編集長が語る!講義の見どころ
三宅香帆先生『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』を語る/読書特集【テンミニッツTV】

2024/10/18

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

「読書の秋」といわれます。さて、何を読もうか、と考えをめぐらせるのも楽しいもの。

書物は親友にもなれば、悪友にもなります。では、「永遠の友」になるような本はどのようなものでしょうか。そして、そんなかけがえのない友との上手なつきあい方とは? 

今回の特集では、様々な「超・名作」の解説講義や本についての解説講義を集めました。「生涯の愉しみ」であり「上質な教養」でもある読書について、ぜひ、じっくり考えてみましょう。

■特集:上質な教養としての「読書」

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=180&referer=push_mm_feat

・林望×ロバート・キャンベル:謎多き紫式部の半生…教養深い「女房」の役割とその実像

・三宅香帆:『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史

・橋爪大三郎:『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係

・山内昌之:書物こそ永遠に尽きることのない知恵を与えてくれる友

・河合祥一郎:シェイクスピアの謎…なぜ田舎者の青年が世界的劇作家に?


■講座のみどころ:話題の書『なぜ働いていると本がよめなくなるのか』を著者が語る(三宅香帆先生)

本日は特集のなかから、三宅香帆先生(文芸評論家/京都市立芸術大学非常勤講師)の講義《なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答》をピックアップします。

皆さまご存じのとおり、三宅先生は話題のベストセラー『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』の著者でいらっしゃいます。

この本、タイトルどおりの内容の記述もあるのですが、なにより興味深いのは、もともと「読書史」として構想されているところです。ですから、明治以来、日本人がどのような本を、どのように読んできたのかを、とてもわかりやすくまとめていらっしゃいます。

自分が好きな本の位置づけをたずねるのも良し。時代背景を知るも良し。いろいろな愉しみ方ができる本の内容を、コンパクトにご解説いただきました。

◆三宅香帆:なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(全2話)
(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5508&referer=push_mm_rcm1

まず三宅先生は、読書史を取りあげた「心」について、次のように語ります。

《私の場合、日本人の読んできた本を通して日本の歴史を語れたらいいと思っていたので、たくさん読まれた本を中心に取り上げました》

では、どのような読書史なのでしょう。インタビューで言及されるのは、たとえば戦前では、中村正直『西国立志編』、谷崎潤一郎『痴人の愛』、『中央公論』、『キング』、「円本ブーム」などなど。立身出世を謳歌するための読書、教養への憧れ、さらに教養と修養の違い、読者層の違いによる読書傾向など、色々に語られていきます。

本が読まれる傾向によって、時代が映し出されることがよく見えてきます。

戦後で取りあげられるのは、源氏鶏太、司馬遼太郎、『脳内革命』……。最近の若者は司馬遼太郎をほとんど読んでいないという話も飛び出ますが、映画、テレビ、スマホなど多様化する暮らしのエンタメのなかで、読書がどのような推移を辿ったのも興味深いところです。

第2話では、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』、その理由が語られます。三宅先生曰く。

《読書というのはやはりある程度ノイズを含むものです。それは知りたいことの周辺知識だったり、背景文脈を教えてくれるものだと思いますが、仕事に忙しかったり、自分のことしか考える余裕がなくなったりしていると、そのような周辺知識を得るような情報を「ノイズだな」と感じてしまう人が増えているのではないでしょうか》

では、「ノイズ」とは?

《(背景知識や歴史的文脈などの)情報というものが、余裕のあるときには面白い話、理解を深められる知識として受け入れられるのだけれど、忙しいときだと、その背景知識はいらないと感じてしまい、ノイズに感じてしまう人が増えている》

では、どうすれば良いのか。三宅先生はいまの社会は「全身全霊で仕事のことだけを考えて働け」という形になっているので、働き方について「半身社会」にしていくべきだとおっしゃいますが……。

ともあれ、自分自身のために読書はとても重要なことです。本を生涯の楽しみ、生涯の友とするためには「自分なりの問いを持つ」ことが大切だと三宅先生は指摘されます。まさにおっしゃるとおりでしょう。

本と社会の関連性について、いろいろ思いを巡らせることができる講義です。ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆特集:上質な教養としての「読書」
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=180&referer=push_mm_feat

◆三宅香帆:なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5508&referer=push_mm_rcm2


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編集部#tanka
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恋破れ思いあふれど美しきワルツの音色なお響きおり

ショパンは1849年10月17日に亡くなっていますので、没後175年。江崎昌子先生の講義で、サンドとの恋から生まれたワルツに耳を傾けてみてはいかがでしょうか?(達)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4868&referer=push_mm_tanka