されました。
「青天を衝け」の主人公である渋沢栄一がどのように描かれるのか、気になるところですが、ここでは彼の代表的な著書『論語と算盤』について少し取り上げたいと思います。

中島隆博先生(東京大学東洋文化研究所 教授)が講義のなかで、以下『論語と算盤』の冒頭の話を取り上げています。

「一日、学者の三島毅(中州)先生が、私の家へ来られた。自分が年賀状にもらった絵を見せた。そこには論語と算盤の絵が描いてあった。それを見て、面白いと言われた三島先生は、『私は、論語読みだ。お前は算盤の方だ。算盤を持っている人間が論語を論じる以上は、自分も算盤のことをやってみよう。論語と算盤をなるべく密着するように努めよう』と話された。」

詳しくは講義をご視聴いただければと思いますが、「論語と算盤をなるべく密着するように努めよう」ということで、渋沢栄一は、論語と算盤というかけ離れたものを合わせることが大事、それが自分の務めだと考えていたようですね。
とても興味深い話ですので、ぜひ中島先生の講義をご視聴ください。

<今回ご紹介した講義はこちら>
日本資本主義の父・渋沢栄一が『論語と算盤』で説いた道徳
中島隆博(東京大学東洋文化研究所 教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=543&referer=push_mm_edt