編集長が語る!講義の見どころ
2050年のための「前向きの愛国心」/小宮山宏先生【テンミニッツTV】
2024/09/24
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
これから日本はどのような国づくりをしていかなければならないのか。何をめざすべきなのか――そのような議論が、まさに百出しています。
しかし本来、もっとシンプルに考えるべきではないでしょうか。細かなメニューを色々と挙げていくだけでは、けっして全体像は描けません。
では、求められる全体像とは?……本日はそのテーマを考えるのに大いに参考になる小宮山宏先生(東京大学第28代総長/テンミニッツTV座長)の講義を紹介します。
小宮山先生は、講義の最後に《日本を動かすための「前向きの愛国心」と「先頭に立つ勇気」を持って、ぜひ実践していきたい》と語ります。さて、それはどのようなプランなのでしょうか。
◆小宮山宏:2050年のための「前向きの愛国心」(全3話)
(1)木造都市へのシフト
木造ビルで20階…新しい暮らしを支える森林産業の確立を
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5485&referer=push_mm_rcm1
小宮山先生が最初に掲げるのは「地球が持続して、豊かで、人の自己実現を可能にする社会」を、いかにつくるかということです。
今回のお話しでも、大きく、
●森林産業を確立して、木造都市へシフトする
●「資源自給国家」への道筋をつける
という2つの道筋をお話しくださいます。もちろんこれまでのテンミニッツTV講義で、それぞれお話しいただいた部分もありますが、今回の講義はとてもよくまとまっていて、さらに直近の事例も次々に出てきますので、考えを整理して理解するために最適な講義になっています。
まず小宮山先生が示すのは、《2050年には、日本は「加工貿易国家」から「資源自給国家」になる》というビジョンです。再生可能エネルギーでエネルギー自給できる。さらに木材で都市づくりをすればいい。鉱物資源は「都市鉱山」を最大活用すればいい。日本は完全循環社会を実現可能だというのです。
日本はGDP500兆円に対して、50兆円くらいかけてエネルギー資源や鉱物資源などを輸入している。これを外国に回すのではなく、日本の地方に回すようにすれば、地方に50兆円の産業が生まれるわけだから、地方創生の基本的な解になり、さらに少子化や経済安全保障の根源的な解にもなるのです。
プラスチックも植物系のバイオマスで問題なくつくれる……など、様々な事例が語られますが、今回、小宮山先生が強調されるのは「日本でも(鉄骨ハイブリッドで)20階建ての木造ビルが造れるようになった」ことです。
木質の需要が高まれば、日本の林業を根本的に活性化することができます。しかも、現在は伐採した後に40%くらいしか植林していませんが、これを全部植えていくことが可能であることもわかってきました。小宮山先生はこうおっしゃいます。
《それができると、現在の4倍、細かくいえば3倍ほどの木を切って――根などもちゃんと利用するなど、いろいろあるのですが――ざっといえば、4倍の森林資源を毎年切るなどすれば、日本で発生している二酸化炭素のほぼ1割程度を削減できるのです》
このようなビジョンに基づいて、きわめて具体的な林業プロジェクトをお話しくださいますが、その詳細については、ぜひ講義の第2話をご覧ください。
ここで小宮山先生が語る印象深い言葉が、「正しい戦略を、本気でやっていると、運がついてくる。いい人が集まってきたり、思わぬいい情報や、いい知識が集まってくる」というものです。まさに至言です。
続いて、「再生可能エネルギー産業イニシアティブ」についての話に進みます。示されるのは「市民が分散型のエネルギーを持つ未来」です。ここも第2話の後半から第3部にわたって、とても具体的な「いい話(事例やプラン)」が紹介されていきますので、ぜひご覧ください。
小宮山先生は、このようなプロジェクトをどんどん立ち上げたいとおっしゃり、このメールの冒頭でも紹介したように、こう語りかけるのです。
《われわれにできるのかどうかは分かりませんが、できると信じることが、日本を動かすための「前向きの愛国心」になる。2050年のための愛国心と「先頭に立つ勇気」を持って、ぜひ実践していきたい》
この心意気が大切ということでしょう。未来に向けて明るい夢と希望を抱けるようになる講義です。真の改革は、このような夢と希望の具体的なビジョンからしか生まれないことを、強く確信できます。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆小宮山宏:2050年のための「前向きの愛国心」(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5485&referer=push_mm_rcm2
----------------------------------------
編集部#tanka
----------------------------------------
もし吾のスマホが爆ぜたらいかならむ恐ろしき世の入口に立つ
レバノンでの一斉ポケベル爆発。報道では、イスラエルの関与も指摘されます。テロへの報復とはいえ、国家による無差別テロが行なわれる時代に。もし日本で起こされたら……。(達)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5109&referer=push_mm_tanka
----------------------------------------
今週の人気講義
----------------------------------------
オウンゴールも!?ロシアにとって許しがたいNATO拡大の背景
廣瀬陽子(慶應義塾大学総合政策学部教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5493&referer=push_mm_rank
『風と共に去りぬ』で表現されたアイルランド移民の精神史
中西輝政(京都大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5464&referer=push_mm_rank
生物学的性差と文化的ジェンダー概念の入れ子構造の難しさ
長谷川眞理子(日本芸術文化振興会理事長)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5480&referer=push_mm_rank
気密なき断熱は無力…冬の寒さ対策に気密が不可欠な理由
前真之(東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 准教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5444&referer=push_mm_rank
人の資本主義とは――新しい人間像と現代資本主義への警鐘
中島隆博(東京大学東洋文化研究所長・教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5433&referer=push_mm_rank
人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部