編集長が語る!講義の見どころ
『孫子』を読む:九変篇~様々な変化に対応できる考え方とは?/田口佳史先生【テンミニッツTV】

2024/08/30

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

ビジネスで、あるいは日々の暮らしで、様々な事態に直面します。どう判断すべきか。どう行動すべきか。大いに迷うことばかりです。

そのようなとき、『孫子』をひもとくと、驚くようなヒントに出合える。それは、昔からいわれてきたことです。

いうまでもなく『孫子』は戦争の指南書です。しかし、古来、実際の「生きるか死ぬか」の戦いでも大いに参照されて名著だけあって、あらゆる局面の対処について、真剣勝負の智恵が随所に満ちています。

ぜひ『孫子』の原文を読んでみたい。そう思われる方も多いことでしょう。

ただし、もちろん中国古典ですから現代の日本人には読み難いところも多いですし、兵学を現在の境遇にあてはめて解釈する点での壁もあります。

そこでテンミニッツTVでは、田口佳史先生(東洋思想研究者)に全篇全文をご解説いただく講義を展開しています。

田口先生は、たんに文章を読解していくのではなく、文章の大意・真意をわかりやすく伝えてくださり、さらに現代的な事例に引き寄せて考えるとどうかということも解説くださいます。ですから、田口先生の解説を聴くだけで、『孫子』からのインスピレーションを次々と得ることができます。

『孫子』は全13篇(計篇、作戦篇、謀攻篇、形篇、勢篇、虚実篇、軍争篇、九変篇、行軍篇、地形篇、九地篇、火攻篇、用間篇)ですが、今回はその8つめの「九変篇」の解説です。

田口先生曰く「大いなる変化」について説く部分ですが、次々と驚くようなヒントや事例が飛び出します。

◆田口佳史:『孫子』を読む:九変篇
(1)主導権を握るために
失敗する日本のやり方…『孫子』に学ぶ華僑との違い
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5419&referer=push_mm_rcm1

まず『孫子』は、「ヒ(「土」偏に「己」)地には舎(やど)る無く、衢地(くち)には交はり合い、絶地(ぜっち)には留まる無く、圍地(ゐち)には則ち謀り、死地には則ち戦ふ」と書きます。

これをどのように田口先生は解説されるか。冒頭の「ヒ地には舎る無く」を例にしましょう。

ここでいう「ヒ地」とは、とても扱いにくい土地のことで、山林、険しいところ、それから湿地帯など、要するに非常に行動に困難を伴うところです。ここを田口先生はこう読みます。

《まず、ヒ地というような身動きが簡単にできない土地には、宿営してはいけない、留まってはいけないと言っているのですが、どういうことかというと、苦節十年には入り込まないようにしなさいということです。苦節十年だめなわけです。つまり苦節十年ということは、もうそれで全て終わってしまうということですから、苦節十年を乗り越えて成功するというのは、まったく新しい資本になったとか、形態になったとか、そういうことでなければ意味がないことなのです。苦節十年の意味がないわけです。

ですから、これはもう苦節十年に陥るなと思ったら、パッとマーケットを変えるとか、時には業者を変えてしまうくらいのことをして、そういうところ(ヒ地)にいてはだめだと思います》

生き生きとイメージが眼前に迫るような解説です。

さらに、「絶地(ぜっち)には留まる無く」については、《絶地というのは、絶体絶命で、絶対に逃れられないという境地になったら、全力投球をしろということをいっているわけです》と解説されたのち、なんと東南アジアの華僑の例を出して、わかりやすく解説くださいます。

田口先生が華僑の人に聞いた話で、「日本の会社は海外に、失敗しているために来ているようなものだ」というのです。

華僑の商売では、たとえばバンコクで成功したら、そこはもう成功した土地だからむしろ手薄にしても構わないと考えて、新しく進出した土地に凄腕の精鋭を結集させる。次々とそのように展開して、地歩を固めてから次へ次へと進出していく。しかし日本企業は本社は本社で維持しながら、新しい支店にはごく一部の人を派遣する……。

これは「拙速」ということの捉え方が違うからだというのですが、その「心」については、ぜひ講義本編をご覧ください。

また、「塗(みち)も由らざる所有り、軍も撃たざる所有り、城も攻めざる所有り、地も争はざる所有り、君命も受けざる所有り」については、

《ここではセオリーでも、どのような状況になっても戦えというのが軍隊のように思っているけれど、それは危険な思想だといっているのです》

と解説されます。何でもかんでも勝とうと思ってやればいいというものではない。どんどん撃てばいいというものではない。敵を全滅させないほうが良い場合も多いと。

要は、状況に応じた戦い方を知らないリーダーは失格だとおっしゃったうえで、田口先生はより具体的にご解説くださいます。さて、自分のこととして考えたら、どのようなヒントがつかめるでしょうか。

第3話では、利益だけでなく、危険な状況や不利な状況を知ったうえで判断しなければならないこと、さらに、「故に將に五危有り=将軍に5つの危うい部分があること」が説かれます。その具体的な部分は……ぜひ講義本編をご覧ください。

先ほども述べたように、『孫子』の教えは具体的ながら色々に読めるものです。だからこそ、たとえ「地形」などについて語っている部分であっても、自分の境遇に当てはめて、ハッとするようなヒントを得ることができます。

そのような読み方を、具体的に示してくださる田口先生の名解説。まさに必見です。


(アドレス再掲)
◆田口佳史:『孫子』を読む:九変篇(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5419&referer=push_mm_rcm2


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長谷川眞理子先生の「ヒトの性差とジェンダー論」講義。我々が生物学的に「性」をはじめいかなる宿命を背負っているかを知ることは、自分の生き方の本質を考えるヒントになります。(達)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5476&referer=push_mm_tanka