編集長が語る!講義の見どころ
世界の宗教を学んで「世界の文明」を読み解く/橋爪大三郎先生【テンミニッツTV】
2024/12/24
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
今日はクリスマスイブです。もちろん、キリスト教徒の方々にとっては、クリスマスはイエス・キリストの生誕を祝う大切な祭日ですが、このような折に「世界の宗教」について学ぶのも意義深いことではないでしょうか。
何本かの補助線を引くと、世の中の見え方がまったく変わってくることを経験されている方も多いことと思います。美しい景色を見るときでも、指などでフレームをつくって風景を切り取ってみると、まったく違った印象になることもあります。
今回ご紹介する橋爪大三郎先生(社会学者/東京工業大学名誉教授/大学院大学至善館教授)の講義は、「宗教」を補助線として、世界をまったく違った景色に見せてくれるものです。快刀乱麻を断つような鮮やかな切り取り方に、思わず膝を打つ方も多いのではないでしょうか。
◆橋爪大三郎:宗教で読み解く「世界の文明」(全9話)
(1)文明とは何か
数千年の歴史のなかで勝ち残ってきた文明が4つある
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3340&referer=push_mm_rcm1
この橋爪先生の講義の特徴は、イスラム教、キリスト教、ヒンドゥー教、儒教、仏教などの宗教を、細かい教義などに立ち入って比較するのではなく、徹底的に「システム的」に分析していくことです。
細かい各論分析は第3話からになりますが、たとえばイスラム教は、神が1人で、預言者が1人、コーランも1冊と、とことん「1」であることを重視する1神教だと描かれます。
とにかく世界の万物は1人の神であるアッラーが創造したものなので、イスラム法の立法者もアッラーということになります。コーランには「こう考え、こう行動しろ」ということがたくさん書かれてありますが、それがイスラム法の根拠になります。唯一の創造主たる神がつくったものですから、全人類がこれに従わなくてはいけません。
逆にいうと、コーランに書いていない法律や政治のあり方などは、本来的には「背教者」ということになる。イスラム法に反する統治者は「背教者」として追放することができるのです。だから「アラブの春」と呼ばれた反政府運動は、裏を返せば背教者たる独裁者を追い払うものであって、民主化とは根本的に性格が違うものだといいます。
一方、コーランには部族長のあり方は書いてあります。だから、部族長が統治する形を採っているサウジアラビアやアラブ首長国連邦などはある意味で安定的なのだ、と橋爪先生はおっしゃいます。なるほど、そういう見方をする日本人は、あまり多くないでしょう。
では、キリスト教はどうか。よく知られているように、旧約聖書はユダヤ教の聖書です。旧約聖書はモーセの律法という法律です。その点では、イスラム教と性格が似ています(歴史的にはもちろんイスラム教が後発ですが)。
しかしキリスト教の場合、イエスが出てきて、「細かい律法に従うことを神は望んでおられない」と主張したのです(第8話)。コーランや旧約聖書やコーランに書かれたのは律法でありイスラム法ですが、キリスト教の聖書である新約聖書に書かれたのは、あくまで「福音」です。しかも新約聖書の「ローマ人への手紙」では「さしあたりローマの法律に従いなさい」と書いてある。
そこで世俗権力との共存共栄が可能になり、しかもユダヤ教の「割礼」のような敷居の高いルールもなかったので、世界に広がっていったのだと橋爪先生は分析されます。
中国の儒教では、「忠孝」ということがいわれます。「忠」は政治的リーダーに服従することで、「孝」とは血縁の年長者に服従するという教えです。では中国では「忠」と「孝」でどちらが大事なのか。
橋爪先生は「孝」だとおっしゃいます。だからこそ、血縁だけが信頼できるような社会が伝統的に続き、賄賂や腐敗が横行することになる。それで現在の中国共産党も、市場経済に介入して誰かに利益を与え、また誰かに不利益を与え、利益が上がった人からピンハネをする仕組みで行われており、いまや公共の福祉に反する状態になりかかっているのだと。
では、中国の「忠孝」と日本の「忠孝」はどう違うのでしょうか。
あるいは、インドで生まれたヒンドゥー教と仏教は何がどう違うのか。仏教はなぜインドでは駆逐され、周辺に広がっていっても、今一つ巨大な文明(橋爪先生の定義では信者10億人以上)にはなれなかったのか……。
そのようなことも次々と論じられていきますが、これらについてはぜひ、講義をご覧ください。
橋爪先生のお話を聞いていると、「あれはどう考えるべきなのだろう」「この点については、どう理解すべきなのか」など、次々と問題意識が刺激されます。橋爪先生の講義を糸口に、自分自身で探究と思索を深めていくのも、とても素晴らしい体験になることでしょう。
(※アドレス再掲)
◆橋爪大三郎:宗教で読み解く「世界の文明」(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3340&referer=push_mm_rcm2
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