編集長が語る!講義の見どころ
『古事記』『日本書紀』を世界神話と比較してみると…/鎌田東二先生【テンミニッツTV】

2025/02/11

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。

本日2月11日は「建国記念の日」です。これは『古事記』や『日本書紀』で初代天皇である神武天皇の即位日が旧暦1月1日となっているのを、明治時代に新暦に置き換えて祝日としたことに由来しています。

このような祝日に、あらためて『古事記』や『日本書紀』を学んでみるのも好機といえましょう。とりわけ、世界神話との比較で日本神話を考えてみると、いろいろなことが見えてきて、まことに興味深いものです。

やはり、ある国の精神文化や、人々の考え方のベースを考えるとき、神話について知ることは、とても有用です。その点、私たちは日本神話について、その類いまれなる特徴をどれほど知っているでしょうか。また、世界の神話との違いをどれほど理解しているでしょうか。

本日は、それらの点について知見を得るのに、まことに有用な講義を紹介します。鎌田東二先生(京都大学名誉教授)に、世界神話と日本神話の比較、まったく異なる『日本書紀』と『古事記』の違いから見えてくる日本の特質、「古事記神話」の読み解き、さらに『先代旧事本紀』『古語拾遺』までご言及いただいた、とてもエキサイティングな講義です。

◆鎌田東二:世界神話の中の古事記・日本書紀(全9話)
(1)人間の位置づけ
世界神話の中での日本神話の特徴は「人間の格づけ」にある
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3943&referer=push_mm_rcm1

まず第1話で鎌田先生は、世界神話と日本神話の「人間の格づけ」の違いについて解説されます。

たとえばメソポタミア神話では、人間は「下級神の労働の役割を担う奴隷」のような非常に低い位置づけの存在とされているといいます。一方、ユダヤ神話の『旧約聖書』では、人間は神の被造物ではあるけれども、一神教の神が造ったものであり、しかも、他の被造物の中でも特に神のイメージに近い存在として位置づけられています。

一方、日本神話では、神と人間の位置は、非常に曖昧です。神々がたくさん生成していく中で、やがて人間も生まれていく。鎌田先生は《どこからが神で、どこからが人間なのかが不明確》《人類皆兄弟、人類皆神様といった考え方》《世界神話の中で日本神話が1、2を争うほどに、神と人間との間に親近感がある》とおっしゃいます。

さらに、日本神話の根底には「むすひ(産霊)」という生命力エネルギーがあって……。このあたりの位置づけの違いは、世界と比べても、とても特徴的な点といえるでしょう。

さらに鎌田先生は、『古事記』と『日本書紀』の違いについてお話しくださいます。

鎌田先生いわく、『古事記』は「オペラ」のようで、神々の面白いストーリーが、ハリウッド映画でも観るかようなスペクタクルで描かれる。

一方、『日本書紀』は国家としての公式の歴史書で、データベース的ではあるのだけれども、非常に曖昧で、記述が混沌としている。神話にしても、「一書に曰く」というかたちで、数多くの「神話」が併記されていきます。それぞれで、最初に出てくる神様の名前さえ違う。

つまり、『日本書紀』は様々な豪族(氏族)が伝えてきた神話をうまく取り込んだ「談合」であり「忖度文化」だ、と鎌田先生は喝破されます。それゆえ、論理的な整合性を求めすぎる人が読むと、混乱につぐ混乱に見舞われるだろうが、そこに独特の面白みがあるのだと。

日本の心を探るためには『古事記』こそが最重要だと説いたのは本居宣長です。しかし鎌田先生は、その本居見解が「常識」だということは疑わなければならないとおっしゃいます。

そのような解説を経て、鎌田先生は具体的な神話の内容について、とてもわかりやすくご解説くださいます。鎌田先生の「語り部」的なお話しを聞くだけで、日本神話のポイントをしっかり押さえられるといって過言ではありません。日本神話についてあまりよくご存じない方は、まさに必見の内容でしょう。

また、日本神話について知見を持っている人にとっても、アマテラスとスサノオの対比や、日本神話におけるスサノオの意義などの話は、とても興味深いものです。

『古事記』ではスサノオやオオクニヌシの物語が、息もつかせぬ面白さで展開する。一方、『日本書紀』になると非常にドライになって、スサノオについても「分断的」「対抗軸的」に描かれ、しかも面白い話が、大きくカットされている。それは、面白い話を盛り込むことでバランスが崩れることを避けたのではないか。一方、面白い話を盛り込んだ『古事記』は、藤原氏によってサポートされてきたのではないか……。

さらに、鎌田先生の講義は『古事記』偽書説や、『先代旧事本紀』『古語拾遺』まで及びます。それらがどのような話かは、ぜひ講義をご覧ください。

日本神話の特質を、様々な比較をとおして、とてもわかりやすく浮き彫りにしてくださる講義です。まさに日本人必見の講義といえましょう。


(※アドレス再掲)
◆鎌田東二:世界神話の中の古事記・日本書紀(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3943&referer=push_mm_rcm2


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編集部#tanka
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建国記念の日にゆっくり聖徳太子の十七条憲法を学ぶのも意義深いことです。あの有名な言葉にも、実は深い意味が。さらに当時の国際情勢も…。頼住光子先生の講義で、ぜひ。(達)

https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5179&referer=push_mm_tanka

※頼住光子先生の「頼」は、実際は旧字体


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