編集長が語る!講義の見どころ
教育が社会を変える…寛政の改革・学問吟味と現代/中島隆博先生【テンミニッツTV】
2025/01/21
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
大河ドラマ『べらぼう』も、大いに話題を呼んでいますが、本日紹介するのは、ドラマでも後半で取りあげられるであろう次の時代、松平定信の「寛政の改革」において大きな影響を与えた「教育改革」に注目した講義です。
「寛政の改革」のなかで「学問吟味」というものが行なわれました。人材の活性化を図るために、登用試験制度を導入したのです。
今回の講義では、中島隆博先生(東京大学東洋文化研究所長・教授)にこの「学問吟味」についてわかりやすくお話しいただき、さらに現在の日本の教育問題、とりわけ大学院のあり方にもご論及いただいています。
一つの制度設計で、社会がどれほど変わりうるのか。とりわけ、教育と人材登用のあり方がいかに大きな意味を持つのか。そのことが明確に見えてくる講義です。
◆中島隆博:寛政の改革・学問吟味と現代の教育改革(全3話)
(1)学問吟味の導入と正統性の問題
松平定信のもう一つの功績「学問吟味」の画期性に注目
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5591&referer=push_mm_rcm1
第1話の冒頭で中島先生は、「学問吟味は、まことに思い切った制度改革だった」と指摘されます。
江戸時代でも、それまでは士農工商の身分制度が固まっていて、武士のなかでも上級武士の子どもから登用していくしかなかった。しかし、徳川幕府も200年近く続くなかで、人材という点で困難を抱えていた。そこで科挙なども参考に、下級武士など他の身分の能力の高い人たちを採用していくルートを開いたのです。
これは講義では直接言及されていませんが、たとえば、田沼意次時代に「狂歌」のスターとして大活躍した大田南畝(1749年~1823年)も、学問吟味で重職に登用された一人です。
大田南畝は下級武士(御徒)の貧しい家の出身でしたが、秀逸な狂詩や狂歌で大いに注目され、有名作家となります。しかし田沼時代が終わり、寛政の改革で狂歌などの文化が弾圧されるなか、寛政6年(1794)の学問吟味を受験して首席になってみせ、その後、実際に支配勘定(勘定奉行の配下)に登用されるのです。
大田南畝が狂歌のスターとして活躍できたのも、若いころから漢学や国学など学問に秀でていて、その教養を存分に生かしたからでした。その大田南畝の力が、実際に幕政にも存分に発揮されるようになったのは、「学問吟味」という制度を象徴しています。
さて中島先生は、さらに徳川幕府だけではなく、各藩もこの学問吟味に刺激されて「藩校」を充実させていったことも重視されます。やがて各藩で育った優秀な人材が、昌平坂学問所などに留学することによって、中央と地方の行き来や、相互交流をしていくことになります。能力を有した若者たちの層が、中央だけでなく地方にも分厚く形成されたのです。
もちろん、その学問吟味の背景には様々な課題や特色もありましたが、ぜひそこは講義本編でご覧ください。
この学問吟味によって、人材における社会的流動性が大きく回復することになります。上級武士の世襲のなかで低迷した人材力が、大きく回復する契機となりました。
現在の日本は、かつてよりもはるかに複雑な事象に、多岐にわたって直接向き合わなければなりません。中島先生は、「このような時代には、自分の知らない概念や言葉を知ることで、自分の考え自体が変容する経験が必要だ」とおっしゃいます。考える力も、想像力も、「三人よれば文殊の知恵」で、複数の人で「脳を共有」することで磨かれるのだと。
その点、日本は「第二の寛政の改革」が必要なのではないかと、中島先生は指摘されます。象徴的な言葉は次のようなものです。
《例えばドイツの今の内閣には、人文学の博士が何人かいらっしゃるでしょう。日本の内閣に哲学博士がどれだけいるかというと、「いたかなあ?」というレベルです》
経営でも行政でも政治でも、諸先進国と比べて日本では圧倒的に、修士号や博士号を取った人が尊重されていません。これは大きな問題でしょう。現在の日本の人事採用慣行の大問題が、ここにも露呈しているといえます。
現代日本の、真に重要な課題に気づくことのできる講義です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆中島隆博:寛政の改革・学問吟味と現代の教育改革(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5591&referer=push_mm_rcm2
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