編集長が語る!講義の見どころ
「江戸のメディア王」蔦屋重三郎の生涯/堀口茉純先生【テンミニッツTV】
2025/01/14
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
NHK大河ドラマ『べらぼう』が始まりました。「江戸のメディア王」と呼ばれる蔦屋重三郎を主人公にした物語です。歴史的な事実にも意欲的に切り込んでおり、これからとても楽しみです。
一方で、「蔦屋重三郎は知らない」「名前だけは聞いたことがあるような……」「書店やビデオのTSUTAYAと何か関係があるのですか?」という方も多いのではないでしょうか。必ずしも有名とはいえない人ですが、江戸文化を語るうえで欠かすことができない人です。
蔦屋重三郎は、寛延3年(1750)の生まれで、寛政9年(1797)に亡くなっています。吉原の生まれ育ちで、後に本や浮世絵を出版する版元となって、大いに一世を風靡(ふうび)します。
狂歌で大活躍した大田南畝などを登用した意欲的な「狂歌本」。山東京伝、曲亭馬琴などを登用した楽しい読み物の「黄表紙」。喜多川歌麿や東洲斎写楽などを登用した革新的で美麗な「浮世絵」……。
よく江戸文化の凄さは圧倒的な庶民文化だと評されることがありますが、まさにそれを確立した人物こそ、蔦屋重三郎なのです。
その生き方も、まことに魅力的です。才能ある作家や画家を登用して本気で制作をしていく心意気。そのような大物作家たちからも生涯好かれ、支え支えられる人間力。時代の一歩先を行き、多くの人々を驚かせる企画力。
蔦重こと蔦屋重三郎のような人が現われることで、いかに社会が変わっていくか。現代の日本に、もし蔦屋重三郎のような人物が現われれば、日本も大きく変わるであろうと思わせます。
テンミニッツTVでは、堀口茉純先生(歴史作家/江戸風俗研究家)に蔦重の魅力を縦横無尽に語っていただきました。ぜひこの機会にご覧ください。
◆堀口茉純:「江戸のメディア王」蔦屋重三郎の生涯(全8話)
(1)吉原で始まった蔦重の出版活動
現代でも通じる蔦屋重三郎の斬新な出版アイディア
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5603&referer=push_mm_rcm1
まず最初に、講義シリーズの流れを端的にご紹介すべく、全話タイトルを紹介します(タイトルは変更となる可能性があります)。
(1)吉原で始まった蔦重の出版活動
現代でも通じる蔦屋重三郎の斬新な出版アイディア
(2)蔦重の運と人間力
吉原店から耕書堂へ…蔦重の成功と大版元・鱗形屋の没落
(3)田沼意次の経済政策
田沼なくして蔦重なし? 再評価される江戸経済の真実
(4)田沼時代の画期性と終焉
錦絵、解体新書…田沼時代が切り拓いた日本文化の新境地
(5)時流に乗り才能を見出す蔦重の手腕
蔦重も手掛けた、江戸のコミック本「黄表紙」とは
(6)蔦重がつくった狂歌本
喜多川歌麿をスターにした蔦重の天才的プロデュース術
(7)逆境を逆手にとった錦絵
喜多川歌麿の美人画が革新的だったわけ…蔦重の戦略とは
(8)大首絵の成功と蔦重の最期
謎の絵師・東洲斎写楽を「役者絵」で起用した蔦重の思惑
テンミニッツTV講義の特長は、いうまでもなく動画講義なので、実際の本や浮世絵を見ながら解説が聞けることです。蔦重(蔦屋重三郎)がどのような新機軸を打ち出したのか、そして、作家たちがいかなる素晴らしい仕事をしたのかが、手に取るようにわかります。
さらに、この講義の特長は、蔦重が登場する背景となった田沼意次の政治についても2話を使って解説していることです。
一昔前は、田沼意次と言えば「賄賂(わいろ)政治」と相場が決まっていました。しかし、実は堀口先生は学生のころから田沼贔屓(びいき)だったとのこと。田沼意次の見事な経済政策手腕があってこそ、蔦重をはじめとする庶民文化が花開く素地がつくられたのです。
現代にも参考にしたいような経済活性策の実際とは……。ぜひ講義本編をご覧ください。
さらに注目なのは、いうまでもなく蔦重の生き方と出版人としての手腕、そして心意気です。
たとえば、吉原の遊女を美しい草花に見立てて紹介した『一目千本(ひとめせんぼん)』というガイドブック。こちらは、蔦重のデビュー作ともいえる書籍ですが、草花の絵は、人気絵師であった北尾重政に描いてもらっており、まことに美しい本です。
また、虫が恋するさまを狂歌でおもしろおかしく表現した狂歌本『画本虫撰(えほんむしえらみ)』。狂歌を集めた一冊ではありますが、なんと挿絵にはまだ無名の絵師だった喜多川歌麿を起用しています。
歌麿は、小さいころから昆虫や動植物が好きで、絵に描いていました。その歌麿が『画本虫撰』に描いた精密画は圧巻。現代人が見ると、到底、狂歌の本とは思えぬほどです。
そして、その喜多川歌麿、さらに東洲斎写楽が描いた浮世絵。いずれも有名な浮世絵ですが、こちらもいかに新機軸だったかが解説されていきます。
加えて蔦重は、田沼時代から田沼失脚という時代の流れにも大いに翻弄されます。その人生の山谷を、いかに力強く乗り切っていったのか。ここもまことに勇気づけられます。
人物の人生について深く学べて、さらにその仕事の見事さも堪能できる。まさに動画を見ながら学べるテンミニッツTVならではです。
蔦屋重三郎の魅力や、この時代のおもしろさを学べる講義。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆堀口茉純:「江戸のメディア王」蔦屋重三郎の生涯(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5603&referer=push_mm_rcm2
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編集部#tanka
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