編集長が語る!講義の見どころ
中東争乱の背景を深く知る…イスラエルとイランの思惑は?/特集&山内昌之先生【テンミニッツTV】

2024/10/11

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

凄惨なテロ攻撃、そして報復に次ぐ報復……。この憎悪と争乱の悲劇的な連鎖は、なぜ、いかに起きているのでしょうか。

それを知るためには、歴史や宗教もひもとかなければなりません。ニュースの核心を読み解き、事態の本質を深く知るくために、知っておかねばならない必須知識をお話しいただいている講義を、特集としてまとめました。

■特集:中東争乱の背景を深く知る

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=252&referer=push_mm_feat

・山内昌之:「戦略的な人間」ハメネイ師とネタニヤフ首相の思考と行動

・山内昌之:オスロ合意・アブラハム合意を潰す…ハマスやヒズボラの狙い

・島田晴雄:陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

・島田晴雄:「スタートアップ・ネーション」イスラエルを知るために

・山内昌之:イスラム教スンニ派とシーア派の違いとは?

・山内昌之:ムハンマドは神の啓示を受けた預言者で共同体の最高指導者


■講座のみどころ:「戦略的な人間」ハメネイ師とネタニヤフ首相の思考と行動(山内昌之先生)

イスラエルが大規模なヒズボラ、ハマスへの攻撃を続け、イランが約200発のミサイルをもってイスラエルに報復攻撃を行なうなど、中東情勢がさらに厳しさを増しています。ハマスによる残虐非道な無差別テロ(2023年10月7日)が直接のきっかけですが、なぜ、ここまでの悲劇が繰り返されるのか。指導者たちの思惑とは。

本日はその点についてお話しいただいた山内昌之先生(東京大学名誉教授)の講義を紹介します。この講義は、イランでぺゼシュキアン新大統領が就任した直後に収録したものですが、現在の情勢につながる底流や、イランのハメネイ師、イスラエルのネタニヤフ首相の思考と行動などをお話しいただいています。いまの情勢を見極めるうえで、大いに参考になる講義です。

◆山内昌之:ペゼシュキアン大統領とイラン・イスラエル(全4話)
(2)「傲慢と臆病」が生む戦略
「戦略的な人間」ハメネイ師とネタニヤフ首相の思考と行動
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5490&referer=push_mm_rcm1

上に掲げた講義URLは、山内先生の講義第2話ですが、この講義の第1話は、2024年7月にイランで改革派のペゼシュキアン大統領が誕生したものの、その大統領就任式に出席するためにテヘランに滞在していたハマスの指導者ハニーヤ氏が、イスラエルとおぼしき手によって暗殺される(2024年7月31日)事件が発生したことへの言及から始まります。

第1話で解説されるのは、イランで「改革派」と目される政治家が大統領に就任したことの意味です。山内先生が強調するのは、イランの「最高指導者」はあくまでハメネイ師であることです。そこに込められたメッセージが何かは、ぜひ第1話と第2話をご覧ください。

第2話の後半では、ハメネイ師とネタニヤフ首相の思考と行動について分析されます。山内先生は両指導者は「戦略的な人間」だといいます。ここで山内先生は、古代ローマの歴史家・トログスが『地中海世界史』という書物に記したクセルクセス(アケメネス朝ペルシアの王)への評を紹介します。

《王自身はいつも逃亡するときには最初に、戦闘においては一番最後にいるのが見られた。彼は危険の中では臆病であり、かつ脅威が実際に去ると高慢になった》

実はハメネイ師には、本来的には石橋を叩いて渡らないような慎重さがあるのだといいます。そしてネタニヤフ首相にも、最終的には逃げを打つことで政治生命を延ばしてきた、大変臆病な面があるのだと。

その両者がなぜ、現在のような厳しい局面をもたらしているのか。

ここで山内先生は、歌舞伎の「加賀鳶(かがとび)」を紹介します(第3話)。「加賀鳶」には、暗い闇の中で、ものを語らず無言で探り合いをしていくようなシーンがある。自分と相手が暗がりの中で、言葉を出さずに探り合いをやっていくなかで、かすかに体がかすったり触ったりするときに、ある種の警告を発したり、感じたりするような間合いがある……。

2024年4月に、シリアの首都ダマスクスのイラン大使館領事部へのイスラエルによるミサイル攻撃で、革命防衛隊のザヘディ准将をはじめとする3人の高級指揮官が殺害されたことへの報復として、イスラエルに対してミサイル攻撃を行なっています。実は、イラン本国によるイスラエルへの直接攻撃は初めてのことだったといいます。イランはここで「だんまり」を越えた。では、次は?

ところで、イスラエルによるテヘランでのハニーヤ代表の暗殺は、「いともたやすくピンポイントで暗殺する力を見せる」ことによって、イランに警告を与えるものだったと、山内先生は語ります。つまり、ハメネイ最高指導者の居住地点に対する攻撃も、いともたやすいのだということを示唆したのだと(第4話)。

今後、イスラエルはどう動くのか。そして、それに対してイランが打つ手は。

山内先生は、第4話の後半で、イランの政治的技量と芸の細かさについて紹介されます。イランは様々なかたちで外交的メッセージを出してくる。それに応えるのは誰か。日本としても、看過できない部分でしょう。

表面的には語られない部分を見とおすためにも、ぜひ視聴しておきたい講義です。


(※アドレス再掲)
◆特集:中東争乱の背景を深く知る
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=252&referer=push_mm_feat

◆山内昌之:ペゼシュキアン大統領とイラン・イスラエル(2)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5490&referer=push_mm_rcm2


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編集部#tanka
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「報復をされねば終わり」丁半の博打止まらぬ悲劇にも似て

イランがイスラエルに180発の弾道ミサイル攻撃。イランはイスラエルが報復をしなければ攻撃はこれで終わりと匂わせますが、ここで止まるようには思えぬ悲劇性が……。(達)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5490&referer=push_mm_tanka